第47話 再戦の準備
転移トラップにより、強制的に始まったドラゴン戦。なんとか命からがら逃げて、僅かな希望を求めてダンジョン最下層に向かった。ようやく辿り着いたダンジョンの最下層で僕たちは、祝福を受けることが出来た。
それから再び、ドラゴンが待ち受けているであろう階層まで戻った。奴を倒して、通れなかった道を進む。その先にあると思われる、地上へ続く階段を目指して。
祝福を受けてパワーアップした僕たちは、数日間か掛けて来た道を数時間で一気に戻ってきた。今までは苦戦していた敵も、フレデリカさんたちが急成長したことで、楽々と倒せるようになっていた。
ドラゴンとの戦いに向けて、僕たちは入念な事前打ち合わせを行った。攻撃は主に僕の攻撃魔法を中心にして、隙があればフレデリカさんが接近して大剣で奴を叩く。シモーネさんの弓矢はダメージを与えることではなく、援護することを主目的として仲間との連携を考えるようにする。
フレデリカさんとシモーネさんの2人は、僕の実力を“男性にしては、魔法が使えて戦闘能力は高いかな”という程度の認識だったようだ。けれども、ドラゴン戦を経て最下層へ向かう道中、そして今に至るまでに様々な魔法を扱って見せたところ“王国でも女性と男性の両方含めて、トップクラスの実力の持ち主かもしれないぞ”という風に高く評価してくれるようになった。今回のドラゴン再戦でも、主力として攻撃を任せてくれる。
「このパーティーの中で攻撃力が一番高いのは、エリオットだ。任せたぞ」
「女として情けないけれど、私たちの命を君に預けるわ」
「わかりました。任せて下さい!」
2人の命を預かる、重い責任のある役目を任された。
今回の戦闘では、絶対に無理しないことを徹底する。何か問題があったら、直ぐに撤退する判断を下そうと2人に言い聞かせた。死を覚悟した特攻なんて事は、絶対に考えないように。死なないようにすることを第一目標に掲げよう。
どの程度、今の自分たちがドラゴンに立ち向かって対抗できるのか。実力差を確認してから、攻勢に出るのか守勢に立つのか見極めるようにする。そういう約束をしてから、僕らはドラゴンとの再戦に挑む。
話し合いの後に、装備の見直しも行った。ここ数日間の連戦で、フレデリカさんの持っていた大剣の刃は、大きく欠けていた。限界を超えて使用してしまったからだ。その大剣で敵を斬る事は、もう出来そうにない。叩きつけて、どうにか敵にダメージを与えることが出来るぐらいかな。
シモーネさんの使用している弓も、握り構える部分がボロボロになっていた。それでは、なかなか狙いが定まらない。何とか、騙し騙しやって来たが限界だった。次の戦いを失敗してしまうと、本当にマズイことになる。
まだまだ、窮地の真っ只中である。
僕らは、あのフロアまで戻ってきた。やはり、中央にドラゴンが待機しているのを探知魔法で察知した。あれから、奴の様子は何一つ変わっていないようだ。
「それじゃあ、最後にもう一度だけ確認します。絶対に無理はしないでください」
2人に向けて、僕は念を押す。この戦いで、誰も死なないように。無事に生きて、地上へ戻るために。彼女たちは、コクリと頷いた。
「あぁ。危険だと思ったら、すぐに撤退すること」
「余裕があるなら、私たちは敵のドラゴンをじっくりと観察する。まずは鍛えられた能力が、奴にどこまで通用するか見極めること、ね」
ドラゴンが待ち構えるフロアの近くまでやって来た僕たちは、最後の確認を行っていた。フレデリカさんの返事を聞きながら、不満はないか、無理をしそうにないか、彼女の目をジッと見て判断する。1週間近く、一緒に過ごしてきた。目で見て、どう考えているのか少しは分かるようになってきた。
彼女は、真っ直ぐな目で見返してきた。シモーネさんも同じく冷静な目をしていたから僕は、彼女たちを信じることした。
僕はドラゴンとの戦いで魔法を連発して、敵を倒すためのダメージを与えることに集中する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます