第151話 合宿

千歳とまともに顔を合わせないまま、お盆休みを迎えてしまい、カズさんはタイミングを図ったように切り出してきた。


「そろそろ帰るわ」


「え? ここにいていいっすよ?」


「良くねぇだろ。 お盆だから奏介の親父も帰ってくるだろ? 世話になったな」


カズさんはそう言いながら荷物を持って玄関を出てしまい、寂しさに襲われ続けていた。



ジムも部活もないお盆休みを一人で過ごていると、寂しくて仕方がない。


『こんな気持ち、始めてだ… 千歳、何してるんだろうな…』


千歳にラインをしても返事がない。


寂しさを紛らわすように、千歳の顔を思い出しながら、千歳に似合いそうなミサンガを編み続けていたんだけど、最初に作ったものの出来が良くない。


『ダメだな。 失敗。 ロードワーク行こ』


ため息をこらえながら準備をし、ロードワークに出かけていた。



お盆休みが明け、ボクシング部の合宿へ。


朝から学校の前で部員たちと待ち合わせたんだけど、そこには星野の姿もあり、小声で薫に切り出した。


「…また呼んだのか?」


「谷垣先生がね。 体育の単位が付けられないんだって。 星野さん、体育さぼりまくってるし、谷垣先生が体育見てるから、『合宿に来て、ちゃんとやったら、履修したことにする』って言ってたみたいだよ」


『辞めちゃえばいいのに…』


口には出さずにバスに乗り込み、昼過ぎには去年とは違う海沿いの廃校へ。


バスを降りると、英雄さんとヨシ君、智也君と凌、そしてカズさんと光君の6人が出迎えてくれた。


「あれ? カズさん?」


「よお。 お盆中、ジムに来なかったな?」


「休みって言ってましたよね?」


「休みでも、ちーが開けてるよ。 連絡しなかったのか?」


「したんですけど、返事がなくて…」


「あ~。 あいつ、ずっとジムに籠ってたからなぁ… 気が付かなかったんじゃないのか?」



『行けばよかった…』


ため息をつきながら宿舎に行き、4人1組で部屋を使うことになったんだけど、俺は人数が溢れたせいで、ヨシ君と智也君、そして凌の4人で同室。


智也君にダブルベッドの下を指定され、ベッドの上に荷物を置き、着替えた後に体育館へ。


英雄さんが中田ジムの面々を紹介した後、ストレッチをしてトレーニングが始まったんだけど、なぜか光君が俺につきっきりで、マンツーマンの状態に。


しばらくトレーニングをしていたんだけど、星野はベンチに座ったままスマホをいじり、動こうとはしない。


薫が忙しそうに走り回る中、星野はスマホをいじりながらカバンを漁り、お菓子を食べ始めてしまい、中田ジムの面々と谷垣さんはイライラし始めていた。


俺らは見慣れてるから、何とも思わなかったんだけど、谷垣さんは星野に近づき切り出す。


「星野、お前何しに来たんだ?」


「生理痛酷いんで休んでます」


体調のことを言われ、谷垣さんは何も言えなくなってしまい、英雄さんのもとに向かっていた。


英雄さんは谷垣さんと少し話し、呆れたように首をかしげていたんだけど、光君の構えるミットを殴り始めると同時に、イライラがピークに達したのか、カズさんに怒鳴りつけた。


「カズ! 桜はまだか!!」


「あ~ もうすぐじゃないかな? 渋滞してたらもっとかかるよ」


カズさんの言葉を聞き、英雄さんは苛立ったようにスマホをもって外へ。


光君はそれを見ながら、ミットを構える手を下ろし、俺に歩み寄ってきた。


「キレてるな」


「ですね。 つーか、なんで居るんすか?」


「うちのジム、お盆休みが交代制なんだよ。 嫁も体調不良で実家に行ってるし、一人で居ても暇だからな」


「ついてなくて良いんすか?」


「悪阻がひどいだけだから。 俺がいたら不都合か?」


「いえ… なんとなく…」


「高校生のガキが気にすることじゃねぇよ。 さ、打ってこい」


光君はそう言った後にミットを構え、それを殴り続けていた。

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