透明感のある心理描写が、少女の迷いに深く寄り添っています。
リアルな素描のようで、まるで画廊にいるような静けさを伴う文章に、
まず感嘆しました。
世の中には確かに「何者」かになれる人がいるのに、
何者にもなれないちっぽけな自分は、どこまでも平坦で、地続きでしかなくて。
主人公・リンもまた、そのはざまで、言いようのない気持ちを抱えています。
(この、『言いようのない気持ち』の表現が、言葉にしてもなお、胸の奥から直接掬い上げたような明瞭さを保っています)
吹き抜けた風のような結末は、意外なところから。
世界の美しさを、ほんの少し。また信じてみたくなる、
不思議で、ちょっとトリッキー。
綿密な技巧を凝らした、素敵な作品でした。