国の平定を目指す

 それからの日々は、少し気が休まる時間だった。


 カグラは貴族と面会したり、民と接したりと忙しく働いている。


 ナイルとスレンがめんどうな手続きをやってくれるおかけで、物事が上手く進んでいる。


 さらには、ダンがやってきてハクと共にカグヤの護衛をやってくれている。


 ちなみにゼノは腕を磨くということで、最前線でセシルと共に戦っているようだ。


 シンクは自由に空を飛び回り、時折城へと降りてくる。



 そんな中、俺は一人である場所に来ていた。


「……特に何も感じないか」


 生まれた家にやってきたものの……。


「やはり、ここは俺の家ではなかったということか」


 一応家は綺麗に残っているので、中を見てみるが……。


「まあ、いい。さて、次の場所に行くとしよう」


 何も感じないとわかったことが収穫だな。


「フェイス家も潰れたし……これで、俺の問題は解決したか」


 結局、奴の兄殺しは確定した。

 奴の妻がペラペラと話してくれたからだ。

 自分は止めた!とか、全部主人が!とか。

 なんとも救いようのないセリフを吐いていたな。

 結局、フェイス家は取り潰しということが決定した。

 余罪も色々とあり、妻は幽閉、子供たちは教会へ送られることになった。



 街を歩いていると、ナイルがこちらにやってくる。


「団長!」


「どうした?」


「野盗が出たとの事です!」


 国が荒れているので、次々とそういった輩がやってくる。

 元からいた者や、隣国から逃れてきた兵士達が野盗と化しているようだ。


「そうか、では俺が行ってこよう」


「お願いします! すぐに兵士たちを向かわせます!」


 俺の仕事は主にこれを行なっている。

 理由はいくつかあるが、最大の理由はこれである。

 俺は戦い以外には興味もなければ、それしか能がないと思わせるため。

 武力がある俺が下手に政治に介入すると、色々とややこしい面がある。

 下手に祭り上げられても困るし、俺はカグヤに従うというスタンスを取っている。



(シンク!)


(パパー!?)


(仕事の時間だ。手伝ってくれる良い子はいるか?)


(わたしは良い子だよー! 手伝うのっ!)




 都市を出て、シンクに乗り込む。


「な、なんだ!?」


「お頭! 空にドラゴンが!」


「バカいうな!」


「あれが噂のドラゴンじゃないですか!? 皇都に現れた守護者って!」


 どうやら、意図的に流した噂が広まっているようだな。

 カグヤの言うことを聞く、皇都の守護者だと民にも説明してある。

 最初はハクもシンクも怖がられていたが、子供は純粋なものだ。

 敵意がないことがわかるのか、ハクやシンクに近寄ってきてくれた。

 それからは、少なくとも怖がられることはなくなってきたな。


「クルルー?(燃やしていいー?)」


「いや、待て。民を巻き込んでしまう」


 村に賊が入り込んでいるから、シンクのブレスは撃てない。

 なので空から飛び降り、村の中央にて二本の剣を構える。


「し、死神だっ!」


「ヒィ!?」


「こ、こいつが!?」


「二本の剣に青い騎士服……間違いないです! 女帝の剣です!」


 死神か……まあ良い。

 女帝の剣というのは、噂を流したが……死神は勝手についたな。

 これも、俺はカグヤに従うという意思を示すためだ。

 さらにはカグヤを害するなら、俺が容赦しないという意味合いも持つ。


「村の者よっ! 俺より後ろへ下がれ!」


「は、はいっ!」


「ありがとうございます!」


(シンク、村から逃げる奴は任せる)


(わぁーい! お手伝いだっ!)


「お頭! 後ろにドラゴンがっ!」


「く、くそっ! 死神とはいえ人間だっ! 全員でやっちまえ!」


「まあ、そうくるよな——普通は」


 シンクより、俺のが強いのだがな。


「どけぇ!」


「お前がな」


 素早く剣をしまい、徒手空拳にて対応する。

 振り下ろされる剣を素手で受け止め、みぞおちに蹴りを入れる。


「グハッ!?」


「なんだこいつ!?」


 槍が繰り出されるので……槍の柄を掴む。


「はっ?」


「しっかり握ってろよ?」


「な、なにを?」


「セァ!」


 槍ごとぶん回して、迫り来る敵にぶつけていく。


「がぁ!?」


「ごぁ!?」


「ゲフッ!?」


 その隙をついて、魔力の込めた拳を叩き込んでいく。

 手足を重点的に狙い、自力で立てないようにする。


「に、逃げられねえ!」


「どうして殺さない!?」


「剣を使わないんだ!」


「平和な村をお前らの血で汚すわけにはいかないからな」


 数十人程度なら剣を使うまでもない。

 ひとまず片付けた俺は、村長の男性に話しかける。


「もうすぐ兵士達がやってきます。それまで少々お待ちください」


「え、ええ……噂通りの方なのですね。強く礼儀正しい騎士がいると……それが女帝になられるというカグヤ様の側にいると」


「ええ、今回もカグヤ様の願いにより参上した次第です」


「ありがたいことですな……以前は助けを求めても、なにもしてくれなかった」


「申し訳ない」


「あ、頭をお上げください! 貴方が謝ることではありませんよ」


「いえ、私は元々はこの国の兵士です。かわってお詫びします。そして、これからの行動でもって示してまいります」


「なんと……皆の者! 聞いたか!?」


「おう!」


「はい!」


「我々の村はカグヤ様を支持するぞ!」


「ウオォォォ——!!」


 村の住人達が声を上げる。


 俺は今、こういったことを繰り返している。


 言い方は悪いが民に恩を売り、捕まえた兵士たちを労働力として使うために。


 これも少しでも早く国の体制を整えるためだ。


 俺には、ずっと嫌な予感がしている。


 身体に何かまとわりつくような……。


 それがいつ来るのかわからないが……。


 準備だけはしておかなくてはいけない。



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