第32話 近衛騎士団

 王宮の魔導院では、ガトーとタルトが陣頭指揮を執り、数名の宮廷魔導士が伝達係りてとして活動していた。そこに魔導通信が入る。


 こちら、スフレ班。王立病院付近で魔族らしき怪物を撃破しました。


 「これで、二体目か・・・残り七体、嫌、一つ増えたから八体か・・・他の状況はどうなってる。」


 「北東、墓地付近の部隊から増援要請きてます!」


 「南西、住宅街からも増援要請です。」


 「中央広場西、至急、救援求む。」 次から次へと救援の依頼が届く。


 「獣士隊の離脱で戦力が不足している・・・仕方がないスフレを墓地の方に向かわせましょうか父上・・・」


 「連戦になるがやむを得ないか・・・それにまだ、近くに潜伏している魔族がいるやも。迂闊に動かして良いか、難しい判断だな・・・・他に動かせる部隊は・・・」


 そこへ、一人の騎士が魔導院に訪れる。


 「忙しそうですね。クレア殿。親子お揃いで。」 背の高い細身の男が嫌味の様に声をかけてきた。


 「シーホーク近衛騎士団長・・・何か御用ですか。」


 「何、我々もお力添えしようと思いましてね。情報提供をお願いしに来た次第です。」


 「・・・それは、助かります。・・・誰か現在の位置情報、状況をまとめた物を書簡にして渡してやってくれ。」


 すると、伝達係りの魔導士が素早く魔法で書簡を製成しシーホークへと渡した。


 「ありがとう・・・・しかし、聞く所によると、昨日の時点で今回の襲撃を察知していたそうじゃないですか・・・我々にも一声あってもよっかたのではありませんか?」


 「・・・・仮にあなた方に話して、その信憑性の無い情報で、あなた方は動いてくれましたかな?」


 「な~に、話し位は聞きましたよ、話し位は。では、急ぎますんで。」


 シーホークは、足早に近衛騎士団詰所に戻って行った。


 「宮廷魔導士共が失態を演じてくれたのだ。我等、近衛騎士団の力を見せつけてくれるは!これで、王族の覚えもよくなるし。我々が上だと言う事を知らしめるだろう。」




 「相変わらずでしたね、シーホーク団長の嫌味は・・・」


 「近衛騎士団との確執は今に始まった訳ではないからな・・・彼は、我々の上に立ちたいのだろうさ・・・・まぁ、現場レベルでは、上手くやっているみたいだし、連携は問題ないだろう。」


 「それでは、近衛騎士団の参戦を考慮して部隊の再編成しましょう。」


 その時、魔導士達はある変化を感じ取る。


 「中央広場の巨大な魔力が消えた・・・・」


 「あぁ、上手くやってくれた様だな、オージェン卿は・・・・これで後、七体。」


 「中央広場に増援に向かわせた部隊を他に回せますね。よし、その部隊は、そのまま広場西の救援に向かう様に伝えてくれ。」


 「スフレを動かそう。居るか居ないか分からない敵を警戒するより、今現在、暴れている敵を優先させる。」


 刻々と変わる事態に対応して、ガトーとタルトは最善と思われる手を打っていく。


 「報告です。近衛騎士団の騎馬隊が出陣しました。」


 「流石に早いな。」


 「各個撃破しながら、順次、回るとの事。」


 「戦力の分散を避けるかシーホーク。手堅いな・・・・」


 「そうなると、順番によって苦しくなる場所が出てきますね。近衛騎士団がどこへ向かうかだ。」


 「近衛騎士団、南下しています。」


 「なるほど、審判の門に居る近衛騎士と挟撃し、そのまま合流。そして各個撃破して回るか。」


 「では、我々は、北側に戦力を割けばいいですね。みんな、ここはもう良い。北側の魔族と交戦中の部隊と合流してくれ。父上は、指揮をお願いします。伝達役は、私がします。」


 残っていた宮廷魔導士は、一斉に北を目指して行った。




 その頃、一人の女子学生が中央広場近くの道を歩いていた。


 しかし、今日は、騒がしいですわね・・・・お祭りでもあるのかしら・・・それにこの水は何ですか、靴が汚れてしまうわ。


 すると、道端でうなだれている亜人の姿をみつけると声をかけた。


 「そこの貴方、具合でも悪いのですか?だったら、早くお家に帰りなさいな・・・・それにしてもこの騒ぎは何なのかしら。」


 「なんだ、学生さんか・・・・心配するな、別に具合が悪い訳じゃぁないんだ・・・・君は今、何が起こってるのか知らないのか。」


 「そんなの知る訳ないわ、さっき、うるさくて目を覚ましたばかりですもの。」


 そう言うと女子学生は、学院の方へ歩き始めると、それを見た亜人は、慌てて引き止めようとした。


 「学生さん・・・これ以上、先に行ってはいけない・・・・」


 「はい?何を言ってるのですか!この道を行かなければ学院に着けないじゃないですか。」


 意に介さず進もうとする女子学生を、尚も必死で止めようと亜人が言う。


 「違う、そうじゃない!この先で、化物と宮廷魔導士が戦っている。行ったらその戦いに巻き込まれるぞ!」


 「化物?はぁ・・この国にそんな物が入り込めるはずがないでしょ!龍の結界があるんだし。」


 「待ってくれ!本当の事なんだ!」


 必死に引き止める亜人に少し呆れた表情を浮かべる女子学生は高らかに宣言する。


 「わかりましたわ。そこまで言うのなら・・・この私、コリーダ=セルシスがこの目で確かめて差し上げるわ!」


 「だから、行っちゃいけねぇって!」


 その言葉を無視して、どんどん進んでくコリーダ。そして十字路に差し掛かり、今まで死角になっていた場所が視界に映る。


 そこには、五人の宮廷魔導士が一匹の化物が激しく戦っていた。


 「・・・これはなんの冗談ですの・・・・ああ、きっとお祭りかなんかの余興ね・・・・」


 この日、コリーダ=セルシスは生死を賭ける戦いにのぞむ事になるのであった。

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