花火大会

花火大会。


には誘えなかったけれど、前夜祭に一緒に行けることになった。



「本当に私と行くのでいいの」


なんてズルい聞き方だ。高矢くんは優しいから嫌でもそうは言わないことを知っている。


「サッカー部の子達と行くかもって言ってたじゃん」


行くか行かないか分からないという話を聞いて、「私は暇だから無くなったら一緒にいようよ」と言っていた。


「サッカー部の人たちが行くって言ったら私といなくていいでしょ?」

「ちょっとその質問難しい」


サッカー部で流行ってるセリフだ。高矢くんもずるい。


結局前夜祭の途中で合流することになった。

「あ、高矢くん!」

「びっくりした、いつも見た目違うから見つけられなかった、ごめん」

「全然いいよ、ダンス見ようよ!」

「美奈って子のダンス好きだね」

「だいすき!」


2人で並んでダンスを見る。周りの人からはどう見えているんだろう。


「どうしたの?」

「私、、、」

「ん?」

「なんでもない、、、」


お互いに友達を見かけて、私は何故か笑いが溢れた。

「別々に帰りますか」

「そうだね」

「一緒に見てくれてありがとう」

「うん、俺もダンス好きになりそう」

「すきになってよ」



そうして私達は少しの間繋いでいた手を離して、別々に帰った。



あの日を境に私達はあまり話さなくなった。夏休みで会うことも無く、リレーの練習も高矢くんが足を痛めて無くなり、10月には私が塾を辞め、一緒に帰ることも無くなった。


「塾やめることにした」

と久しぶりに話しかけた私に

「?うん」

と不思議そうに言った高矢くんはやっぱり私のことを何とも思ってなかったのだと思う。

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青春は甘酸っぱいらしい 紗奈 @yunyaa

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