第42話 記憶を辿ってみても
「ミツバの本、見てもいい?」
キッチンからサクラがご飯を作る音が聞こえるなか、ご飯ができるのをミツバと待っているナツメが話しかけた
「はい。どうぞ」
すぐナツメに本を渡したミツバ。本を受けとると、ユリとツバキもナツメの側に寄って、三人一緒に本を読みはじめた
「思ってるより、大分書かれているね」
「そうなんです。私は書いているつもりもないのですが……」
「まあ、それは私達もそうなんだけど」
ナツメとミツバが話をしていると、ガチャと扉の音が聞こえてきて、おかずを持ってきたサクラが少し不機嫌そうにリビングに入ってきた
「みんな、ミツバちゃんに余計なこと言わないで」
少し怒った声で、テーブルにおかずを置いていくサクラ。持ってきたおかずを置き終えて、再びキッチンへ向かっていると、ミツバが慌ててサクラの後を追いかけていく
「サクラさん、手伝うよ」
「ありがとう。それじゃあ、ご飯を運んでくれる?」
サクラがお茶碗にいれたご飯を人数分のご飯をトレーに乗せていくミツバ。二人、黙々と動いていると、冷蔵庫の側にあったお菓子を見つけると、ふと昨日もらったケーキのことを思い出した
「そうだ、ホノカがケーキとても喜んでいたよ」
「本当?良かった」
「また作ってほしいって、昨日うるさくて。チョコのケーキをって……」
「ホノカちゃんもチョコケーキよく食べてたからね」
「そうなんだ……。覚えてないや」
楽しそうに話すサクラの思い出話を聞いて、しょんぼりと小声で呟きうつ向いてしまったミツバ。それを見るなり、サクラが急にバタバタとおかずを持って、ミツバの背中をポンッと叩いた
「ほら、急いで持っていこう。みんなお腹すいてるから」
「……うん」
「いただきます」
たくさんのご飯が並んだテーブルを囲むミツバ達。ユリとツバキが美味しそうに頬張る様子を見て、ミツバもおかずに手を伸ばした
「どう?美味しい?」
「うん、とても美味しいよ」
モグモグと美味しそうに食べ進めていくミツバを見て、サクラがホッと胸を撫で下ろしていると、ミツバの側に置いていた本が突然ふわりと浮いた
「本が……」
驚くミツバの前で、ページがめくられ文字が勝手に書かれていく。どうしたらいいか分からず、呆然とミツバが見ている
「待って!止めて!」
慌ててミツバに駆け寄るサクラ。本には触れず、ミツバをぎゅっと抱きしめた
「なんでどうして……?」
本の動きとサクラの行動に、更に驚き戸惑うミツバ。二人の様子をご飯を食べながら見ているユリとツバキ。ナツメもモグモグとご飯を食べながら、冷静に二人の様子を見ている
「ミツバが少し思い出したからじゃないの?」
「……私が?」
ナツメに返事をしていると、文字を書き終えたのか、本がふわりふわりと、置いていたミツバの足元に戻っていく本。
何事も起きず、パタンと閉じた本を見て、ミツバが深くため息をついた。すると、本が閉じたことに気づいたサクラが、ミツバを抱きしめていた手を離して、本をじっと見つめるとサクラも、はぁ。と深いため息をついた
「ミツバちゃん、ご飯冷めちゃうから早く食べよう……」
力なくトボトボとしょんぼりした足取りで、もといた場所に戻って、ゆっくりとご飯を食べはじめたサクラ。そんなサクラをミツバが心配そうに見ていると、ナツメがミツバのお皿におかずをたくさん置きはじめた
「そうだね。サクラの言う通り早く食べ終えて、サクラも一緒にみんなで少し本を書きに行くから、急いで食べよう」
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