第13話 5歳になりました。




伯爵が来たり帰ったり色々あったあの日から、自分はなんの問題もなくスクスク育ち5歳になりました。




国の方は大問題がありましたが……




フレッチャー伯爵は自分の領都に帰ると、私設軍隊と騎士団に動員令を下してメンヒス公国との戦端を勝手に開いてしまった。

もちろん問題になったのだが、それ以上に問題になったのがボートンさんから伝えられた邪心への誘いと、そのオリジナルがメンヒス公国に有ると言う情報だった。


これに国王とエインギルの貴族達は大激怒、我々に対する挑戦だとメンヒス公国に宣戦布告をして、フレッチャー伯爵領に援軍を大量に送り込んだ。


その結果、エインギル王国軍は一時はメンヒス公国の首都まで迫ったが、魔物の大群に襲われて慌てて国境線近くまで下がったそうだ。

そこに各貴族の私軍や騎士団が到着して魔物を殲滅し、要塞を造りそこで防衛戦をすることになったのだ。


フレッチャー伯爵は反対しなかったのか?


うん、魔物の大群に攻撃された時に死んでしまったから文句が言えなかったんだよね。

もちろん後継ぎのザカライアさんは激怒したけど、家の父さんや他の貴族の方々に当主が亡くなりその引き継ぎもあるし、この戦いに全力を投入した結果、フレッチャー伯爵家はかなり衰退したからここは領内を安定させ、力をつけ戻した方がいいと説得されてしぶしぶ引き下がった。


そこで戦線は膠着状態になり1年、自分は5歳になったのだ。


あと家でも色々あった、さっきも言ったけど父さんが出陣したんだけど、アラン兄さんとアルフ兄さんも初陣として出陣したんだよね。


その結果、兄さん達は……物凄い大活躍をした。


アラン兄さんはブラックウッド家の精鋭兵を指揮して魔物の群れやメンヒス軍を叩きのめし、アルフ兄さんはブラッドロー騎士隊の先頭を走り、真っ先に敵陣に飛び込むと敵や魔物を大刀で斬り粉々にしまくったそうだ。


うん、チートかな?


何にしろそんな兄2人の活躍で魔物の大群やメンヒス軍を蹴散らしたのだとか、それで要塞を建築する時間を稼ぎ国境線で魔物やメンヒス軍を押し返すことが出来たのだとか。


そしてこの戦いはその他の周辺国家の態度を変えた、戦争当初は我がエインギル王国と友好的な国は物資の支援などをしてくれて、仲の悪い国はエインギル王国の国力が落ちるのを笑ってみていた。

だがメンヒス公国に魔物の大群が現れて、メンヒス公国が我が国は神に守られた国である、神聖なメンヒス王国に攻め寄せた愚かなエインギル共の死に目を見よ!っと宣言すると同時に全ての国が理解し怒りに震えた。


魔物を使役する国が何を言うか、貴様らこそチエナルナ様に反逆する神の敵だと、メンヒス公国と敵対して我が国に支援や援軍の申し入れをしたのだ。


こうして近い将来に、各国が連合軍を組織してメンヒス公国に攻め混み、魔物ごとメンヒスの公族や貴族を滅ぼすことになったのだ。


そう言えばメンヒス公国のことを神聖メンヒス王国と呼ぶのはメンヒスの者達か説明するときに間違えないように言うときだけらしい。




何にしろ戦争が少し落ち着いた今は、父さんや兄さん達も帰ってきていてアルバート兄さんにアレックス兄さん、そして自分の訓練を見ていてくれていた。


「えい、えい、えい。」


「坊っちゃん、気合いが入っていませんよ!」


「えい、えい、え~い。」


「ですから気合いが、あぶな!?」


自分は木剣に盾というスタイルで剣を振っていて、指導の騎士さんが気合いが足りないと言われたが、近づいてきたところで懐からスライムボールを取り出して投げつけた。


残念ながらスライムボールは騎士さんの盾で弾かれたが、牽制は成功だったようで騎士さんは盾をかまえて近づいてこない。


「……なんでアレクシスの指導騎士はフル装備で盾まで持っているのだ?」


「しかも凄い警戒してるし。」


アラン兄さんとアルフ兄さんが、他の兄や一緒に訓練している子供達の指導係の騎士と違い自分の指導係だけが鎧兜を着けて、盾まで持っているのに気がつき別の騎士に質問をする、まぁ気がつかない方が変か。


