第51話 家を建てます
トントン。カンカン。トントン。カンカン。
マンテ村の午後に良い音が響き渡る。この音はもちろんヴィークたちの家を建ててるところから出てる。
一昨日ヴィークと大まかにどんな感じにするとかを話して、昨日最終決定して村のみんなに協力をお願いした。みんなは快諾してくれたので早速今日もう少しだけだが土台とかを作り始めたのだ。
あまりの速さに村人も驚いていたが、これは3人が本気でしっかり時間をかけて納得してるので問題なし。
「えっほえっほえっほ」
そこに丸太を運んできた体格のいい男が三人。結構重そうなのに軽々と運んでこれたのはやっぱり日頃から鍛えてるおかげだろう。「加護」ではないと思う。
「はい丸太一本。これからもどんどん行くぜ!」
やばいほどに頼りがいがある。男たちは疲れた様子もなくまた丸太を運びに山の方へ向かって行った。日々の鍛錬はこういうところで生きてくるのか。
「じゃあその丸太の皮を剥いてね。こういうのって魔法でやっちゃうと一瞬だけどみんなで力を合わせるから楽しいのよねえ」
「確かにそうですよね。前までなら出来るだけ時間を効率よく使うために何をするにも魔法を使ってたけど、ここじゃあゆっくりしていても誰からも文句言われないですから」
「ヴィーク君とかは私なんかより何倍も魔法使うの上手なんだからここから動かなくても生きていけそう。何から何まで魔法でちょちょいってさ」
「流石にそれは無理ですよ。俺はそこまでできません」
当たり前だ。先人たちはそこまで楽をするために魔法という技術を編み出したわけではないのだから。生活を豊かにする。そんな気持ちで生み出したはずだ。
「ねえヴィーク君。神様っていると思う?」
カミーユは突然そんなことを聞いてきた。笑って「どうですかね」と返そうとしていたヴィークだったが、カミーユの真剣な顔を見てもう一度真面目に考えることにした。
(そういえばアインもサムさんの家にいた時そんなことを言っていたような。あの時は加護が欲しかったって話だったっけ)
「そうですね。いると思いますよ。アンデットが人類を滅ぼそうとしていた時に加護という力で助けてくれたのは神様って歴史ではなってますし、実際俺はこうやって加護をもっていますから。でも今は全然使ってないし、宝の持ち腐れですね」
「ううん。そんなことは無いよ。あなたのその力は大切なアインちゃん、アリスちゃんを守るためにきっと役に立つ。だから少しくらいは鍛えておいたほうがいいよ」
「はい。肝に銘じておきます。それでカミーユさんはどう思ってるんですか?」
「あ、ハロルドが呼んでるからあっち行くね。それと私が聞いたことは忘れて。でも2人を守るっていうのは忘れちゃだめだから覚えてて」
それだけ言うとカミーユは笑顔で夫のハロルドの方へかけて行った。なんだったんだろう。よく分からなかったがずっと前線から離れていて少し平和ボケになっていたヴィークにとって気合が入るいい機会だったかも知れない。
「ヴィークく~ん何してるの? ほらほら私たちの家が少しずつ出来てるね」
「そうだな。出来上がるのが楽しみだ」
「うんうん。あ、ヴィークくん、まだこの丸太の皮取れてないじゃん。仕方ないなあ。今、私自分の仕事終わって時間あるから手伝ってあげる」
笑顔でアリスは木の皮を剥ぎ始めた。女の子がこういう事をしているのもなかなかいいものだ。
「そうだ。俺はこの笑顔を守っていかないといけないんだ。ずっとアインだけじゃない。アリスもだ。2人には笑って欲しいから」
「ん? 何か言った?」
「ううん。アリスはやっぱりかわいいなあって」
「もうっヴィークくんったら。ここはみんないるんだからあんまり言ったら恥ずかしい。でもすっごく嬉しい」
今一度自分がするべきことを確認したヴィークだった。
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