第39話 巨大化なんて負けフラグ
猫型鎧に乗り森を突き進む。
前方に出現した魔法の盾が木々を薙ぎ払い阻むものはなかった。
魔法の盾は半透明な紫色をして注意しなければ気づかないほどだ。
「バリアみたいな感じだな」
「えっと、インスタントシールドです」
名前を聞いたんじゃないんだが。
まあ良いか。
これでエルフが出てくるはず。
正面に黒い霧が出ているのか見えた。
「魔獣が出現しました。
前方、右側です」
「まずは魔獣から撃退するか」
全力で魔獣の出現位置に向かう。
そこに待ってたのは巨大な山かと思うような巨大な狼だった。
「なんだ、何時もの3倍ぐらいはあるんじゃないか?」
「過去の記録にもない程の大きさです。
一体どうして突然現れたようにしか……」
ラーレッケの声は震えている用に感じた。
ここで彼女の戦意を喪失されては困る。
パロマなら感情に左右されること無く冷静に対処してくれるが、彼女は感情の変化が大きく心配な面がある。
「巨大な敵に小さい者が挑む物語は多い。
敵を倒し英雄になることだって出来るはずだ」
「はい、ああ……、あれはエルフの切り札。
それを打ち破れは戦意を挫ける……。
エルフの顔が引きつる所を見てみたい……」
……それはちょっと。
「デカイから山狼と呼ぼうか」
「ええ、山狼の上に何か居ます」
画面を望遠にすると、上にエルフが立って笛を吹いているのが見えた。
恐らくあの笛で魔獣を操っているのだろう。
「操られている方が自分で考えない分、反応が遅れる筈だ。
今すぐに仕掛ける」
「ええ、どの様な策で?」
「勿論正面突破だ」
「ちょ、ちょっと、あんな化け物に正面から挑むって無謀です。
考え直して下さい」
「盾がある」
魔導鎧は魔気をエネルギーとして動く。
周囲から魔気を吸い取り集めながら走っているのだ。
山狼は口を開き噛み付いて来た。
大きく開いた口の中が見える。
魔法の盾よって口の中に飛び込むことはなかったが、徐々に口が閉ざされていく。
「盾が持ちません。
正面からは強くても横からの圧力には脆いみたい」
「解っている。
解除してくれ!」
魔法の盾は目の前で完全に固定されている。
盾がある限り身動きがとれないのだ。
解除と同時に後ろへ飛び避けた。
閉ざされた口、目があう。
憎悪がにじみ出ているような赤い目だ。
「前に出る!」
「どうして……、盾は直ぐに出せません」
「構わない、爪で切り裂く」
山狼の顔面を踏みつけ登る。
エルフが立っている。
あれだけの動きをしているのに平然と立っていられるのは凄いな。
エルフを飛び越え背を走る。
「全く傷の痕跡が見えません。
もっと深く突き立てて」
「やっている。
こんなに硬いなんて、他に武器はないのか?」
「武装は、爪しか無いです」
「力不足なのか……。
だったらあのエルフを捕まえて止めるしか無い」
「正気、ここで降りるつもりなの?」
「ああ、エルフに出来るんだ。
俺にも出来る」
リーリョがやって来る。
「ご主人様が行っていことは何でも見ていました。
私に操縦を代わって下さい。
エルフの前まで届けましょう」
信頼して良いのか怪しいがラーレッケに任せるよりかは良さそうだ。
「解った頼む」
「あの笛は魔道具、不用意に触れることの無いように気をつけて下さい」
リーリョの操縦はそれなりに上手く軽々とエルフの前にたどり着く。
俺は縄を手にとり鎧から降りようと扉を開く。
風が吹き荒れ、外に出たら吹き飛ばされそうだ。
「こんなに風が強いのに、平然と立っていられるのか。
これって魔法だよな」
杖を手に念じる。
「風よ、俺の周りを避けてくれ」
風は見えないから想像しにくいんだよな。
巨大なシャボン玉が出来てその中に入る。
これって水だよな……、はぁ風魔法は苦手だ。
山狼の頭の上はふさふさの絨毯みたいだ。
特撮だと毛も大きくなってるが、毛自体の大きさは変化なく量が増えているのだろう。
巨大な毛をかき分けるというのを想像していたから拍子抜けだ。
エルフの前に立つ。
長い髪が風でなびいている。
ハイエルフなのだろうか。
「私を殺したとしても、もう止まることはない。
このまますべてを喰らい尽くす」
ハイエルフは笛をへし折り高笑いを初めた。
悪人はどうして、こういう笑いをするんだろうか。
「降伏してくれると助かる」
「ひれ伏すのは貴様達の方だ。
この特等席で人間が滅ぼされるのを見ているが良い」
山狼は咆哮を上げた。
そして木々に隠れていたエルフに食らいつき飲み込んだ。
「おい、仲間が食われているんじゃないのか?」
「ははは……、血肉となり永遠にこの中で生き続ける。
私も身を捧げよう」
「待て、させない!」
俺はハイエルフの手を掴む。
「汚らわしい、手を離せ!」
「止める方法を教えろ」
「何者にも止められない。
人間が悪い私達を追いやった……、だから今度は私達が人間を追い詰める」
ハイエルフはナイフを取り出し突きつけた。
シャポン玉の壁に当たりナイフは弾かれる。
同時に割れて消えた。
押し寄せる風で体が浮いた。
しまった!
咄嗟に縄に魔法を掛けて鞭のように振るった。
縄はハイエルフの足首に巻き付く。
「はは、共に生贄となろう」
ハイエルフはナイフを投げ飛び上がり風に乗った。
「死ぬなら皆を巻き込むな!」
放たれたナイフは手を掠めた。
軽い擦り傷だと思ったが手から杖が落ちた。
毒が塗ってあったのだ。
落ちて死ぬのか?
猫型鎧の尻尾が縄を引っ掛ける。
「運は俺に味方したみたいだな」
縄に引っ張られ俺はハイエルフと打つかった。
そのまま抱きつく。
「離せ、汚らわしい」
「抵抗するな」
縄で縛ろうとしたが気づいたら自分も一緒にぐるぐる巻になっていた。
ハイエルフって、エルフよりも胸は控えめなんだな。
いやそんな事考えている場合じゃない。
解けない……。
暑苦しいし動けない。
逃れようとしているとハイエルフは気を失ってしまった。
リーリョが出てきて笑う。
「ご主人様、女神たる私に助けて欲しいと願う事をおすすめします。
さあ、女神様にすべてを捧げると言いなさい」
「そんな事を言わずに助けてくれ」
「……ただで助けるなんてありえない。
何かご褒美を貰わないと」
「撫でてやる」
「本当ですか?
って言う訳ない、どうして撫でるがご褒美なんですか。
それはご主人様の願望でしょう」
「困ったやつだな。
それなら服を買ってやる」
「貢物とは嬉しい、宜しい」
リーリョが指を鳴らすと縄が解けた。
俺は鎧に乗り込む。
「さて、どうするか……」
「この鎧は魔気で動いている。
ご主人様が魔気を分け与える事で、この鎧も力を増すでしょう」
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