第1話のタイトル「頬を持たないサウロイドはファルセットで語る」が秀逸だ。サウロイド(恐竜が滅びなかった世界線の恐竜人間)が「頬を持たないため破裂音の発音ができず、代わりにファルセットで言葉を紡ぎ出す」という一文だけで、この作者の生物学的な考察の深さが伝わる。後に屋根を穿てる鳥類の所作に触れる描写も芸細で、「そういう生物ならこうなる」と純粋に納得できる。
第2話「のらりくらりと繁栄を続けた人類」の描写が特に刺さった。SFが描くような革命的変化——ブレインに電子プラグを差し込むこともなければ、ロボットによる反乱も起きなかった——という「意外と地味な未来」を描く筆力は、サイエンスフィクションライターとしての誠実さが滲んでいる。温暖化への真剣な対答ができなかった人類が、それでも宇宙を目指すという逆説が苦みを帯びた。
「PHIDIAS」というタイトルには7文明のアクロニムが隠れているが、第1話時点で判明しているのはH(Human Being)、D(Deep Sea Lives)、S(Sauroid)のみ。残りの勢力が何者であるかが謎となり、先が気になって仕方がない。
宇宙を舞台にした作品を書く者として、同じ地球から別の進化を歩んだ存在たちが月面で出会うという設定に、純粋に出鼻を抑えられなかった。715話という規模からすれば、まだこれは序盤にすぎないのだろう。
お勧めされていたので読んでみましたが、何で書籍化されてないのか不思議なくらいの完成度、かつ面白いハードSFです。
あっという間に引き込まれ、四百話以上を一気に読破させて頂きました。
ハードSFの醍醐味と言える設定の妙がなされ、異種族の考え方や習慣がみごとに描写されております。
キャラクターも地に足がついており、違和感なくこの世界に馴染んでおります。
しかもこの量で序盤の展開も終わって居ないと思われます(゚∀゚)
日本版ペリーローダン作品の開幕です。
これが埋もれるとは、SF冬の時代といわれますが氷河期ですね。
SF好きには是非ご一読をお勧めしたい逸品です。
2033年、月面に3つの異世界を繋げる次元跳躍孔“ホール”が発現。人類(ヒューマンビーイング)は海底人(ディープシーライブズ)及び恐竜人間(サウロイド)と講和条約を結び、「九条約」を結ぶこととなった。しかし話はそれで終わりはしない。三者のみならず他の異世界人やエイリアンが出現し、総勢七者となった彼らは己が種の生存をかけ、相打つことに……!
異世界=パラレルワールドの住人である5つの種族に2種のエイリアンを加えた生き残り合戦、このたまらないストーリーを実現した“ホール”の設定がすばらしい! 細やかさと濃やかさはもちろんのこと、設定が各陣営の立場や思惑にしっかり絡められているのですよ。説明が多くなるのはSFの宿命ですけれども、不可欠な説明を描写へ練り込んでドラマの起点とし、緊迫感を引き絞る舞台装置として機能させる著者さんの手腕は唸るよりありません。
本格派SFでありながら戦争ドラマとしても間違いなくおもしろい! ハードな世界観を求める方へ真っ先におすすめしたい一作です。
(「ロマンとの遭遇! スペースオペラ!!」4選/文=高橋剛)