ある日、突然

ユリアナ・シンテシス(JS-09Y∞改)

ある日、突然

ある日突然、世界中が驚愕する事件が起きた。誰も知らない小さな国から、大気圏に向けてミサイルが発射されたのだ。世界中は一斉に騒然となり、「核戦争が始まったのではないか」と恐怖が広がった。


その国は国連にも加盟しておらず、ほとんどの人がその存在を知らなかった。ニュースや報道では大国の動きばかりが注目され、この小国は無視されてきた。そのため、このミサイル発射はまるで幽霊が撃ったかのように不可解だった。


しかし、ミサイルは大気圏に達すると突然大爆発を起こし、その衝撃は世界中の軍事衛星に捉えられた。原因も意図も不明なまま、各国は混乱し、SNS上では「パンデミックの次は核戦争だ!」という悲観的な声が溢れた。


ところが、それから数日後、驚くべき事態が起こる。突如として、世界中を苦しめていたパンデミックが終息に向かい始めたのだ。感染者数が劇的に減少し、治癒する患者が相次いだ。科学者たちはこの現象を説明できず、テレビや新聞は連日この謎について報道を繰り返した。


「いったい何が起きたのか?」


一方で、あの小さな国では、国民が息をひそめるように生活を続けていた。そして数日後、誰も知らないその国の大統領が、国民に向けて演説を行った。彼の声は疲れながらも力強く、そしてどこか誇りに満ちていた。


“皆さん、長い間のご苦労に感謝します。我々は小さな国で、貧しく、他国から見向きもされない存在でした。それでも我々は、自らの手で世界を救ったのです。”


彼の言葉に国民は静まり返った。彼は続けた。


“このミサイルには特殊な技術が組み込まれていました。これまで誰も試みたことのない方法で、パンデミックを引き起こしたウイルスを無力化するものです。我々の科学者たちは、昼夜を問わず研究を重ね、ついにこの成果を生み出しました。ですが、これは自慢すべきことではありません。我々は正義を全うしたに過ぎないのです。”


国民の間から、感嘆の声と涙が溢れ出た。その声は次第に大きくなり、やがて大統領に向けた大きな拍手の波となった。中には涙を流しながら感謝を叫ぶ人々もいた。


“しかし、これからも気を緩めてはなりません。” 大統領は語気を強めた。


“我々は他国から注目されることなく、静かに生きてきた。そしてこれからもそうあるべきです。この偉業は世界のためのものであり、我々のためのものではない。このことは、私たちの心の中にだけ秘めておきましょう。”


その場にいた国民の中には、幼い子どもを抱えた母親の姿があった。彼女は目を潤ませながら、大統領の言葉に耳を傾けていた。


“私たちの子どもたちは、未来を生きる希望を取り戻しました。どうか、この平和を守りましょう。”


演説が終わると、国民たちは一人ひとり、静かに立ち上がり、大統領に向けて深々と頭を下げた。そして、それぞれの心に秘められた誇りを胸に、新たな一歩を踏み出すのだった。


その小国の名前は、誰もが知らないままだった。しかし、その影響は永遠に人類の歴史に刻まれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ある日、突然 ユリアナ・シンテシス(JS-09Y∞改) @lunashade

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