第45話 光輝

 どうすればいいんだ?

 俺は速さでは魔界一と謳われたセーレの力を借りて、超高速の動きでアンドロマリウスの攻撃を躱しながらも銭投げスピンターンで攻勢に出ようとする魔人を牽制する。

 だが、相手は使い魔に身を落としても魔人だ無尽蔵の魔力で攻撃を続け、俺の攻撃は不思議な力で見通して躱される。

 一方の俺は、セーレからの借り物の速度、銭投げと湯水の如く金を使い続けている。金の切れ目が縁の切れ目と言うが正にそれが俺の状態だ、金が尽きたら俺の力はただの人間範疇でしかない。


「ちょこまかと逃げ回って、遠くから攻撃するとかお前はそれでも男か?男なら、正々堂々と勝負しろ!」

「そんなこと言われてもなぁ。近づいたら猛毒で溶かされそうだし、普通の人間が魔人様と闘うんだ少々の小狡い戦略は笑って見逃せよ。魔人様!」


 そうだよな、俺は人間、ホモサピエンス、狡い人間なんだ。

 だから、いいよな騙しても?

 だから、いいよな偽っても?

 過程が大事なんてのは、やり直せるような甘い状態だけの言葉、やり直せないのなら、取り零せないのなら、結果こそ重要視すべき、見るのは結果のみ! 

 だから、最終的に立っている奴が正義だよな?

 発想を変えるんだ、別に笑われようが蔑まれようが、そんなのどうでもいい。

 真実は決して一つなんかじゃないんだよ、コナン君!(って、誰だっけ?)


 なら、ならばどうする?わずかな能力で、少ない戦力で、強大な敵を倒すには?

 そんなの、もう、鬼道しかないじゃない。

 そうだ、鬼道、現代風に言えば詐欺スキャムだ!


 そうだ、たとえ魔人が俺の攻撃を感知できたとしても。避け切れないくらい速い攻撃ができればいいんだ。

 しかし、そんな攻撃があるだろうか?拳銃弾くらいは、余裕で避けそうな勢いだしな?

 そうか、高速、いや音速でもだめだ。ならば光速の攻撃なら。アンドロマリウスの防御を超えられるはずだ。

 そうだ、この状況ならワフードさんが試作したレーザー発振器が役に立つはず。


「セーレ、時間を稼いでくれ。実体化して、アンドロマリウスの注意を惹くんだ。俺はその間に武器を拵える。間に合うか?」

『また、いつもの人使いの荒い上司に扱き使われるパターンかよ。へいへい、いつもそうなんだよな、俺なんかいつだってそうだぜ、一回も良い目見たことが無いからよ。

 ところで、ご主人様よ。なんならアンドロマリウスを倒してもいいのだろう?』


 自信満々の表情で俺の左腕のブレスレットから煙とともに現れた美青年の双子、まあセーレなんだけどね、はアンドロマリウスに向かって積年の恨みつらみを子供の様にまくし立てる。

 案外作戦を理解しているのか、戸惑うアンドロマリウスが動きを止めて憐れむようにセーレの罵詈雑言を真摯に聞いている。

 なんて、いいやつなんだ。魔人で無かったら惚れて舞うかも知れないなどとよそ見をしている間に通販サイトから物が届いた。

 あとは、このレーザー発振器を改造して光線銃レイガンに仕立てなければならない。どう、見積もってもセーレが稼げるのは三分が精々だろう。


「ほう、人間風情がセーレを双子の状態で召喚するとは侮れぬな」


 下僕一号が明後日の評価をしてくれているのが、いいアシストだ。アンドロマリウスは格下のセーレ双子を相手に慎重に力量の把握から始めた。いい時間稼ぎになったな、これは。


 だが、幸運もここまでだった。

 アンドロマリウスは、無造作に大蛇を八匹複製すると四匹ずつを投げつけ、セーレの前後左右から襲い掛からせた。セーレも自慢の高速機動で交わしまくるが、いつの間にか地を這い迫り寄っていた大蛇の毒液攻撃を浴びてドロドロに溶けだした。


 まあ、セーレ双子にしてはよくやったほうだろう?


「戻れ、セーレ!」

『無念です、ご主人様。やっぱ噛ませ犬の魔人生ですよ俺なんて、ご主人様』


 セーレは煙と化すと、俺の左腕に装着した腕輪の真鍮の壺に吸い込まれて消えた。

 俺は、ごつい甲冑をアンドロマリウスに向かって放り投げた。魔人は、瞬きもせずに身体をわずかに逸らすと甲冑は右横を通り過ぎていく。

 俺の光線銃レイガンが眩い光を放つ、一瞬にして燃え、いや溶けてしまった甲冑!


「しまったな、的を外しちまったか」

「く、な、なんという威力なの?」

「まあ、次は外さないぜ。いくら攻撃する場所が分かった所で、音よりも速く届く光の速さの攻撃で何物も溶かし尽くす光線銃の威力に、いかな魔人様でも太刀打ちできまい!まあ高い金払ってるんだから当然なんだが」


 じゃあ、いくぜ。詐欺スキャムと俺は小声で囁いた。

 瞬く間に幾条もの光の線が、魔人へと凶暴に迫る。流石に避け易い手足への攻撃は躱したものの、急所の胸、頭、喉、臍のあたりの丹田への攻撃のどれかは躱しきれなかった。 魔人の姿は胴体の中央から見る間に溶けだして、やがて煙と化す。


「あ、ああ。ご主人様、も、申し訳ございません。不甲斐ないアンをお許しください」

「あ、アン!行くな、気を確かに持て。こ、こんなことで・・・・・・おまえー!」


 怒りに、審判の職務も忘れて迫る下僕一号、俺は咄嗟とっさ光線銃レイガンを発射していた。

 下僕一号は、五月蠅げに左手で光の一撃を払うと、右腕を振りかぶった。

 下僕一号の右ストレートが、俺の腹に食い込む前に俺はありったけの力で後ろに吹っ飛んで、せめて少しでもダメージを殺したはず。

 だ、だってまだ俺は生きている。

 だから、俺の勝ちだ!


「馬鹿ね・・・・・・」


 遠くで、ネコさんの罵倒が聞こえた気がした。

 

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