第57話おとぼけムー

 とある森の奥に、いつもおっとりしているムーという妖精がいた。

 妖精と言っても外見はほとんどカバ。

 ムーは普段、ふかふかの草の上でのんびり眠っている。


 「むーん、ぷるぷるぷるぷる、むーん、ぷるぷるぷるぷる」、ムーは不思議なイビキをかいて眠っていた。

 と、そこにちょっと意地悪な性悪猫が現れた。

 この猫、眠っているムーのお腹に猫パンチをした。

「ムー、起きるにゃー。お前が眠っている間に、大変なことが起きたにゃ」。

猫はそう言うと、また猫パンチをムーに繰り出した。

「ん〜、なんだい、猫さん?もうお腹いっぱいで食べられないよ」。

ムーはそう言うと、眠そうな目をぱちくり開けて、起き出した。

 猫は、意地悪い目をしつつ、ムーに言った。

 「ムーよ、お前の親友、マーが悪い奴らにいじめられているぞ。助けに行ったほうがいいにゃ」

ムーはそれを聞くと、「それは大変だ、マーのところに行ってくるよ」、

と言って、ムーはマーの元へすたこらさっさと走っていった。

 性悪猫はニヤッと笑い言った。

 「ふふ、ムーは本当にすぐに騙されるアホだにゃ。おかげで、こうしてムーが大切にしているムーのはちみつを美味しくいただけるというものだにゃ」、

 ムーが走り去った後、猫はムーのいつもいるこの場所にある、ムーのはちみつの入ったツボに手を入れると、そのはちみつを美味しそうになめた。


 ムーは必死にマーのもとに走っていって、のんびり昼寝をしているマーに言った。

「マー、悪い奴らはどこにいるんだ?マー、怪我はないかい?」。

マーはそれを聞いて起き出すと、むにゃむにゃとしつつ、ムーに言った。

「ええ?悪いヤツ?それ誰だい?あ〜、分かった。ムー、また性悪猫に騙されたんだね?ムーよ、今頃、君の大事なはちみつが猫に舐められてると思うよ」。

 ムーはそれを聞くと、びっくりして言った。

「え〜、猫さんの言うことは嘘だったのかい?ああ、大変だ、猫さんがはちみつを全部食べる前に戻らないと」。

 ムーはもと来た道を必死に走って戻った。

 

 もと来た道をムーが戻ってムーのすみかに着くと、ちょうど猫がはちみつを全部舐めてしまった後だった。

 ムーは猫に言った。

「猫さん、ひどいよう、なんでボクのはちみつ全部舐めちゃったんだい?もう許せないよう」。

ムーは怒って、究極攻撃魔法を唱え始めた。

猫は、ちょっとびびって、ムーに言う。

「ムーよ、冷静になれにゃ。騙したのは悪かったが、お前、普段から甘いものばかり食べるし、運動不足だし、私がそれを改めさせようとわざとお前に嘘をついたのだにゃ。それもこれもお前の健康を思ったからこその嘘にゃ」。

ムーはそれを聞くと、

「ああ、猫さんはそんなにボクのことを思っていてくれたんだね」、

と言って、猫に抱きついた。

 

猫、苦笑いしつつ、

「こいつ、本当にのんきで幸せなヤツだにゃ」と思い、ムーと抱擁したのだった。


こうして、ムーは甘い物食べるの少し止めたし、マーのもとに走っていって運動したりして、少しは寿命が伸びたのかもしれない。

 それもこれも、全ては性悪猫のおかげであった。


「むーん、ぷるぷるぷるぷる、むーん、ぷるぷるぷるぷる」、

ムーはこうしてまたお気楽なイビキをかきつつ、幸せな昼寝をするのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る