第5話

惨劇であった。大量の不良のアームヘッドは原型なく破壊されていた。コクピットから漏れる血から想像できる惨状を礼三郎は考えることをやめた。敵はそういうタイプだ。4本の腕を持つ異形のアームヘッドがその4本の刃のそれぞれで不良のアームヘッドを突き刺していた。

「鬼ごっこも飽きてきたところDeathデス!礼三郎ちゃん!私と遊ぶのDeath!」

敵は礼三郎の名を呼んだ。

「なんだ!おまえは!何者だぜ!」

礼三郎は怒りを隠さない。

「おっと!失礼したのDeath!私はタイムスリップ教団の聖騎士ウォッチャーの一人!タイムスリップ・デスヒコDeath!私の愛のために御命頂戴するのDeath!」

「ふざけるな!そんなことのためにそいつらを殺したのか!?」

「はぁん?このこたちと遊んだのはただの暇つぶしDeath!いくらアリを殺してもサダヒコ様は私を愛してはくれないDeath!あなたのような特別な獲物を殺さなきゃ私を愛してくれないのDeath!」

礼三郎は二の句は継げず、タイムスリップ拳を異形のアームヘッドに放った。タイムスリップ拳は彼が求道の果てに得たギフトの一つである。彼の拳は光の速さを超え、時間を超えた。タイムスリップの拳は三次元に囚われしものには必中!究極の必殺奥義である!だが時間聖騎士タイムスリップ・ウォッチャーデスヒコは同じく時を超えた存在である!青白くタイムスリップ発光する異形のアームヘッド!

「タイムスリップを独学で習得するとは流石Death!でもこのフラガラッハの敵ではないのDeath!」

フラガラッハは未来に放たれた時間差攻撃であるタイムスリップ拳を悠々と交わすと四つの死体アームヘッドを放り捨て、タイムスリップ刃を飛ばす!時間の流れを飛ぶその刃を礼三郎は見極め四発の拳を放つ!超時間のエネルギー同士が相殺し消失!

「御優しいのDeath!流石、王のカリスマを持つものは違うのDeath!」

もし仮にタイムスリップ刃をかわしていたのなら周りへの被害は甚大!

「でも、それは王の実力があるからこそ許されることなのDeath!」

タイムスリップ刃をフラガラッハが無数に放つ!レイザーブロウだけではなく、まだ生きているアームヘッドや校舎も狙っている!

「さあさあ!私を惚れさせてみるのDeath!」

タイムスリップ拳!タイムスリップ刃!タイムスリップ拳!タイムスリップ刃!タイムスリップの応酬が続く。息が切れそうな礼三郎に対しデスヒコは余裕の表情だ!

「しょせんタイムスリップしたとして人間と吸血鬼では地力が違うのDeath!」

タイムスリップの刃がレイザーブロウの両腕を切断!もはやヘッド!

「これで終わりDeath!呆気なかったDeath!こんなんで愛してもらえるか、ちょっと心配Death!」

フラガラッハがレイザーブロウにとどめを刺すべくにじり寄った。

「まつのです!」

エリザがレイザーブロウとフラガラッハの間に立った。

「もう勝負はついたのでしてよ?これ以上何をするのです?」

エリザは殺し合いの世界を理解していないのだ。フラガラッハはエリザを踏みつぶし礼三郎を刺殺すだろう。だが意外にもデスヒコは歩みをとめた。

「あなた?その男が好きDeathか?」

デスヒコはエリザに尋ねた。

「あなた?なにをおっしゃって?」

急で意外な質問にエリザが赤面する。

「……ふふ、度し難いな。運命というものは」

デスヒコの声色が変わった。フラガラッハが刃を収めた。

「女、貴様が報われることは決してないぞ。お前がいくら尽くしても無駄なのだ。……その男はたんに全てを救いたいだけだ。お前だけが特別じゃない」

「あなた、……?」

デスヒコの言葉が何かひっかかる。

「だが、お前を助けにはくるだろう」

フラガラッハがエリザを掴んだ。

「礼三郎ちゃん!このこを返して欲しくば、そのポンコツを治して町外れのプレーンビスケットの廃工場に来るのDeath!」

その言葉を最後に礼三郎の緊張の糸は途切れ、意識を失った。

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