過去を夢に見る
風が体を通り過ぎていく
花の香りが心地よい
一面の色とりどりの花が風に揺れている。
新しく買った着物の裾を汚さないように気をつけて
できるだけ花を踏まないように進んでいく
一本桜の下まで。
「あ、またいた!ねね、いつもいるよね君!」
「…またおまえ…、飽きないね」
その一本桜の木の根元でいつも背を気にあずけて本を読んでいる少年
幼い顔立ちだけど整っていて綺麗だ。
肌も白い、夜色の髪が太陽の木漏れ日で不思議に光る
こちらを見る赤い瞳は少し鬱陶しげに影を残している。
「えへへ。今日はねお団子買ってきたんだ!」
「あんたの雑談の相手するほど暇じゃないんだけど」
「えー?」
「…好きにすれば、聞いてるだけだけど」
包んでもらった三色団子を広げる
一本つまんで食べる。もちもちの食感が楽しい
少し駄々をこねると彼は面倒くさそうに毎回「いいよ」と言う
そして、毎回持ってくるお菓子に手をつけるのだ。
初めてあったのは2月、花がまだ咲いていなかったころ。
散歩をしていた。
細い道を進んでいった。
知らない道にわくわくしていくと風が吹いた
一本の大きな木の下で本を読む少年に恥ずかしながら一瞬目を惹かれた
そして在り来りなこんにちはという会話から彼と友人(といっている)になった。
「っていうか!新しい着物どう!」
「普通」
「ぐっ」
「…うそ、似合ってるよ」
「…!」
彼はこちらをちらりと数秒もない時間着物を見ると
すぐに本に視線を戻した。
似合っている、確かにそう言った
嬉しくなって口元が緩む
お団子の味が倍美味しくなった気がする。
「ねね、明日ある桜まつり行こうよ!」
「なにそれ」
「え!桜が綺麗に咲く時期に3日間行われる行事!お祭り!」
「…暇だったらね」
「いっぱいおしゃれしていくから!」
「…」
「明日日が沈むくらいに待ってるから!」
「…いや行くって言ってな…」
「あ!こんな時間…ごめん!稽古がある!帰るね!」
「あっおい…」
袋に入れていた懐中時計を見ると
針が結構進んでいる
急いで帰らないと次はピアノの稽古だ。
彼の言葉を全て聞き終えないうちに
立ち上がってその場を足早に去る。
なにか言いたげな視線を頭の後ろに感じたが気のせいということにしておく。
あぁ、明日の夜が楽しみだ。
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日暮れ時
花畑が茜色に染まった。
少し派手かもしれないが赤い着物を下ろした
花の簪をつけて髪を結い上げた。
家族はみんな似合っていると言ってくれたが
少し、意識しすぎた格好になっているかもしれない。
そわそわと彼を待つ。
数分して、足音が聞こえた
「…ごめん、待たせた」
「んーん!今きたところ!」
走ってきたのか少しだけ息が乱れている
衣服も若干乱れているのが分かる
なんてことないことかもしれないが
嬉しい気持ちになる。
自然と笑みがこぼれた。
「ねぇ、私りんごあめ食べたいな!」
「…奢れってこと?」
「ふふーん。」
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ピピピピ と 現実的な電子音の音で目が覚める
目覚ましの音だ。
目を開けると見慣れた自室の白い天井が見える。
上体を起こして目を擦る。
夢を見た。
不思議な夢。
私が私の知らない音無くんとお祭りにいって林檎飴を食べる夢。
心が若干モヤつく。
しかし、懐かしい気持ちと穏やかな気持ちに包まれる。
いつどこでも、どんな時でも一緒にいたのかもしれない
そう思うとまぁ、モヤモヤした気持ちも晴れる。
カーテンが揺れる
穏やかな風が運ばれたようだ
暖かい心地の中ベッドから降りて伸びを一つ
スマートフォンを手に取って一つ彼にメッセージを送った
「ねぇ、林檎飴おごってよ」
お、早速既読がついた。
今日は二人でどこに遊びにいこうか。
春麗らか、今日も天気がいいみたいだ
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