木陰で眠る、一匹の獣。
そこへやって来る少年と少女。
少年はどうやら少女のことが気になっているらしい。
そして二人を見守る獣は、
「どうにか、この二人を近づけられないものか」
と考え始めます。
そんな始まりを読んだ私は、
なんて穏やかな物語なのだろう。
そう思っていました。
言葉を交わすことができなくても、
相手の仕草を見て、声を聞いて、少しずつ気持ちを想像していく。
一緒に過ごす時間が増えるほど、そこには確かに親しさが生まれていきます。
なかなか距離を縮められない二人を見守る獣の姿もどこか微笑ましく、
「もう、頑張って!😊」
と、私までそっと応援したくなりました。
けれど、読み進めていくうちに、
最初に思い描いていた景色とは、少し違うものが見えてきます。
何気なく読んでいた言葉。
当たり前だと思っていたこと。
その一つ一つが、少しずつ別の意味を持ちはじめるのです。
だからこそ、この作品についてはあまり語りたくありません。
少年と少女はどうなるのか。
二人を見守る獣との時間は、どこへ向かっていくのか。
そしてなぜ、この物語が、
『遠い未来の話』
というタイトルなのか。
その答えは、ぜひ物語の中で確かめてほしいです。
私は読み終えたあと、もう一度タイトルを見ました。
すると、読み始める前には何気なく見ていたその言葉が、まったく違って見えたのです。
そして心に残ったのは、驚きだけではありませんでした。
誰かと出会ったこと。
誰かに優しくされたこと。
誰かを助けたいと思ったこと。
そんな一つ一つの出来事が、その場だけで終わらず、誰かの未来へつながっていく。
「ああ、この出会いは、ここで終わらないんだな」
そう思ったら、胸がじんわりとあたたかくなりました。
この物語には、そんな静かなあたたかさがあります。
世界がどれほど変わっても。
そこに生きるものたちの姿が変わっても。
誰かを気にかけたり、
誰かの幸せを願ったり、
誰かから受け取ったものを、次へ渡していこうとしたり。
そんな気持ちは、もしかするとずっと変わらないのかもしれません。
だから私は、この「遠い未来」を、寂しいだけの未来だとは感じませんでした。
そこには確かに、次へ続いていくものがあったからです。
穏やかな物語の中に、そっと描かれた「遠い未来」。
ぜひ、何も知らないまま最後まで読んでみてください。
そして読み終えたあと、
もう一度、この作品のタイトルを見てほしいです。