第8話

 学費滞納と、いや、むしろ俺自身の怠惰のせいで、中退せざるをえなくなった。

 面倒だが、手続きに出かけていった。

 文学部のキャンパスには、なぜだかやたらと黒い服を着た男女が多かった。

 知った顔を見つけ、これはどうしたことかと聞いてみた。


「ニュースも見てないのかよ。演劇部の子が死んだ。殺された」

「それ、誰だ?」

「名前は俺も、忘れた。痩せたちっちゃい子だよ」

「殺されたって、誰にだよ。犯人、捕まったのか?」

「アングラ劇団の座長ってやつが、果物ナイフで、メッタ刺しにしたんだとさ」


 ミステリーなら、ここからだろうが、現実はそこまでだった。

 俺は退学届を出し終えると、アパートに戻った。


 ポストに、芝居の案内状が入っていた。

 痩せたスズメのような、あの女の子からだ。

 芝居には、もちろん、行かなかった。

 行きたくても、行きようがなかったのだから。



          ──了──

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痩せたスズメのような女の子 呂句郎 @AMAMI_ROKUROU

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