書に尽くす人生が尊さを帯びる

しっとりと雨音だけがする静かな緑の背景の中に、小さな文机と硯、墨と筆。
紙に書きつくる文字は黒々と濡れて、陰影に垣間見る光のようでさえある。

訪問客の多いこの部屋で写本が積み上がる間、着実に一千年の時間が繰り広げられる。
一人の人間が味わうにはあまりに途方のないことのようながら、それこそが読書であり、物語の根源を垣間見たような気がした。

物語とは記された数々の真実であり、人の数だけ物語が生まれる。
その事実を識ることは人生の醍醐味なのかも知れない。

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