第28話 いつか見た夢

「みなさんの本はどんなの何ですか?」

 お茶を飲んで、少しのんびりしていると、ふとミツバがナツメ達に問いかけた。

「見たことないので、是非見せてもらえませんか?」

 ミツバからの突然のお願いに、ユリとツバキが困ったように顔を見合わせた

「私は見せてもいいけど……」

「サクラに聞いてからがいいんじゃない?騒ぐと大変だよ」

「でも、ミツバもこれから本を書くんだし、見せても……」

 と、サクラのこともあり見せることに少し心配する二人とは対照的に、ナツメが本を見せることに賛成した時、ドタバタと騒がしく廊下を歩き、リビングの扉を開ける音が聞こえてきた

「ダメ!見せないで!」

 サクラが大声でリビングに入ってきて驚くミツバの隣に座って、ミツバの手をぎゅっとつかんだ

「思い出すかもしれない!本を見せちゃダメ!」

 戸惑うミツバの顔をジーっと見つめているサクラ。その様子を向かい側で見ていたユリが声をかけた

「サクラ。意外と早かったね」

 ユリが声をかけても、振り向くとなく、まだミツバの顔を見つめたままのサクラ。すると、サクラの反対側、ミツバの隣にいたナツメが

「でも、サクラ。ミツバは本を書きはじめたんだからさぁ……」

「これ以上書かないようにすればいいの」

「無理だよ。それは、サクラが一番分かってるでしょ?」

 ナツメの言葉に、そっとミツバの手を離してサクラがしょんぼりとうつ向いてしまった。そんなサクラを見て一人あたふたと、うろたえはじめたミツバ。サクラの手をぎゅっとつかんだ

「夢を見なければいいのですか?」

 と、ミツバの問いかけに、少し顔を上げたサクラ。テーブルに置いていたコップの側にあるミツバの本を見ながらサクラに問いかけた

「夢を見たあとに書かれたので、私がサクラさんの夢を……」

「サクラの夢を見たの?」

「えっ?ええ……確かサクラさんが……」

 と、話を遮り聞いてきたユリの話に答えると、ミツバにつまかれていた手に力を無くして、手を離したサクラ。顔を下に向けたまま立ち上がると、トボトボとリビングの扉の方に歩いていく


「……部屋で少し休んでくる」

「サクラ……」

 ユリが声をかけても、振り返らずに扉を開けてゆっくりと閉じたサクラ。急にリビングが静かになり、帰るべきかと悩みはじめたミツバ。キョロキョロとナツメやユリとツバキの顔を見渡していると、隣にいるナツメがテーブルにあったお菓子を取ってミツバに渡しながら、話しかけた

「ミツバ、もう少し夢で何を見たか教えてくれる?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る