ミリタリー女は政治的忖度で巨大宇宙戦艦の艦長になる
@massan_novel
第一章 最新艦長の任命はピザ屋で
「あ、ユリカ君。君、今度の宇宙戦艦の艦長しない?」
タチバナ司令は駅前のピザキャットでメガマックスチーズピザを頼みながら、ふんわりと目の前に座っているユリカに言った。
「はっ?」
「いや、艦長しないかって言ってんの」
「……???……。すみません、上官に対して失礼かと思いますが……」
「ん?なんだね」
「いや、何言ってるのか全然わかんないですけど」
二人の間に流れる沈黙。店内スピーカーからは、やたら陽気なピザキャットソング。お昼時にもかかわらず店内に客は2組しかいない。
「いや、何言ってるかわかんないって、さっきから言ってるでしょうが。今度できる最新宇宙戦艦の艦長しないかって言ってるの」
再び流れる沈黙。隣のテーブルでは学生カップルがメロンソーダで乾杯していた。ピザ屋で何を祝っているのか。
「う〜ん、タチバナ司令。すみません、私バカなのかわかりませんけど、確認させてもらっていいですか? いや〜、勘違いしてたら恥ずかしいし、かといって上官の言うことにいつまでも“分かんない”は失礼なので。思い切って聞いてみますが」
「いやいや、早く聞きなさいよ。君、質問するのに前置き長すぎ」
「すみませんタチバナ司令。じゃあ聞いちゃいますよ!」
「どうぞ」
タチバナ司令が手を出して先を促す。
「私が宇宙戦艦の艦長って、もしかして──あの、連邦最大の
「そう。それそれ」
それ以外に何があるのと言わんばかりにタチバナ司令はユリカを馬鹿にした顔をする。しかしユリカはその顔に突っ込む余裕もなく、
「えっっっ!!!」
っと甲高い声を上げる。ユリカの声はピザキャットの天井スピーカーを震わせた。
バイトの子が手を止め、ピザ生地を落とす。
「し、失礼しました〜!」
可哀想なバイトの娘。君に罪はない
再びユリカ。
「な、なんで私なんですか!? 私、士官学校出たばっかですよ!? まだ艦の“進水式”も見たことないのに!?」
「うーん、まあ、あれだ。政治的都合?」
「都合って軽く言いましたね今!?!?!?」
「上が“若い女性艦長”が欲しいんだよ。世論的にウケがいい。男社会と未だに批判される軍社会。事情を察してよ。あと、君、父親が元提督だろ? まあ色々あんのよ、派閥的パワーバランス?」
「いやいやいや、そんな理由で人の人生を左右しないでください!!!」
思わず立ち上がるユリカ。
店内ではピザキャットの猫型マスコットが「にゃにゃ〜ん!」と恒例のBGMを流す。
「ま、でも大丈夫だよ。艦にはAIがついてる。それに艦にはベテランが多い。ほとんど勝手に動く。君は座ってるだけでいい」
「それ艦長の存在意義あります!?」
「あるある。“シンボル”ってやつだよ」
「え、それ政治ポスターじゃないですか!!」
「まあ、そんな感じ?」
「そんな感じじゃないですよね!? 戦艦ですよ!? 宇宙戦争の最前線ですよ!?」
タチバナ司令はその言葉には応えず、ピザを指さし、
「ピザ冷めるぞ、早く食いなよ」
といった。
「今それどころじゃないです!!!私の人生最大のイベントですよ、これは!」
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