第2話

 『コンコン。』


 カイゼルはセレナの部屋に着き、ノックした。返事も人の動く気配もなかった。暗殺か拉致?いつでも剣を抜けるように手を添えてから扉を静かに開ける。ベッドで眠るセレナの姿があった。怪我の有無を確認する為、布団を剥がしてエロ可愛いネグリジェを脱がすとセレナが目を覚ました。


「おはよう御座います。朝から距離が近いです……ね⁉︎」


 セレナは自分の姿がどうなっているのか気が付き、頬を紅く染めて掛け布団で身体を隠しながら悲鳴を上げた。視線が合う。


「ノックをしましたがお返事が無く人の気配が無かったので、部屋に入り外傷の有無を確認しておりましたー!」


 カイゼルは正直に言った。他に言いようが無かったのだ。数人の足音が近づいてくる。今のセレナの姿を見られる訳には行かない!


『姫様ー!ガチャッ』


 少し扉が開いて直ぐに力尽くで閉じてロックを掛けた。まだ問題は残っている。此処でセレナに助けを呼ばれたらお終いだ。小声で説得する為に近寄る。


「今、声を上げれば貴女の姿は騎士達に見られてしまいますよ?人払いをしてください。」


「ゴキブリが、出た、だ、けです……。お騒がせしてすみません。まだ寝巻きなので、着替えたらお呼びします。」


 セレナの声は震えていた。騎士を追い払って本当に良かったのかと不安でしょうがない様子だ。


「何事も無くて良かったです。これで俺は失礼します。」


「私の、この状態を無かった事にするつもりですか!」


「セレナ様、最高にエロいです!」


「部屋から出て行って!」


 追い出された。カイゼルは恥ずかしがる姿も素晴らしいと感じた。





 玄関で待機していると清楚な制服を着たセレナが来た。とても似合っている。ちょっぴりエロい。


「お待たせしました。」


「今着いた所です。制服、とてもよくお似合いですね。」


「デートの待ち合わせかなんかですか!」


「朝から突っ込むのお好きですね?こちらはウエルカムですよ?」


 朝の出来事のおかげでつい、応えがそっち方面にずれる。お年頃と言うやつか……。


「ツッコミません!」


「お嬢様、朝から卑猥な発言はお控えください。」


 セレナは顔を真っ赤に染めた。メイドさんと視線が合う。カイゼルは感じた、三人ともお年頃の様だと。カイゼルはメイドさんに耳打ちをした。


『学園が終わったら胸を揉ませてください』


『ふふ、良いですよ?』


 メイドさんはイタズラっ子の様な笑みを浮かべる。


「楽しみです!」


「何の話しですか?」


「学園、楽しみって話しです!」


 カイゼルは誤魔化しながら玄関ドアを開く。装飾の施された馬車に乗った。操縦は執事のトーマスさんだ。送り迎えをしてくれるそうだ。馬車に乗り込んでからセレナは目を合わせてくれなくなり、体調を崩したのかと心配したカイゼルは肩に手を添えて声をかけた。


「大丈夫ですか?力を抜いてください。」


「大丈夫です……。」


 ピクッと反応して顔がみるみる赤くなる。発熱を危惧したカイゼルはセレナを横に寝かす。


「二人っきりなので横になっても大丈夫ですよ?」


「こんな、所で……。」


「制服がシワになるといけません。脱がしましょうか?」


「脱がさないでください。」


「このまま、良いのですか?」


「わ、私に聞かないでください!」



『キィッ!』


 馬車が止まり、トーマスさんから声をかけてきた。


「朝から甘酸っぱいですね〜。着きましたよ。」


「トーマスさん、揶揄わないからかでください!」


 カイゼルはセレナに手を差し出す。


「セレナ様、お手を。」


 カイゼルはセレナの手を取るとそのまま、お姫様抱っこを決め込んだ。


「キャッ!エッ?」


 戸惑いの声がしたがカイゼルは反応出来なかった。この国の王女が近づいて来たからだ。


「私より姫らしいわね?」


「クラリス王女様!こ、これはその違うのです!」


「姫様も後でお迎えに上がりますよ?」


 カイゼルはニッコリ笑ってセレナを教室に運んだ。

セレナと話していたら、ホームルーム開始5分前になってもクラスメイトの姫様が席に居ない事に気がついた。


「セレナ様……!」


「直ぐにお迎えに上がってください!」


 セレナは一瞬で察した。クラリス王女はカイゼルの言葉を本気にしているのだと。

 


 王家の紋章があしらわれている馬車に駆け寄り、ノックをする。


「クラリス王女様、お迎えにあがりました。」


 扉が開いて王女様が顔を見せた。その瞳は潤んでいる。


「姫様!参りましょう!」


 カイゼルは姫様を抱きしめて走り出した。時間が……無いのだ!


 



 なんとか間に合い席に着くと担任が教室に入って来た。あっぶねー!





 入学式が終わりセレナと共に馬車に向かっているとクラリス王女が話しかけてくる。


「朝はお世話になりました。」


「雑な運び方で失礼を致しました。」


「抱きしめられたまま、運ばれるとは思いませんでした。」


「そんな事したんですか⁈」


  カオスだ。クラスメイト達は思いおもいに帰路に向かっている。学園ならではのガヤガヤだ。王女様とは軽く挨拶を交わして別れた。



 セレナの家に着くと朝のメイドさんが出迎えてくれて、そのままセレナの両腕を後ろに回し拘束する。


「カイゼルさん、どうぞ!」


 メイドさんからゴーサインが出たので片手ずつで二人の胸をゆっくりと味わう様に揉んだ。二人は非難の声をあげた。


『バキッ!』


 メイドさんに殴り飛ばされる。痛みを和らげる為に頬をさすった。




「そこまで許した覚えはありませんが?」


 室内の空間が冷たい。背中が冷や汗でビッチョビチョだ。






 カイゼルは自室の机の上に乗っている紙を見る。指令書だ。



『 カイゼルさんへ


 私とメイドのミルクに近づく事を禁じます。朝、学園に行く際は馬をご利用くださいね。出来なければ、事の次第を両親に話した後クビにします。


            セレナ・ブルーマイン』



 凄くお怒りの様です。俺は馬を持って無い!屋敷の馬は持ち出せ無いし……。よし!明日は学園休もう!

ローレンから3000マネーをお小遣いとして貰ったが到底、馬が買える額では無い。日本円で3000円分しかないからだ。


 執事のトーマスさんに体調不良で休む事をセレナに伝える様に頼み、眠りについた。

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