異能医師、瑠璃のガラスの魔法。
始まった瑠璃の再検診に、何とも言えない緊張感。
独特の笑みを浮かべて、アニーを見下ろす。その表情は、誰かさんに似た――悪戯心が、混ざっていた。
「しんこきゅう、深呼吸」
ベッドに横たわり、静かな医務室の空気に包まれる。
タブレット端末を手に取り、スワイプしながらデータを確認していたが、その手は止まらない。
異能力――
空気中に透明なガラスの粒子が漂い始め、まるで静電気のようにアニーの体にゆっくりと吸い寄せられていく。
アニーは少し身をよじりながら、
「ちゃんと、診てるんです、よ、ね?」
と、疑念の声。
瑠璃は、
「もち、の、ろん」
と、返しながらタブレットに次々と表示されるデータを確認し、ときおり小さく頷く。
「先生。いつか侵襲的医療行為で、逮捕。って報道されそう」
と軽口で応じる。
が、毎回、驚かされる。
異能力を繊細に扱う技術に。
異能力、ガラス・リフレクションにある。
硝子を自由自在に操る力。
と、
科学者としての知識と探究心。から、彼女は科学的な技術と異能の融合利用に、最も長けた存在。
瑠璃の異能力は、ガラスを微細なナノサイズまで制御できることから、医療分野でも能力を発揮した。
ガラスの微粒子を使用して、人体の内部に入り込むことで。粒子は光ファイバーのように電気信号や光を伝導する特性に変化させることで、組織の状態や神経信号などをスキャンする。
これにより、彼女は患者の状態を精密に把握する。特に臓器の異常を見つけることに関しては、現代医学でも早期発見が非常に困難な、
膵臓の形を検査するのは難しく、腹部超音波検査でも膵臓の全体を観察するのは困難であり。また、早期診断に有用な血液検査もないからである。
治療には、微小なガラス片を癌細胞まで誘導し接触させ、切除するという神業を
硝子操縦能力は、単なる医療にとどまらず、情報収集の分野でも非常に有効だった。
光ファイバー技術を応用し、ガラスの粒子を通し情報収集や伝達を行う。それを自作のデバイスで、周囲の電磁波や電気信号をキャッチしながら、あらゆるデジタル情報にアクセスできる、高度なシステムを構築させた。
それにより、デジタルデバイスに対するハッキングや、盗聴などを可能にしていた。
異能者として最凶と呼ばれる所以は、異能力で創り出した硝子を化学兵器として、応用したことにある。
戦闘では、周囲の空気中に含まれるシリカなどの成分を瞬時に集め、それをナノサイズで加工してガラスの刃を形成し。これを圧縮し、遠距離から高速で相手に打ち込む。
見えない散弾――
が、
戦時下では――
硝子をナノサイズに操作する能力は、ナノ粒子技術や化学兵器のプロセスそのものである。
特定のエリアに大量のナノサイズのガラス片を放出し、それが吸入させることで内臓を破壊するというメカニズムは化学兵器と同じである。
ナノサイズの物質は、皮膚や粘膜を通過し体内に浸透し、粒子が、血管に到達すると。
ガラスが血管壁に、ダメージを与えだけではなく。微小な粒子が血管内に残留で、血液の流れを防ぎ。血栓の形成や動脈硬化を引き起こさせる。
ナノサイズのガラス粒子が呼吸器系に侵入した場合、微粒子が肺に留まり、慢性的な炎症を引き起こし、最終的には肺組織を硬化させ、呼吸困難に。
異能者の
異能力と科学技術を融合させた高度な兵器開発を可能にするため、単なる戦闘力ではなく、兵器の製造や応用においても非常に危険な存在であった。
「ちぃ! 主水、腕上げたな。傷、綺麗に治してやがる。私のアニーに、なんていうことをしてくれたんだ。これでは、私の出番がないではないか!? クソ。これでは、アニーの成長した肉体を隅々と、検査すると説明して。あれみたり、これやったり、それしたり。できんではないか」
「せんせい」
「な、な、なんですか? アニー」
瑠璃の動揺がタブレットに伝わったかのように、軽く振動し、ディスプレイに新しい通知が浮かび上がった。
タブレットの画面に、メールのアイコンが、点滅した。
「ところで、アニー」
瑠璃はふと真面目な顔に戻り、笑いを抑えた声で言った。
「君に。二つ名が、ついたよ」
「……二つ名?」
アニーは驚いた表情を浮かべた。
「先生に教わって、それなりに強いけど。二つ名をつけられるほど、強くないし。活躍なんてしてないし、特別な」
肩を震わせ。
「いや、いや。二つ名って、勲章みたく国家や団体から授与される公式じゃない、し。非公式だから、ね。周囲の人々から、どう感じたかで自然と表現されて呼ばれるから、二つ名って」
「どういう、いみ……」
瑠璃は笑いをこらえきれず。
「アニー、君。主水の後頭部に頭突きして、倒したろ?」
「ぅ、うん。ぉ、おしり、も、もま、じゃなくて。触られた勢いで」
困惑しながら、くぐもる。
にやりと笑みを浮かべ。
「知っているかい、アニー。うさぎの殺し方を」
「うさぎ、ですか? そうです、ね。まず、通り道を見つけます。次にスネアっていう罠を使うんだけど、ワイヤーで輪っかを作ってね、うさぎの首をガッチリと捕まえます! で、一度、捕まるともう――」
「……、……」
瑠璃は黙っていたが、表情が徐々に固まっていく。
「それだけじゃないんですよ、夜の狩り方もあるんですよ。サーチライトでうさぎの目を照らして、目が光るところを見つけたら、殺!」
微妙に距離を取って椅子を後ろに、ずらし。
「ぁ、あの、アニー? ぇ、えらく詳しいわ、ね」
「生き抜くには、狩猟は基本!」
満面の笑みで話を。
ますます困惑し、視線を宙に泳がせた。
「確かに、生き抜く術は……だ、だいじ、だな」
無邪気に笑いながら。
「じゃあ今度、一緒にうさぎ狩りに行きましょう! 罠や弓もいいんですけど。やっぱり、一番は追い込み猟からの――ショットガンハンティングかリムファイアライフルですね」
「か、考えておく、わ。はぁー」
瑠璃は、アニーは外見や地位こそ、お嬢さまである。が、内面は自然に身を委ねた野生児のような行動を見せる娘だった、ことを思い返した。
家庭教師を始めたときから、主水の冷静かつ理論的なアプローチとは対照的に、アニーは感覚的で、自由奔放なところがあった。
主水の予想外の行動にも、驚かされた、が。アニーの予想外の行動にも、驚かされた。
教える側としては、どちらも面白く、それでいて愛おし教え子たち。
記事のタイトル。
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