「ミツバちゃん、お味はどう？」

「はい。とても美味しいです」

「そう。それは良かったわ」

　食堂にある長いテーブルに集まって、朝食を食べるミツバ達。静かに進んでいく食事の中、ミツバに話しかけたアルノ。パンを頬張り返事をしたミツバを見て嬉しそうに微笑んだ

「ミツバちゃん、学校大丈夫？」

「さっき、サヤカとマホに休むって連絡したから大丈夫だよ」

「……そっか」

　ミツバの返事に苦笑いで返事をすると、サクラもパンを小さくちぎって食べはじめた。二人のやり取りを見ていたナツメ達。アルノも二人の話を聞いて、またクスッと笑う

「みんな、おかわりもあるから、たくさん食べてね」

「……おかわり」

　アルノの言葉を聞いてすぐ、スープのおかわりをねだるツバキ。その声とともに会話が止まり、朝ご飯を食べ進める食器の音だけが鳴り続けていく

「さてと……」

　朝食を食べ終えて紅茶を飲み一息ついていた時、アルノがお菓子をつまむサクラを見て、声をかけた

「サクラ。せっかくだから少し家に残っているようにね」

「……はい」

　微かに聞こえるほど小さな声でアルノに返事をするサクラ

。返事を聞いたアルノは今度は、ナツメ達の方に顔を向けて声をかけた

「みんなはこれから、本を書くの？」

「いえ。一度サクラの家に戻ります……」

　サクラと同じく、か細い声で返事をしたナツメ。隣にいたユリとツバキが、ナツメの声を聞いて頷いた

「そう……ミツバちゃんは？」

「えっ？えっと私は……」

「ナツメちゃん達と、私のお家で待ってて」

　どうしようかと悩む前に、サクラの声が聞こえて、ちょっと驚きつつ小さく頷いたミツバ

「う、うん。いいけど……」

　ミツバの返事を聞いて、ふぅ。と安堵からため息ついたサクラ。ニコニコとしているアルノ。すると、ガタンと椅子の音をたててナツメが立ち上がった

「じゃあ、先に帰るよ。サクラ。また後でね」

　サクラに声をかけ、食堂の扉の方へと歩いていくナツメ。

ユリとツバキも帰ろうと席を立った

「ミツバ、行くよ」

「えっ？うん……」

　ナツメに呼ばれ、慌てて本や荷物を取ってナツメ達の後を追う。扉の前に着くと、ゆっくりと振り返ると、アルノがミツバに手を振っていた

「ミツバちゃん、いつでも遊びに来てね」

　そう言い微笑むアルノに、ペコリと頭を下げそっと扉を閉めたミツバ。パタンと扉が閉じる音が聞こえると、サクラがまた、ふぅ。とため息をついた。パタパタと扉の向こうから聞こえていた足音も聞こえなくなると、椅子から立ち上がるアルノ。ミツバ達の食器の片付けをはじめた家政婦達をボーッと見ているサクラに、ミツバ達が帰っていった扉とは反対側にある扉を開けながら声をかけた

「さてと、サクラ。少し本を書くのを手伝ってね」