過ごした時間は短くとも、強く刻まれる師弟の想い。これは、そんなテーマの作品だ。
専門学校を卒業し、アクセサリー職人を目指す主人公。
様々な工房を訪ねるも、受け入れてくれたのはたったひとつ。それが「先生」の工房だった。
昆虫をモチーフとした樹脂のアクセサリーを中心に揃えた空間に、二人だけの静かな時間が流れる。
姿を現すのは毎年、夏の七日間だけ。いつものフリーマーケットと夏祭りが終われば、別れの時間が訪れる。
どれほど想いを連ねても、先生は蝉なのだから。
アクセサリーに向き合う真摯な職人であり、基礎から丁寧に指導を重ねてくれる良き教師。
そこに「蝉頭の半人間」という、ともすれば浮いてしまうはずの要素が驚くほど自然に溶け込み、不思議な世界観を作り上げている。
変わるものと、変わらないもの。そんな物語をしっとりと読んでみたい人にぜひお薦めしたい一作。
(時に熱く、時に寄り添い道を示す。師弟の関係性を楽しめる作品4選/文=夜見ベルノ)
ハンドメイドアクセサリー工房の先生と、弟子入り主人公(私)が作品作りを通じて、ありふれた時間と思い出を形成していく7日間を描いた中編の物語。装飾品のように夏の日を彩るクワガタやトンボといった虫のキーワード、合間に挿入されるコーヒーブレイク……からの、茶を嗜む。この『暑気を包んだ工程感』が魅力で、二人の近い距離感もスワイプする指から読み取れます。
タイトルにもあるように『蝉』をテーマだけでなくキャラ付けにも絡めて、二人の日々は過ぎていく。一話はだいたい5000文字くらいのボリュームで、日常を切り取るには悠長だけど、過ぎてしまえばあっという間に思える、この『一日』という刹那を1ページで感じさせる筆力は素晴らしいの一言。
気になる点は同じ単語と似たような言い回しが短い間隔で連続する所で、これは最後まで散見されました。上にある悠長は、時間を味わうと考えれば良い作用でもあるのですが、文芸の質としての視点が入ると、文字を重ね過ぎるあまり読者の負担になりかねません。
せっかく『アクセサリー』や『五綵を演出する昆虫』が物語のキーなので、地の文で飾り過ぎずにワンポイントくらいが丁度良いのになぁと非常に惜しい印象。ですが、人物間のやり取りや手製の描写はとても丁寧なので、取捨選択を意識して推敲したら隙の無い作品に昇華する事でしょう。
作品が示す、日常の変化と不変のメッセージ。そして予感が牽引するラストを是非、限られた読書時間を通じて見届けてみて下さい。
自分の稚拙な言葉で表すのも惜しい。
そう思わされるほどに、美しく。
無意識的に「無常」に恐れを抱いている私たち「人間」の胸に深くも柔く刺さる。
本当に神秘的で、素敵な作品でした。
変わらないものはこの世にひとつとしてありません。
家族や友人、恩人、苦手なあの人。
そして、愛した人。
己以外の他の存在である、「彼ら」が果たして明日も同じ「彼ら」であるのか。
そして、自分自身。明日も「同じ自分」で在り続けられるのか。
そんなことを考えさせられるほど、この物語は深みのある作品です。
この作品との出会いより、自身の中にある
「無常」への無意識的な恐怖を改めて思い知らされました。
しかし、この作品の何よりもの魅力はやはりたった7日間の夏の日常。
この日常で主人公が「無常」を恐れながらも
「無常の化身」とも捉えられる「蝉頭の先生」と過ごす美しくも、儚い夏の日常が本当に素敵です。
是非、皆様もこの物語で紡がれるたった7日間だけの「夏の日常」に心を奪われてください。
Twitterから参りました。まず先生の外見のインパクトでかなり意識をもっていかれます。そういえばアレをまじまじ見たことないけど口元どうだったっけ?と真面目に考えてしまいました。
主人公が仕事熱心で勉強を欠かさないタイプなので、好感を持って読み進めることができました。アクセサリーの描写も丁寧で、こんなに凝って作ってるものが現実にあったらほしいな~と思います。これがずらっと並んでいる様子は、漫画やアニメなどの映像で見たくなりますね。
最初から明示されていることではあったのですが、最後のシーンはやはり切なくなりますね。短命だからこそ美しい、別れがあって意味がある、そう分かっていてもやり切れない時はあります。だからこそ、ラストには希望が持てて良かったです。
楽しく読ませていただきました。これからも頑張ってください。