第15話 改造人間サマーン~改造変~

バイト先の探偵事務所に新人が入ってきた。

なんと、女子高生だった。

女嫌いの所長が、なぜ、と思ったら、なんと、その娘は、所長の親戚にあたるらしい。

名前を、田所 春菜という。

年は、俺と同じで16才だった。

「よろしくお願いします」

ぺこり、と頭を下げる仕草がめちゃくちゃ

かわいい。

僕は、恋に落ちた。


それから、しばらくたってからのことだった。

俺が、バイトを終えて、深夜に帰宅すると、ハイツの前の駐車場に、ボロボロになった間さんが倒れていた。

俺は、そっと、迂回して、ハイツの2階へと続く階段を上った。

君子危うきに近づかず、だ。

家のドアを開けようとすると、ドアがすでに開いていた。

俺は、中に入りながら、兄貴を呼んだ。

「兄さん、いるの?」

家に上がって、台所へ入ったところで、俺は、何か、柔らかいものを踏みつけた。

そっと、下を見ると。

それは、横たわった兄貴だった。

「あ、ごめん、こんなとこで寝てるとは、思わなかった」

すぐに、足をどけたが、兄貴の返事は、なかった。

「兄さん?」

俺が呼び掛けると、低く呻き声をあげて、兄貴は、言った。

「サマーン、敵の改造人間が現れて、基地が襲撃された」

「何だって?」

俺は、最近、似たようなことがあったのを思い出して言った。

「また、変な遊び、か?」

「違う!」

兄貴が言った。

「本当の、敵襲、だ!」

「そうなんだ」

俺は、きいた。

「狼少年の話は、知ってるか?」

「だから」

兄貴が、むくっと起き上がって言った。

「本当の、本当に襲撃されたんだって」

「へぇ」

俺は、きいた。

「どこの、誰?」

「どこかの、誰か」

兄貴が言った。

「とにかく、正義を語る、嫌な奴等だ」

「敵って、正義の味方だったの?」

俺は、興味なかったがきいた。

「どんな奴?」

「一人は、白衣を着た女科学者、だった。バスト85、ウェスト58、ヒップ85、ぐらいの不二子ちゃんばりの美女だった。名前は、峰 文子、25才、だ」

「詳しいね」

俺が言うと、兄貴は、頷いた。

「大学が一緒っだった」

「お友だち、かな?」

「昔、付き合ったことがあるが、つまらない女だ」

兄貴が言った。

「あの女、雅を拐っていったんだ。改造してやる、とか言って」

「えっ?マジで」

俺は、言った。

「助けに行かないといけないかな?」

「当然、だ」

兄貴は、言った。

「雅は、この世に二人といない、面白い女だ」

「ふぅん」

俺は、きいた。

「で、どこにいったらいいの?」

「3丁目のスナック『桶狭間』が、奴の実家だ」

兄貴が言ったので、俺は、ビックリして言った。

「近いな」

「ああ 」

兄貴が頷いた。

「昔からの、腐れ縁だ」


俺たちは、救助した間さんも連れて、スナック『桶狭間』に向かった。

スナックの扉を開けると、昭和の歌謡曲が流れていた。

「いらっしゃい」

ママが、明るく声をかける。

「あら、佐山君、弟さんも一緒なの?」

「こんばんは、ママ、文子いる?」

兄貴が、店のカウンターに座ってきいた。

間さんと俺も、つられて、座った。

ママは、ため息をついて言った。

「それが、変な友達を連れてきて、家のガレージにこもってるわ。変な、薬とかに手を出してなければいいんだけど」

「ちょっと、ガレージに行ってもいい?」

兄貴が言った。

「久しぶりに、文子と話がしたいから」

「いいわよ!」

ママが笑顔で言った。

「もちろんよ」


俺たちは、スナックの横にあるガレージへと行った。

ガレージのドアを開けると、そこには、大きな手術台の上に縛り付けられた雅の姿があった。

「やめろ、○ョッカー!やめてくれ!」

「いい加減にして、私たちは、悪の組織じゃないのよ」

白衣の美女が言った。

「私たちは、正義の味方『私立地球防衛軍』なんだから」

「相変わらずの、だめっぷりだな、文子」

兄貴が声をかけると、美女は、はっとして言った。

「いつの間に、油断も隙もありゃしない。この、顔面偏差値だけ、無駄に高い、バカ男」

「誰が、バカ、だ」

兄貴が言った。

「見るがいい、俺の最高傑作、改造人間サマーン、を」

「また、妙なもの、造ったわね」

女が、言った。

「そっちこそ、見るがいいわ、私の造った改造人間を。スプリング8号!」

女が呼ぶと、部屋の隅にいた少女が返事をした。

「はい!隊長!」

「あれ、君は」

俺は、言った。

「田所さん?」

「ええっ?」

田所 春菜が、驚きの表情で言う。

「佐山君?」

「なんだ、二人は、知り合いか?」

女が言った。

「なら、話が早い、スプリング8号、殺ってしまいなさい!」

「ええっ、でもぉ」

田所さんがもじもじしながら言った。

「もう、バイト上がりの時間だし、早く帰らないと、ママに怒られちゃう」

「延長料金、払うから!」

女に言われて、田所さんが、頷いた。

「わっかりました、隊長!」

田所さんが言った。

「ごめんね、佐山君、恨みはないけど、死んでちょうだい!必殺、フィンガーミサイル!」

田所さんが、両手を突き出して叫んだ。

大きな破裂音がきこえた。

「ええっ?」

田所さんの両手の指からクラッカーが飛び出して破裂した。

辺りに飛び交う紙吹雪。

「えっと」

田所さんが叫んだ。

「今度は、本気よ!聴け、わだつみの声!デスボイス!」

田所さんが何かを叫んだ。

何事も、起こらなかった。

「あれ?」

しばらくして、黒い生き物が田所さんの周りに集まってきた。

田所さんが悲鳴をあげる。

「ゴキブリぃ!きゃあっ!いやあ!」

「大丈夫?」

俺は、スリッパを持って、田所さんを救出に向かった。

兄貴が言った。

「相変わらず、詰まらぬものを改造しているな、文子」

「何よ」

文子がよよっと崩れて、言った。

「どうせ、私は、秀才、天才のあなたには、敵わないわ!」


「とにかく」

兄貴が雅を手術台から助け下ろして、言った。

「帰るとしよう」

「あ、あたしも!」

田所さんが、言った。

俺たちは、敗北を噛み締めている女を残して、その場を去った。

変な科学者も上には上がいると思い、俺は、兄貴に改造されて、まだ、ましだったのかも、と思っていた

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