第36話 実は、私です……
私、森崎由亜はこの夏の締め括りとなるSPフェスが終わった為、ライブ会場となったメタバース内で友達と別れた後、スマートグラスを外し、私は宿泊中の旅館の部屋へと戻って来た。
そして、お風呂に入る為に浴室に向かおうとした時、突然、私のスマホの着信音が鳴った為に確認をしてみると、メールの送り主はまさかのシズクであり、その内容を読んだ私は凄く驚いた。
ちょうど今シズクはこの町に来ている為、私に直接会いたいという内容のメッセージだったからである。
そんなシズクはちょうど今、私が宿泊している旅館の目の前の海水浴場の隣にある埋め立て地の公園内にいるという事なので、私とリーフィはシズクの中の人が待っているという公園まで一緒に行く事にした。
そして、旅館を出て海水浴場前の道を突き進み、私とドローン姿のリーフィはシズクの中の人が待っているという埋め立て地の公園までやって来た。
実際、シズクとはメタバース内で白猫のアバターの姿でしか出会った事が無いけど、シズクの中の人は私だとすぐに気づいてくれるかな?
そんな心配も考えながら、野球グラウンドの様な広場のある公園の奥にあるヤシの木の隣に、見覚えのある人がそこに立っていた。
「あっ、あれ? 菫さん、どうしてこんなところに?」
「あらっ、森崎さん。やっと着いたのね」
そこに立っていたのは、スピアーズのメンバーの氷山さんの姉であるのと同時に、スピアーズのマネージャーを務めている菫さんであった。
「まさか、さっきのメールは菫さん?」
「そうよ」
「という事は、まさか……」
「シズクの中の人は、この私でした!!」
「えぇっ!?」
突然の菫さんの発言に、私は凄く衝撃を受けた。
まっ、まさか、あのシズクの中の人って、まさかの氷山さんの姉の菫さんだったの!?
あまりの衝撃発言であった為、凄く驚いたが、よくよく考えてみると、確かに好都合過ぎる展開が異様に多かった事を思い出した。
スピアーズのメンバー達とシズクのライブで出会った後、私やリーフィを含めて部屋に招待をされたり、虹川さんの草プロ行きの件を阻止する為に一役買ってくれたり、何よりも、この私に連絡先を教えてくれる事自体、普通に考えたら全てあり得ない事ばかりじゃないの!!
更にはスピアーズのマネージャーも務めるぐらいの実力持ちである以上、菫さんがシズクの中の人であっても、十分におかしくはないわね……
少し頭の中で色々と巡り巡らせて考え、私は自分なりに衝撃発言の答えをまとめた。
『菫さん、悪いですけど、あなたはシズクとは違います』
私がシズクの正体が菫さんであると頑張って理解した直後、私の真後ろで飛んでいたリーフィが菫さんの発言を真っ向から否定をした。
「あらっ、流石は超高性能なAI。AIには私の嘘は通用しない様ね……」
えっ!?
まさかの菫さんはシズクの中の人ではなかったという事なの?
だったら、誰がシズクの中の人なの?
