第41話 到着!

「あとどれくらいなのかなぁ」


「たぶん後三日もすれば着くんじゃないかな。方角もこっちであってるから」


 あの村を出てから一週間が経った。3人は仲良く時にイチャイチャしながら旅をしていた。時に温泉に入り、時に火山の横あたりを通ったり。そんな旅もあと三日で終わるらしい。


「あと三日かぁ。私すっごく楽しみなんだ。新しい生活。お兄ちゃんと同棲。えへへ」


 いつものように自由飛翔で大空を飛ぶ。そしてヴィークの手を握りながらだらしのない笑顔そう言うアイン。


「そうだね。俺もあの村は好きなんだ。きれいで素敵なんだよ。2人も気に入ってくれると思う」


「ヴィークくんがそこまで言うんだから最高の村なんだろうな。そういえば知り合いとかっているの?」


「あそこに居たのは数日だからそんなになんだけど……そうだな。可愛い人とか、それこそ勇者パーティーに参加できるくらいに戦士として強い人もいたよ」


「「ふぅん……可愛い人いたんだ」」


 ヴィークの言葉から出てきた「可愛い人」という単語。それを聞いた瞬間アインがむすっと不機嫌になった。


 アリスもジト目でヴィークの方をじっと見る。


 可愛い人って誰だろう。もしかしたらヴィークはその人のことを好き? そんな考えが頭の中をぐるぐる回る。


「アイン?」


「お兄ちゃんはその人のこと好きなの……?」


 今まで思ってこなかったけれどヴィークにはアインかアリス以外好きな人がいるかもしれない。そう思うだけで辛い。


「恋愛的に好きではないよ。あれ……? 恋愛的に人を好きになったことあるのか? 物心ついた時からずっと戦いだったし」


 それを聞いて安心したような。長くにわたって一緒にいた自分は女の子じゃあないと言われたような感じもする。


 アリスも同じようなことを考えていた。



 ◆◆◆



「2人ともそろそろ着くよ。なんか見覚えのある感じなところまできたよ」


「わぁそろそろ着くんだね。なんか緊張するな。お兄ちゃんと一緒なんだからしっかリしたところ見せないとね」


 空を飛んでいるので、手を繋いでいない方の手でパンパンと気合を入れるためにほっぺたを叩く。ヴィークが勇者パーティーのメンバーだったってことは村の人達は知ってるだろうから妹である自分も頑張らないと。


「大丈夫。大丈夫。そんなに構えなくていいからいつも通りの可愛いアインでていて欲しい」


「はぃぃ~。そうやって言われたら照れちゃうでしょ。もぅ!」


「ヴィークくん! 私はどうしたらいいかな。聖女だった頃みたいな振る舞いの方がいいのかな」


「いや、今の素のアリスの方が何倍も可愛いし、あの村に聖女って加護知ってる人はいないから」


「えへへ〜。ヴィークくん素の私そんな可愛いって思ってくれてるんだ」


 無自覚に2人を蕩けさせるヴィーク。悪い男である。


「あのでっかい山あったなぁ。2000メートルくらいの高さだったかな。今度一緒に登ってみようか」


 うんとアインとアリスが頷けばこれで一つやることが決まった。3人で登山!




「あ、家が見える! ヴィークくんあそこなの!?」


「そうそう。サムさんたちのコルン村より人も少ないから家の数も少ないでしょ。たぶんこんなところに人が住んでるとか誰も知らないと思うよ」


 旅人でもこんなところまでは来ないだろう。空を飛んできた3人ですらかなりの日数がかかったのだ。知っている人と言えば勇者パーティーのメンバーとかくらいだと思われる。


「よし、そろそろ着陸するよ」

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