第1077話 面影

「辺境伯家の興廃この一戦にあり!立て、兵士たちよ!奮え、精鋭たちよ!勝て、勇猛なる騎士たちよ!!」

「「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」


 領城の中庭に終結しているのは、フェロー辺境伯家が誇る【緑揃えウィリデス・アルムム】の精鋭。

 彼らは、先代辺境伯が無くなってから、その嫡男のルイスとともに3年もの間、領都レイアリアのスラム街に潜伏していた忠義の者たちだ。

 

 ルイスが辺境伯の後継として認められ、人々の前に現れてから、騎士団長へと復帰したベルナールが精悍な面構えの部下たちを鼓舞すると、続けて鬨の声が上がった。


 ずっと幼い少年を護り続けてきた彼らにとって、この一戦は何があっても勝たなければならない。

 負ければ領民は尽く殲滅され、辺境伯家の正統なる血筋は絶えることとなろう。

 だから、絶対に負けられない。

 たとえ、自らの生命が失われようとも。


 そんな熱狂の中、彼らの主たるルイスが発言をする。


「ベルナールの言うとおり、この戦いは領民を守るためのものだ!頼む、勝ってくれ!…………だけど」


 そこまで言っていったん言葉を切った少年は、次にすがるような眼差しで騎士たちを見つめる。


みんな騎士たちも私の領民だ。安易に生命を無駄にせず、生きて……生きて帰って来てくれ」


 今や家族同然の騎士たちに、自らの本音を吐露するルイス。

 すると、騎士たちの間から笑いが起きる。

 何事かと驚くルイスの肩をポンと叩いたベルナールは、さもおかしそうに説明する。


「皆、そっくりだと思ったのですよ」

「そっくり?」

「亡くなられたあなたの父上……先代辺境伯様も、我々を送り出すときに必ず言ったのです『生きて帰って来い』と……。そのお姿があまりにも似ていたので、我々は当時を思い出したのです」


 そこまで伝えると、騎士たちから明るい声が飛ぶ。


「そのヘニョンとした眉がそっくりですな!」

「先代は、いつもいつも、心配そうに我らを送り出していたものです」

「そうそう、士気が落ちるから止めて下さいって言ってるのにな」

「アハハハ!そんなところは、父君に似なくても良かったのに」

「バッカ、そこがいいんだろうが」

「だな。誰よりも民を思う領主様だからな」

「ホント、良い領主になるぞ、ウチの若様はよ」

「違ぇねぇや!!」

「「「「「アッハッハッハ!!」」」」」


 これまでの付き合いから、ルイスと騎士たちはそんな軽口を叩けるほどの信頼を築いていた。

 真正面から自分が笑われたことで、顔を真っ赤にしたルイスであったが、彼は照れ隠しに叫ぶ。


「お前らっ!主君を笑うなんて不敬!不敬!不敬だぁ!いいか、帰ってきたら絶対に、絶〜対に説教をしてやるから覚えてろよ!」


 そんなルイスの様子に口元を引き上げたベルナールは、騎士たちに声をかける。


「んじゃ、ルイス様には怒られるためにも生きて帰って来るぞ!」

「「「「「「うい〜ッス!!」」」」」」


 こうして、騎士たちも笑って戦地へ赴くのであった。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★


作者「なんか、死亡フラグっぽくなってしまった……第二弾」

(A;´・ω・)アセアセ


執筆のモチベーションにつながりますので、★あるいはレビューで評価していただけると幸いです。

 

 

 長

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る