第18話 改造人間サマーン~女の勝負変~

「どういうこと?」

俺は、雅にきいた。

雅は、俺に、言った。

「俺は、雅じゃない。お前の兄の学、だ」

「はぁ?」

俺は、雅を部屋から追い出すと、ドアを閉めて、鍵をかけた。

「サマーン!直之!」

ドアをどんどんと、激しく叩く音がきこえる。

「うるさいな。近所迷惑だから、やめろ!」

「中に、入れてくれ!」

「やだよ!また、お前たち、変な遊びをしてるんだろ!」

「お前が、6才の時」

雅が大声で言った。

「おねしょしたのを、一緒に、片付けてやった、この俺を蔑ろにする気なのか?」

「何?」

俺は、ちっと、舌打ちをした。

兄貴は、雅にそんなことまで、話しているのか?

「お前が、7才の時」

雅は、なおも、続けた。

「遊園地に行ったとき、はしゃぎすぎて、トイレに行くのを忘れて、おも」

「入れ!」

俺は、ドアを開けて叫んだ。


雅こと、兄貴が言うには。

兄貴が、魂を入れ換える装置『魂転送機』の研究をしていたとき、装置が爆発し、その結果、装置の側にいた兄貴と雅の魂が入れ替わってしまった、ということらしい。

「そうなんだ」

俺は、言った。

「じゃあ、俺は、これで。明日、早いので」

「ちょっと、待て!」

雅(兄)が、言った。

「雅が、いや、俺の体が、大変なんだ!」

「何?」

俺は、雅(兄)にきいた。

「兄貴が、どうしたって?」

「誘拐された」

「またか!」

俺は、言った。


俺と雅(兄)は、3丁目のスナック『桶狭間』の隣にあるガレージに向かった。

俺が、ドアに手を伸ばしたとき、だった。

「ぎぃやぁぁぁっ!やめろ、○ョッカー、やめてくれぇ!」

「だから」

女の声がきこえた。

「私たちは、そんなんじゃないわよ!」

「やばい!俺の体(それと、雅)が、悪魔の科学者の手に!」

雅(兄)が、言った。

「いそげ!サマーン!」

俺たちは、ドアを開けて、中へと入った。

そこには。

回転ベットにはりつけられた兄貴(雅)と、スケスケネグリジェ風の衣装に身を包んだ文子の姿があった。

「文子!」

「来たわね!この、エロメスガキ!」

文子が、手にしたムチで、雅(兄)を指して言った。

「今日こそ、決着をつけるわよ!」

「何の、決着、だ?」

俺がきいた。

すると、文子が言った。

「どちらが、学のパートナーとしてふさわしいか、よ!」


「と、いうわけで」

俺は、言った。

「雅(兄)VS文子、どっちが、兄にふさわしいか、対決!」

「わあぁぁぁぁっ!1」

スプリング8号こと、田所さんが、拍手する。

俺は、ベットに縛られた兄(雅)を挟んでにらみ会う文子と雅(兄)を見てきいた。

「で、どうするわけ?」

「決まってるでしょ!」

文子が言った。

「どちらが、天才科学者 佐山 学のパートナーとして相応しいかの勝負、よ。あれ、よ、あれ!」

「あれ?」


「それでは」

俺は、回転ベットに縛られた兄貴(雅)の横に、机を並べて座って、スタンバイする文子と雅(兄)に向かって言った。

「実力テスト、開始!」

「この私が」

文子が凄い勢いで問題を解きながら、言った。

「この程度のテストで、バカん子、雅に負けるわけが」


「勝者、雅(兄)!」

「イェーイ!」

回転ベットに縛られた兄貴(雅)が、叫んだ。

「さすが!」

「なぜ?」

くずおれた文子が、涙ながらに言った。

「こんな、バカのふりして、頭までいいなんて。私は、もう、どうすれば」

「文子」

雅(兄)が言った。

「お前は、悪くない。ただ、俺が、天才すぎるだけだ」

「わあぁぁぁっ!」

文子が、泣き崩れた。

「おい!」

俺は、小声で雅(兄)に言った。

「こんな勝負ありなのか?」

「ありよりのあり、だ」

雅(兄)が、縛られている兄貴(雅)を助けながら、言った。

「知らぬが仏、だ」

俺たちは、号泣している文子と、その横で、文子を慰めている田所さんを残して、そのガレージを去った。




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