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 ふたりで。


 抱き合おうとして。


 ふたりで。レジの台みたいなやつに、ぶつかった。


「いたたた」


「あはは。勢いが。勢いで。つい」


「ライター。どうぞ。あなたの。わたし。逢えて。うれしいです」


 その瞬間に。わかってしまった。ふたり。


 お互いに。生きる場所が、あまりにも。違う。


 日々をせいいっぱい生きているひとと。日々を危険にさらして死のうとしているひと。


 決して折り合わない、交じり合わない線。


 さっきぶつかった、このレジの台よりも。ふたりの距離は。遠い。


 いっときの想いで。抱きしめたとしても。それは。決して、交わらない。


 レジの台に置かれた、ライター。


 見つめる、ふたり。


 ひとりは、ライターを手にとって。もうひとりは、それを見つめて。


 そして。


 別れる。


 二度と、逢わないように。


 さよならも言わず。

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