第9話 6日目 ~12月28日~
区分機、今日は四号機だ。
後藤さんを出欠確認のときチラ見。
それ以降は見ていない。
忙しくて休憩すらも、バラバラなのだ。
そうして、一日が終わり……そうだった。
「長崎さん、今日残業出来ませんか?」
朝方五時くらい。
社員さんが、個々に残業可否を聞いて回っているらしい。
俺は残業を快諾した。
二時間。
帰っても、寝るだけだし。
一応、区分機の運転は定時で停める。
区分機の運転手が、早番さんに変わるからだ。
深夜勤組の残業は、何かと言うと
区分機が読めなかった大量のハガキ。
そのハガキを手区分していくのだ。
作業自体は苦ではない。
むしろ、楽である。
だが、朝方……これは、眠い。
『82』『80』『86』『32』……。
慣れた手付きで振り分けていた。
と、その時だった。
後藤さんだ。
後藤さんがハガキの束を持って近付いてきた。
視界の
後藤さんは、俺の背後の作業場を選んだ。
そして、手区分を開始したようだ。
あの……。
周り、結構空いてるんですけど……。
後藤さん?
わざと、俺の後ろに来ましたよね?
―― 良いのか?
―― いや、ダメだろう。
俺と、後藤さんの間を、深夜勤残業仲間が
ハガキの束を持って通りすぎる。
"バサリ"
その束から年賀ハガキが数枚、床に広がった。
「はい!」
「すみません、ありがとうございます」
「いえ!」
……後藤さん。
拾ってあげるの、早すぎ。
俺は後ろを振り返って
小声で言った。
「あれ?意外と優しい」
「意外って、ひどいですよ」
小声で、後藤さんが言う。
顔は笑っている。
もう少し話そう。小声で。
「今日はフリフリの付いた洋服ですね」
「何ですか?……今の流行りですよ?」
少し、拗ねたフリをして見せる後藤さん。
そして、二人とも作業に戻る。
この距離感が、心地よい。
離れていくのは嫌だ。
だからと言って、近付くのは
もっと……ダメだろう。
朝九時。
二時間の残業を終える。
そして
出勤簿に退勤時間を記入しているときだった。
後藤さんが横に来た。
そして、小声で言う。
「明日も来ますか?」
「……うん、明日来たら年内は休みだね」
「良かったです。同じです!」
後藤さん。
明日、何かあるフラグですか、それは。
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