EP.3 従姉妹がやけに丁寧に解説してくれる
デートというわけで僕と斐音は私服に着替え、ショッピング街を歩いている。
隣にいる斐音を見ると髪をポニーテールし、オフショルダーとデニムを着ていて少し大人っぽい格好をしていた。
向日葵のピン留めはもちろんつけている。
「……ふふっ、お兄ちゃんの私服、格好いい〜」
そして何か呟いている。
斐音にはもう呟き姫の称号を与えてもいいのではないか?
「なんて言ったの?」
試しに聞いてみた。
いつもなら「な、なんでもないよ…!」とはぐらかされるが…
「えーと、お、お兄ちゃんの私服…格好良いって言ったの…」
今日の斐音は随分と丁寧に教えてくれる。
格好良いか…。斐音がそう思ってくれてるとは…。
「あ、ありがとう」
ちょっと照れるな。
「でも斐音の方がもっと可愛いよ」
「っ…!?!?」
そう言うと斐音の顔が真っ赤になった。ゆでだこみたいだ。
真っ赤な顔も可愛いなー。
「そういえば明日から斐音は高校一年生かー」
「う、うん。兄さんと同じ学校だよ」
斐音は今、中学三年生である。対して僕は高校二年生。明日になれば入学式があり、斐音は晴れて高校一年生、僕は高校三年生だ。
「斐音は可愛いからモテモテだね」
きっと『空前絶後の美少女が現れた!』と騒ぎになるだろう。
従姉妹が可愛いのは誇らしいことだ。
明日からみんなに、特に男子に斐音のことを問いただされそうだなー。
「私よりお兄ちゃんの方が…」
「ん?」
「わっ、私よりお兄ちゃんの方が格好良くてモテるよ…!」
なんていい従姉妹なんだ。こんな冴えない僕のことをモテると励ましてくれるなんて…。
「ありがとう。もし困ったことがあったらすぐに僕に言ってね、すぐ駆けつけるから」
そう言って斐音の頭をひと撫でする。
こんな可愛い従姉妹を守るのは僕の新たな役目だしね。
「っ…〜〜〜‼︎」
するとまた顔を真っ赤にした斐音。
心なしか目がグルグルと回っているようなー。
「わ、私、トイレに行ってくる…!」
すると急にそう言い走り去ってしまった。
あんなに慌てて走って…ずっと我慢してたのかな?
◆◆◆◆◆
「きょ、今日のお兄ちゃん…甘いよ…」
斐音はまたもや焦っていた。
ここまで恥ずかしながらも正直に答えているのに颯の反応はいつも通りどころか、逆に自分が照れさせられている。
難聴が原因で近づけないと思っていたが、どうやら颯本人が原因だ。
「お兄ちゃん、鈍感で難聴でたらし…。手強いよ〜、何か作戦を立てないと…」
◇◇◇◇◇
「あれ?おーい」
「ん?」
斐音を待ってると、誰かに声を掛けられたのでその方を向くと仲の良い女友達がいた。
「どうしたの?一人?」
中世的な顔立ちに茶髪色のボブで女の子というより格好良い男の子と言った方がいいだろう。
この子にはよく相談に乗ってもらってる。
「いや、従姉妹と来てる」
「ははぁーん。例の従姉妹ちゃんとねぇー。なんか進展あった?」
「目立った進展はないな…。あっ、変わったことといえば今日、従姉妹がやけに優しいんだよ」
「ん?優しい?」
「なんというか僕が聞き取れなかった言葉を丁寧に解説してくれるというか…教えてくれると言うか…」
聞き取れなかった僕にはありがたいけど、その度に顔を赤くするんだよなー。
「なるほど…。これは従姉妹ちゃん、勝負に出ましたなー」
「勝負ってなんのだ?斐音は誰かと勝負してるのか?」
僕がそう聞くと凄く険しい顔をされ、呆れたように言われた。
「……頑張っている従姉妹ちゃんが可哀想だよ。まぁでも片想いじゃないことだけいいか」
「?」
片想いじゃない?どういうことだ?
「と、とにかく少年よ。本番は明日なんだろ?頑張りたまえ!」
諦めがついたようにそう言われたと思えば、僕の背中を思いっきり叩いてきた。
「いってぇ!!急に背中叩かないでよ!」
「いいじゃないかー、いいじゃないかー」
全く、乱暴な友達である。
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