「ほらっ、いつまでもそこに隠れていないで、早く出て来なさい。自分で森崎さんに真実を伝えたいって言ったから、私が付いて来てあげたのでしょ」
その後、リーフィにあっさりと嘘である事を見抜かれてしまい、嘘である事を素直に認めた菫さんは、隣にあるヤシの木に向かって誰かに出て来る様に呼びかけた後、ヤシの木の裏に隠れていた人が私達の前に姿を見せた。
「えっ!? 雨沼さん!?」
ヤシの木の裏から出て来たのがまさかの雨沼さんだった為、私は凄く驚いた。
「ままっ、まさか、シズクさんの正体って…… まさかの雨沼さんだったの!?」
「今まで隠していてゴメン。私がシズクの中の人です」
凄く驚く私に対して、雨沼さんはどこか恥ずかしそうな様子であっさりとシズクの中の人である事を自白した。
「雨沼さんがあのシズクさんの中の人なのって、それ本当なの!?」
『間違いありませんよユア。ルナは正真正銘のシズクの中の人ですよ』
「リーフィの言う通り、その通りだよ」
あまりの衝撃過ぎる事実にすぐに信じる事が出来なかった私は雨沼さんに問いかけてみると、何故か隣にいたリーフィが既に知っているかの様に雨沼さんの言っている事に間違いがない事を私に伝えると、それを聞いた雨沼さんは納得する様に頷いた。
「でも、どうしてリーフィはその事を知っているのよ?」
『それは、私にはAIで作られたものなのかそうでないものかを見抜く能力として、情報の発信元を瞬時に導き出す機能が備わっているのです。その為、私は初めてシズクと出会った時からシズクの中の人がルナだと分かっていました』
「確かに今の時代はAIで作られたのもがたくさん出回っているから、真実を見抜く能力はある方が便利だけど、そんな能力まであったのね」
AIで作られたものなのかそうでないのか、その情報の発信元を瞬時に見抜く機能が備わっているリーフィは初めてシズクと出会った時から既にシズクの正体が雨沼さんだと知っていた事を私に言った。
そう考えると、確かにリーフィのこれまでの行動を振り返ってみると、リーフィはシズクの中の人が雨沼さんだと分かっていた様な行動をとっていたような気がする……
リーフィが雨沼さんやシズクの事を完全に信用していたのは、初めからシズクの正体が雨沼さんだと分かっていたからなんだと、改めて振り返ってみて思った。
「流石は高性能AIだね。黙っていても簡単に正体を見破られるなんて」
『私には隠し事は通用しないですよ』
そんなリーフィの凄すぎる能力に、雨沼さんは関心をしながらリーフィの凄すぎる性能を評価した。
「でも、どうしてそんな凄く大事な秘密を私に言おうとしたの?」
「それは、シズクがただの一般人である森崎さんの悩みに対して個別で相談を聞いたり、それを理由にスピアーズとコラボを行ったりと、シズクが1個人に対して変に色々と協力的だった理由だけでも、森崎さんがこの町を去るまでにどうしても言っておこうと思ったんだ」
「それだけの為に!?」
「森崎さんが気にしていなくても、有名人が見ず知らずの一般人に対して凄く親しく接して来た理由だけでも言っておかないと、どうしても心残りになってしまうと思ったからだよ。私個人としても氷山先生から虹川さんがスピアーズを抜けて草プロに入るかも知れないっていう話を聞いて、スピアーズに関しては色々と気になっていた事も多くて、そんな理由もあって森崎さんを無意識に協力させてしまった事についても言っておこうと思って、私は真実を言う事にしたんだよ」
その後、雨沼さんは私にシズクの中の人である事を告白した理由を言った。
「別にそんな事気にしなくてよかったのに。でも、そのおかげで、シズクが1人の一般人の私に対して色々と協力的だった理由も分かって良かったわ。あと、おかげで虹川さんはこれからもスピアーズに残ってくれる事になったし」
「そう言ってくれると、こちらも嬉しいよ」
私としては特に気にはしていなかったものの、雨沼さんがシズクの中の人だと分かったおかげで、シズクが協力的だった理由が分かってスッキリした気分になった。
「そう言えば、菫さんと雨沼さんはどの様なご関係なの?」
