第19話 帝国の決死隊

【アイスジャベリン】は強力な魔法だった!

 だから俺達は、遭遇するオーガ共をほふりながら、順調にルドルフタワーの近くまで来た。


『そろそろ暗く成ります。夜になる前に宿営場所を確保しましょう』


「そうだね、サッちゃん。おすすめとかあるの?」


『構造解析した結果だと、そこのビルが良いと思います。入り口を魔法で塞いで要所要所にバリケードを張りましょう』


「うん、そうしよう」




 ビルの5階に寝場所を決めて、フードディスペンサーで美味しい物を食べ栄養を付けて、リコンストラクターで作った寝袋に入った。念の為に全員同じ部屋で寝る。


「ねぇねぇ、ソウちゃん。オーガハイロードって、どの位強いのかなぁ?」


「うん。

 俺とユウトがしていたゲームだと、オーガロードはオーガの中で1番強いんだ。冒険者パーティーが数チームで討伐するレベルだったはずなんだ。オーガハイロードは更にその上に君臨してるのだから、もっと強いんだろうね」



「【アイスジャベリン】で倒せるかなぁ?」


「う~ん、どうだろう? 戦ってみないと分からないなぁ」



「ソウタ、もっと強力な魔法を思い出した方がいいんじゃないの?」


「うん、そうしようかユウト」



『どうぞサリーナにお聞きください』


「そうか、サッちゃんが復活したんだから聞いても良かったんだね」


『はい』



「それじゃ、【アイスジャベリン】でオーガロードを倒せるかなぁ?」


『戦闘状況にもよりますが、倒せると思います。皆さんのステータス値は帝国民の最大値の10倍有りますので、魔法の威力も数倍は上がってると思います。【アイスジャベリン】でオーガハイロードの体にも、風穴を開ける事ができるでしょう。ただし戦闘は何が起きるか分かりませんので、十分注意して戦いましょう。更に上級魔法を練習しといても良いと思われます』



「練習する上級魔法は何が良いかな?」


『直接攻撃魔法は【エクスプロージョン(爆発)】【アイスブリザード(氷嵐)】【ランドスライド(土砂崩れ)】等がお勧めです。補助魔法としては【ブラインド(盲目)】【ペトリフィケーション(石化)】【マインドブラスト(混乱)】等をお勧め致します』



「ありがとう、サッちゃん。……それじゃあ、リンちゃん。明日、ルドルフタワーに行く前に練習しようね」


「うん、おやすみ」


「おやすみ~」


「「「おやすみなさ~い」」」




 ☆ ▲ ☆ ▼ ☆




 生き残っている帝国民達も、座して死を待つばかりでは無かった。

 追い詰められれば生存戦略を必死で考えるのだ。

 真面まともに戦って勝てないならば、どんな手を使ってでも勝利しなければならない。


 そして今がそのチャンスだった。魔力を豊富に持つ冒険者パーティーが現われたのだ。

 彼らに続いて行き、虫のいい話だが利用させて貰い、魔物達を排除しなければ彼らに未来は無い。

 ダンジョン核に爆薬を仕掛けて破壊して、魔物湧きを止める事が出来れば、未来の見えない現状を打開できるであろう。

 窮地に追い詰められてはいるが、逆にオーガも倒してきたのだ。ただし倒した後から、又湧いてくるからスグに劣勢に戻ってしまうのだった。



 ソウタ達に2頭のオーガを譲って貰った男は、連絡を取り合っている他のグループに呼び掛けた。


「他の惑星から来た5人の冒険者達が、ルドルフタワーのダンジョン核を破壊しに行くそうだ。上級魔法の【アイスジャベリン】で3倍の数のオーガの群れを一瞬で倒しちまったんだぞ!」


「ほう、それは凄いが、ルドルフタワーはオーガの巣窟だ。強力な科学兵器でも無ければ歯が立たぬだろう?」


「しかし、長く逼迫ひっぱくした現状を打開するには、願っても無いチャンスだと思わぬか? 奴らに続きルドルフタワーに侵入して、ダンジョン核を破壊するのだ。命がけで捨て身の突撃をすれば、ダンジョン核に辿り着けるかもしれぬ。最後の1人でもいいから、取り付いて爆弾を爆発させる事ができれば、1年も苦しめられた魔物湧きを終わらす事ができるのだ。生き残ってる仲間や家族の為に決死隊を集めて特攻したい、どうか協力してくれ?」


「……分かった」



 翌朝ルドルフタワーの近くには、生き残った帝国民の中から選ばれた決死隊9人が、ソウタ達の来るのを待ち構えていた。

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