第28話 その時だよ
「クライアントに魂を渡すわけにはいきません。いつかは来るのを知っていたでしょう、今がその時なんです。あなたの魂は、今ここで刈り取らせていただきます」
そう言って死神が鎌を取りだした。
近づく死神に、俺は覚悟した。
この死神と、つき合いは長い。
こいつの言った通り、いつか来るのは知っていた。
だから恐怖は感じなかった。
ただ 、あぁその日が来たんだなとだけ思っていた。
あの日から……、そうあの日から俺の命はこの為にあったんだなと悟った。
父親が娘の為に命をかける、最高の死に様じゃないか。
鎌を構えた死神が静かに近づいてくる。逃げても無駄だと知っているのと、もともと逃げる気もないから、俺はそのままでいた。
死神の鎌が、俺の目の前を空を切った。
どさっという音が聞こえなかった。
ああ死んだな……
身体の重さを感じない、天井が近くなった、魂の緒が切られて肉体から離れたのだろう。
下を見れば死体となった俺が寝ている……
え、
起きて伸びをしている!!
柔軟体操をしている!!
そして、こっちを見て笑いやがった!!
だ、誰だ、お前は!!
「はあ? ああそうか、直接会うのは初めてだったな。メールでは長いつき合いのだろうが」
メール? ということはお前が……
「おう、今からオレがお前だ。今までご苦労さん」
なぜだ、どういうことだ、お前が欲しいのは俺の魂なんだろう
「そんなもん要らんよ、オレが欲しいのはこっち。身体の方だよ」
なんだと
「やろうと思えば乗っ取るなんて簡単に出来るんだがな、色々と厄介なんだよ。あとあとな」
ど、どういう……
俺の意識が薄れてきた……
「おう、死神。コイツまだ意識あるぞ、大丈夫か」
「まあ今のうちだけです。問題ないですよ」
鎌を仕舞いながら、事も無げに答える死神に問いかける。
どういうことなんだ アイツは俺の魂が欲しいんじゃないのか お前は俺を騙していたのか
「騙してなんかいませんよ。私を通してですが、この方は最初から、あなたの寿命が欲しかった、と言ってたじゃありませんか」
だから どういうことなんだ
その時、俺に聴こえるように響く笑い声があった。
クハハハハ ヤッタゾ ヤットオカエシガ デキタゾ
声でなく、直感で分かった。ヤツだ。終生のライバルともいえる、アイツだ、前社長だ。
死神の背中から、どす黒い色した煙のようなものが出てくる。
シンダ シンダ コレデ オマエモ オワリダ クワハハハハ
ひときわ高い声で笑いながら、おそらくヤツであったろう煙は散っていった。
「やれやれ、やっと未練が絶ちきれましたか。なかなか執念深い魂でしたね」
死神が一仕事終えたような口調で言う。どういうことなんだ。
「ふむ、もうそろそろ話しても良さそうですね。疑問が残り、未練を残させたくないですから」
「それならオレから言わせてくれ。計画が上手くいったら話したくなるじゃないか、いいだろう」
「ご自由に」
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