第四章

ウォリーのパーティ

 ウォリーは剣を抜き戦闘態勢に入る。

 ダーシャも黒炎を纏い、目の前の巨大な敵を見据えていた。


 ツインタートル。頭部が2つあり全身が強固な甲羅で守られた双頭の亀だ。


「あいつの身体は硬い。まともに攻撃しても通らないだろう。狙うなら、首の下だよ」


 それぞれの頭がウォリー達に向かって口を開ける。そして口内が発光し、そこから魔法弾が発射された。

 一方の弾は火炎。もう一方は電撃の塊。

 2つの頭がそれぞれ別属性の攻撃をしてくるようだ。


 ウォリーとダーシャに弾が1発ずつ迫って行く。

 その時、2人の背後で構えていたリリが防壁を出現させた。

 弾は防壁とぶつかり、大きな土煙が巻き起こった。


 2つの頭部は再び口を開け次の攻撃を準備する。

 すると、その頭の目の前にダーシャが姿を現した。

 ツインタートルが首を伸ばせばその高さは7メートル近くになる。ダーシャは黒炎を翼に変え、その高所にある頭部の前で浮遊し留まっていた。

 2つの口は眼前のダーシャに狙いを定め魔法弾を飛ばす。ダーシャはそれを空中で躱すが、次の弾、次の弾と、休む間も無く攻撃が飛んでくる。ダーシャの飛行速度はそれほど速くない。最初は上手く躱していたダーシャだったが、段々とついていけなくなる。

 そしてついに、弾の1発がダーシャに直撃した。


 だが、ダーシャは無傷のままそこに浮いている。


「凄いものだ、リリのスキルは」


着る防壁バリアスーツ

 その名の通り、常に防壁が自分の身体を覆うように張られる魔法。ガーディアンのスキルを持つリリの能力の1つだ。

 この防壁がつけられてから最初に受ける1撃のみは無効化される。ただし連続で使用する事は出来ず、30分程のインターバルが必要である。


 2つの頭は仕留めたはずの相手が平然としているのに驚いたのか、一瞬動きが止まった。

 その瞬間、ウォリーがツインタートルの首の下部分を2つ同時に切り裂いた。

 ダーシャが頭2つ分の視線を引きつけている間に、ウォリーは盗賊マンで気配を消し敵の首下に接近していた。


 首から血が吹き出しもがき苦しむ巨大亀の前で、ダーシャは頰を膨らませる。

 彼女はウォリーが切りつけた傷口を狙い、口から黒炎を吹き出して追い討ちを食らわせた。

 傷口から侵入した炎が喉を通って出て来たのか、亀の口からブワッと火の粉が舞うのが見えた。

 そして大きな地響きを鳴らし、2つの頭が地面に落ちる。

 そのまま、ツインタートルが再び動き出す事は無かった。


「やったー!すごいすごい!」


 今まさにモンスターを仕留めた2人を見ながら、リリが飛び跳ねる。


「2人ともカッコよかったです!」

「いや、リリの防壁のおかげだ。あれを身につけていたから私も遠慮せず奴の目の前まで接近できた」


 興奮しながら歩み寄ってくるリリに、ダーシャはそう声をかけた。


「僕なんか剣で斬っただけだからね」


 ウォリーが頭を掻きながら笑う。


「しかし、これで私達も…」

「うん。Bランクに昇格だ!」


 3人は顔を見合わせながら拍手を贈り合った。

 ウォリー自体はAランク出身だが、新しくパーティを作ったという事でパーティのランクはDからスタートした。ランクを上げるには一定の難易度の依頼を成功させなければならない。

 彼らのパーティはリリの加入後、Cランク、そして今ツインタートルを討伐した事でBランクへの昇格条件をクリアした。


「ウォリーは前のパーティではAランクだったんだろう?このまま行けば、返り咲けるかもしれんな」


 ダーシャがウォリーの肩を叩いた。


「うん。でも、それにはギルドに認められる必要があるから、まだまだ先は長いなあ」


 Bランクまではどのパーティも自由に挑戦ができる。だが、Aランク以上になるとまずギルドがそのパーティの能力と過去の実績を調べ、審査した結果挑戦資格ありと判断されたパーティのみAランクへの挑戦権を得られる。

 Aランクの依頼はそれなりに危険度が高く、誰でも挑戦できる形にすると無謀なパーティが次々と犠牲になっていくため今のような形になった。


「そう言えばどうしてウォリーさんは前のパーティを抜けたんです?Aランクなんて滅多になれないのに」

「私も前に同じ事を聞いたが、方向性の違いと言われたぞ」

「ええ!?そんな事でAランク抜けちゃうなんてもったいない!」


 驚くリリに、ウォリーは気まずくなった。


「僕も出来れば残りたかったよ…でも、パーティメンバーの希望でね」


 それを聞いて今度はダーシャがギョッとする。


「なに!?それじゃあ何か!?そいつらはウォリーに出てけと言ったって事か!?」

「まあ…そうだね」


 ウォリーは俯いた。


「見る目の無い連中だな、ウォリー程の男を自ら手放すとは!」


 ダーシャが鼻息を荒くしながら言い放った。


「そうそう、パーティ名をまだ決めてなかったよね…」


 ウォリーは恥ずかしくなり話題を逸らす。


「ああ、Bランクに上がったんだし名前くらい決めた方がいいな」

「何かいい候補ある?」

「ウォリーズはどうだ?」


 ダーシャがそう即答したのでウォリーは苦笑する。


「いや…パーティ名に自分の名前を入れるのはちょっと…」

「なぜだ!ウォリーのパーティなんだからいいだろ!」


 熱心に語るダーシャに他2人は困り果てる。結局、パーティ名は決まらないまま先送りになった。







「おめでとうございます。ツイントータスの依頼達成により、ウォリー様のパーティはBランクへ昇格いたしました」


 ギルドの受付嬢がにこりと笑う。


「やった!」


 受付前でウォリー達3人はお互いにハイタッチを交わした。


「あら〜?これはこれは、ご機嫌ですねぇ〜」


 突然、女性の声がウォリー達にかけられた。それはウォリーにとってはここ暫く聞いていなかった、それでいて昔から馴染みのある声だった。


「ミリア…」


 かつてウォリーを追い出したパーティ、『レビヤタン』がそこに居た。

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