#42 進撃の銀河竜皇
「よし、行くぞ」
俺は夜宵と水零にそう声をかける。
これから俺達はバトルフィールドの南端をスタート地点とし、北端の相手陣地を目指す。
敵と遭遇するのもまだ先になるだろう。
そう思っていたところで、PCからコスモの声が響いた。
『トリック・ジャグラーの
コスモ達の配信画面に映るピエロ型のマドール、トリック・ジャグラー。
そいつは数個のボールを放り投げ、ジャグリングを始める。
だがその中のボールの一つが突然爆発し、光の粒子となってピエロに降り注ぐ。
すると画面に映るトリック・ジャグラーのパワーゲージが物凄い勢いで増加していった。
『パワージャグリングは己の右腕を代償にパワーゲージを百パーセントにする』
「いきなりパワーゲージを百パーセントにするだと!?」
コスモの説明に、俺は驚愕を隠し切れなかった。
本来であれば試合の中で少しづつ溜まっていくパワーゲージを開幕から満タンにするとは。
そこに光流が呟きを漏らす。
「ということはトリック・ジャグラーはいきなり
彼女の予想通り、すぐさまコスモは次の行動を宣言した。
『トリック・ジャグラーの
満タンになったパワーゲージを全て消費し、トリック・ジャグラーの
ピエロはジャグリングを止めると、どこから取り出したのかフラフープの輪を体に通し、腰を振って回し始めた。
「ふ、不思議な踊りを始めたっすね。何をするつもりっすか?」
琥珀が怪訝そうに呟く。
未知の
ピエロの腰の動きが一際激しくなると、フラフープは彼の頭から飛び出し、宙に浮かぶ。
そのフラフープの輪の中は暗黒空間へと繋がっているようだった。
そこでコスモが告げる。
『さあ行くぞ。コズミック・ドラグオン』
コスモの操るマドール。青い体に赤い翼をもつ竜皇、コズミック・ドラグオンが地面を蹴って飛び立つ。
それと同時に中空に浮いたフラフープの輪が巨大化し、ドラグオンはその輪を潜って闇の世界へと姿を消した。
「一体どこへ行ったんだ?」
俺はそう呟く。
トリック・ジャグラーの
ワープと言うからには恐らく――
「ヒナ、あれを見て!」
夜宵の焦った声を受け、俺はテーブル上に投影されたバトルフィールドに視線を向ける。
俺達のマドールのスタート地点、その目の前にトリック・ジャグラーが使っていたものと同じ巨大なフラフープが宙に浮いていたのだ。
そしてその輪を通って青いドラゴンが姿を現す。
『進撃せよ! 銀河竜皇コズミック・ドラグオン!』
そしてその輪を通り抜け、重量感のあるドラゴンが二本の足で大地へ降り立った。
「まさか、試合開始からいきなり速攻を仕掛けてくるとはな」
俺は改めてそのマドールの姿を見る。
青い鱗で全身を覆った威圧感のある巨体。手足に生える鋭い爪。
その背中には禍々しい赤き翼と二本のキャノン砲が備え付けられていた。
ドラグオンのキャノン砲が背中から肩へと移動し、その砲門が俺達のゴールデンクイーンマドールへ向けられる。
まずい、奴の狙いは――
『宇宙に浮かぶ星々の輝きよ! 悠久の時を超え、我が宿敵へ降り注げ! スターブライトカノン!』
ドラグオンの両肩に乗った砲門に光が溢れる。
そして流星群の如き眩い光の奔流がそこから吐き出さた。
その光の砲撃は一直線にゴールデンクイーンマドールへ向かう。
「させるか!
プロミネンス・ドラコがその射線上に割り込み左腕を突きだす。
するとそこに炎の壁が展開され、ゴールデンマドールを守る。
コズミック・ドラグオンが放った二本の光線は炎の壁に衝突した。
プロミネンス・ドラコの
炎の壁が何とか砲撃を受け止めるも、光の奔流は留まることなく壁を叩き続ける。
くっ、攻撃時間が長い! このままでは壁が持たない。
『突き破れえ!』
コスモが叫んだ瞬間、光線はさらに勢いを増し、炎の壁に穴をあけてプロミネンス・ドラコを襲う。
突き出していた左腕が光に呑まれ、プロミネンス・ドラコがダメージを負った。
くそっ、やられた。
俺はダメージ状況を確認する。
プロミネンス・ドラコの左腕が黒く変色し、操作不能になっていた。
『
くっ、まずい。この状況でもう一度さっきの攻撃が来たら――
そう考えるよりも早くコズミック・ドラグオンの両肩に乗った砲門に再度光が満ちていく。
『空に浮かぶ星々の輝きよ、悠久の時を超え我が宿敵に
コスモの言葉とともに、もう一度砲口から光の奔流が吐き出される。
そしてそれは一直線にこちらのゴールデンマドールへ向かった。
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