第37話 リターンマッチ
「さすがに、ドジで間抜けなセーレでも人間ごときに後れを取ることは無かったようね。お仕置きできなくて、残念だったけど。まあ、セーレにしてはよくやったわ。何百年振りかしらね」
くっそ、思い出しただけでも腹が立つ程の感じの悪い罵倒?!
な、なぜ、なぜ俺は目的のための手段獲得の途中で倒れたのだ。あんな道半ばで!
「それは、お前が坊や過ぎるからだよ。竜、久しぶりだね。このやり取りをするのも」
「うん?またか、この灰色の空間は、女神アン?お前か!」
「アンって、どこのキャバクラの女よ?私は、エンドロ・ペニー!前にも名乗ったはずだよ、富と繁栄の女神さ」
灰色の部屋に浮かぶ俺と、透明な透ける赤のドレスを纏った金髪の女神の二人っきり。ここで、若さに任せて情熱的なラブロマンスに舵を切ると、いろいろ問題が発生するので大人しく用件を聞くとするか?
「こんな所に呼び出して何のつもりだ?年下、それも未成年の男に迫る婚期を逃した女か、職権乱用も甚だしくないか?」
「よくもまあ、死に掛けの分際で。ようも女神に逆らうとは、呆れた奴よのう。まあ、それ位図太くなければ生き抜けぬか。今回も放っておいたら間違いなく死んでいたがな」
「それは、それとして。あの試闘は、たしかに情けない出来だったが」
俺はあのセーレとの試闘を振り返ってみたが、一つも良いところが見当たらなかった。
「そうだね、お前はダメダメだったね。手段と目的を履き違えた、所詮あんたにとって金儲けは目的じゃない、手段なはずだよ。それを、ケチるから。
たかが、速いだけが自慢の魔人なんかに負けちまうんだよ。
商人にとっては、先行投資は当たり前のこと。たとえ、今損しても後で大きく儲けられるなら目先の損に怯えないのが商人てもんだよ。
金ってもんは、湯水のごとく使って魅せるもんだよ、覚えておきな!」
「目先の損を恐れず、湯水のごとく使う?」
何かが俺の中で、はまったような、そんな音を聞いた気がした・・・・・・
「さあ、あとはその頭で考えるんだな。じゃあ、太っちょの魔人が待ってるよ、行きな。もう手出しはしないよ、女神の顔も三度までってな。ふふ」
セーレに奪われた金色の劔が俺の頭を断ち割ろうと迫ってくる場面に、戻って来た。
く、来るのが分っていれば防げるはず、防げるかも知れない、防いで見せる!
「いくぞ、
俺は手持ちの口座残高お構いなしで、絶対防御を誇る黄金の鎧を召喚した。俺の口座から恐ろしい勢いで残高が減っていく。
金の鎧の頭部を守る兜に、セーレの振るう金の劔が触れた瞬間、砕け散る金の劔と見た目には判らないが俺は確信する、セーレの右手の骨にひびが入ったことを。
「いっ、痛い」
「喰らえ、無制限霊子、
金の鎧の拳部分が山吹色の輝きを増し、先ほどから口座の残高が減り続けていたが、その速度が跳ねあがった。
俺の光輝く右ストレートが、セーレの太鼓腹をえぐり、突き破った。
セーレは信じられない顔で血反吐を吐くと、咳き込みながら敗北と俺への忠誠を誓った。
「ごほっ、ま、参りました。このセーレ、一時的にお、お仕えいたします。げぼっ」
「お、おい。大丈夫かしっかりしろ。こいつにこのまま死なれたんじゃ、俺が大枚叩いて、大赤字を被っただけの馬鹿野郎状態じゃないか」
「どう見ても竜の勝ね。心配しなくても真鍮の壺の中で一休みさせれば、折れた腕も突き破られたお腹や背中も全部元通りになるからこき使っても大丈夫よ。
ああ、つまらない。セーレが帰ってきたら、お仕置きしてやるんだから。人間風情によもや負けるとは、あきれ果てた奴ね」
おいおい、勘弁してやれよ。しかし、勝てて良かったが相手が格闘素人のスピード特化タイプで自滅してくれたから良かったが。
ふう、それにしても口座残高を確認するのが正直怖いんだが。
「アカウントオープン、げっ!!」
思わずのけ反ってしまった。
使い魔一匹の力を借りるのに日本円にして、十億円ほど使わされてしまったとは!
泣きたい、気分だな。
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