「あれはですね、剣を振る型を覚えたら突然にだらけはじめまして、注意しようと近づいた騎士にスライムボールを投げつけてくるのでその対応のためなんです。」


「お前はアホか? 確かにアレクシスのスライムボールは結構な威力だが、盾まで持つ必要はないし避けりゃいいだろうが。」


アルフ兄さんがそう言うと、言われた騎士さんはどうぞとばかりに手を向ける、アラン兄さんはバカな奴だと目を向けている。


「こら、アレクシス! ちゃんと訓練をしないと「えいえい!」あぶ、いてえぇぇぇ!? これスライムボールの威力じゃないぞ!」


アルフ兄さんは1発目は見事に回避したが、1発目の影に隠れて飛んできた2発目をも太ももに食らい悶絶している。


「バカが、アレクシスが剣と盾の練習だけでなく投擲の練習をしているのになぜ気がつかん。」


アラン兄さんはそう言うと、盾を前に大剣を後ろにジリジリと近づいてくる。


「アレクシス、お兄様が訓練してやるからな!」


「えいえい、うりゃあ!」


「おおお、おお!? さ、流石だなアレクシス!」


俺が投げたスライムボール4つは2つが盾に防がれて、1つは大剣で弾かれ最後の足首を狙ったのはかわされてしまった。


「よし、ドンドン投げろよ、お兄様が練習相手に「ちょっと待て。」なんだアルフ、邪魔だぞ?」


俺の練習相手をしようとしてくれたアラン兄さんだったが、間に復活したアルフ兄さんが入って止められると、練習の邪魔だと言う。


「いや兄貴、アレクシスの今の練習は剣の練習だろ?

アレクシスも好きな投擲の練習ばかりするな。」


「………………あ!」


「撤退!」


剣を振るだけの練習に飽きていたのがバレたので逃げ出す自分だったが、その前に2つの影が出てきて逃げるのを妨害する。




「アレクシス様、兄上様達に謝りましょう。」


「そうですよ、それに剣術の練習はしっかりとやりましょう!」


自分の逃亡を妨害したのはデリックとダリル、アイリスとベルタの長男だ。

そして自分の部下でもある、実はアイリスとベルタはこの2人を産んでいたので自分の乳母となったのだ、なのでデリックとダリルは乳兄弟となり3歳の頃から俺のそばに使えている。


男爵家の五男に部下が要るのかな? とは思ったのだが、父さんや母さんが必要と判断して使えさせたので仕方がない。

何にしろそんな2人の言葉に反論する自分。


「しっかりと練習してるぞ! シールドバッシュ!」


俺は盾をかまえて2人に突進をする。


「あ、あぶない!」


「それは剣術じゃないし!」


そして慌てて逃げだす2人、俺はそのまま戦術的撤退をするために走り去ろうとしたが、その前にアルフ兄さんが立ちふさがる。


「ハハハ! 兄ちゃんが相手してやろう!」


ヤバい、アルフ兄さんのテンションが変に上がってる!


アルフ兄さんは大刀を振り回しながら俺を待ち構えている、そこで俺は盾に身を隠すようにしてアルフ兄さんに突っ込み、大刀の攻撃範囲外から盾の後ろに括り付けてある棒手裏剣を投げつけた。


「うぉ! ど、どこに隠してた!?」


盾の後ろです、あと刃は潰してあるからたぶん刺さりませんから安心して……弾かれた!


同時に投げた2本、時間差で投げた3本、最初に投げた2本と時間差の2本も囮で、本命の視界の外から他の4本に隠れるように投げたのに本命まで弾かれた俺は……そのまま盾をかまえて突進してアルフ兄さんに体当たりをかました。


「シールドバッシュ!」


[ドカ!]


「ハハギャアァァ!?」


俺の盾に吹き飛ばされるアルフ兄さん、そしてそのまま駆け去ろうとする俺だったが、新たな敵が前に立ちふさがる。


「バカめ、油断するからだ!」


「ゲ! アランお兄様!」


さらにヤバい! アランお兄様はアルフ兄さんみたく油断しない、あとお兄様呼びは嫌だから兄さんって呼ぶようになりたい!


何にしろここを突破しなければ!


そう考えた俺は棒手裏剣を同じように5本投げつける、だがアラン兄さんは大剣を軽々と振るうとアッサリと5本全てを叩き落とし、軽く後退すると体勢を立て直す。

さらに追撃を加えようとする自分だったが、視界のはしに復活したアルフ兄さんがこちらに向かってくるのが見えた。


ってか復活がはや!


ど、どうする? 正面にアランお兄様、後方にアルフ兄さんが!




よし、逃げよう。


俺は棒手裏剣を兄2人に向かって2本づつ投げ牽制すると、2人とは逆の方に向かう、だかそこにも2つの影が!


「アレクシス、最近は練習に身が入ってなかったね。」


「うんうん、だから僕達も練習の相手をしてあげるよ!」


アルバート兄さんにアレックス兄さん、余計なことを!


「あわわわ、4人をいっぺんに相手は無理だ!」


どうする? どうしよ! アランお兄様とアルフ兄さんは左手から、アルバート兄さんとアレックス兄さんは右手からやって来る!


……左右から?


左右から迫り来る兄達、そこで俺は残り10本になった棒手裏剣を投げつけて来る方向を調整すると、ギリギリで兄達の攻撃範囲の隙間から脱出する。


「アルバートにアレックスか!」


「よし、アレクシスの前にお前達の指導をしてやろう!」


「誘導された!?」


「アレクシス、こっちに加わって助けるんだ!」


アレックス兄さんに呼ばれて仕方なく下の兄さん達に加勢する、しないと拗ねられて後で煩いからね。


結局、3対2での戦いになったけど、年齢と体格差で押されたので自分はデリックとダリルを、アルバート兄さんとアレックス兄さんも乳兄弟を呼んでみんなでボコろうとしたけど、アラン兄さんとアルフ兄さんの乳兄弟も参戦してしまい、大乱戦となってしまったのだった。



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