「雨沼さんは私がやっているアイドルスクールの過去の受講生だったのよ。それも凄く優秀な。そんな理由もあって、私が雨沼さんに草プロへのオーディションを進めてみたら、見事に合格しちゃって、今ではシズクとして活躍をしているのよ」
「そうだったのですね。凄いですよ、雨沼さん」
「まっ、まぁ…… 確かに、凄い事かも知れないね……」
その後、雨沼さんと菫さんとの関係について聞いてみると、雨沼さんは菫さんがメタバース内で行っているアイドルスクールの過去の受講生であった事が分かり、菫さんが自慢気にその事を話していると、それを聞いた雨沼さんは恥かしそうに顔を下に向けた。
そう言えば、私がこの町に来始めた当初、ビデオ通話内で早川さんがその様な事を言っていたけど、それって雨沼さんの事だったのね。
そう考えると、虹川さん関連以外でSPレディオ側と草プロ側との繋がりがあっても全然不思議ではないし、何よりも先日シズクがスピアーズとコラボ生配信をする時にSPレディオ側の許可がすぐに取れた事にも納得がいく。
「私がシズクの中の人である事は、他の人には秘密にして欲しいんだ。今後も、シズクは私ではないシズク一個人として活動をしていきたいので」
「わかったわ、雨沼さん。その約束、絶対に守るわね」
その後、雨沼さんがシズクの正体を他の人に言わないで欲しいと言って来た為、私は雨沼さんの言う通り、この事は今この場にいる人達だけの秘密に留めておく事にしたのであった。
そんな感じで、私達が埋め立て地内にある公園で話していた時、どこからか火花さんが私達を呼ぶ声が聞こえて来た。
「あっ、森崎さんがいたよ!!」
「姉ぇ姉ぇと雨沼さんも一緒だよ」
火花さんと氷山さんの声がした方を振り向くと、そこにはメタバース内でのライブを終えたばかりのスピアーズのメンバー4人がこちらに向かって来ていた。
「あれっ? どうして、ここが分かったの?」
「リーフィに教えてもらったんだよ。海水浴場隣の埋め立て地の公園にいるってね」
火花さん達はリーフィから居場所を聞き、ここにやって来たのであった。
「ねぇねぇ、SPフェスどうだった? 凄かったでしょ!! あれが、私達スピアーズ本来の実力だよ!!」
「スピアーズの活躍、見せてもらったわ。ホント、凄いライブだったわ」
「あのシズクに負けずと、よく頑張ったと思うよ。やっぱり、スピアーズは4人いてこそ1つって感じだね」
自慢気にスピアーズの凄さを語る火花さんに対し、私と雨沼さんはライブの感想を火花さんに言った。
「それよりさ、SPフェスの大トリを飾ったユリアっていう女神みたいなキャラクターの歌聴いた? あの歌声、森崎さんとリーフィの声にどことなく似ていたけど、すっごく歌も上手くて凄く綺麗な歌声で驚いたよ」
「ホント、ユリアの歌唱力には、この私も驚かされたよ」
その後、火花さんが私とリーフィが合体した姿であるユリアに関する話を始めると、同時にシズクの中の人である雨沼さんも火花さんと同様に、ユリアの凄さに驚いていた。
「ねぇ、リーフィ、SPフェスで出場したユリアって、今後もどこかで出たりするのかしら?」
『あれは私とユアの2人が1つになる為のアバターですから、ユアがライブとかに出る気が無い以上は、多分どこにも出ないでしょうね』
「そうなの。じゃあ、もう人前に出る事はなさそうね」
火花さんと雨沼さんの反応を見た後、私はリーフィにこっそりと今後のユリアの同行について聞いてみた。
そんなユリアの正体は、私とリーフィの合体をした姿だけど、私自身は今のところアイドル系Utuberになる予定はない為、再びお目にかかる日は来そうにないわね。
「そんな事より、森崎さんを探していたのは、みんなでSPフェスの打ち上げをやろうと思って誘ったんだよ!!」
「ほらっ、ここに花火セットがあるよ」
その後、火花さんが皆で花火をやろうと言った後、ぷんぷりぃ柄の手提げ鞄を持っていた氷山さんがその鞄から花火セットを取り出した。
「花火って、夏にピッタリでいいですね」
『皆さんが楽しんでいる様子は、私がしっかりと見守っておきますよ』
その為、私は火花さん達と一緒に花火を楽しむ事にした。
「あらっ、打ち上げに花火なんて良いわね。せっかくだし、森崎さんだけでなく雨沼さんも一緒に楽しんで行くといいわよ」
「わっ、私は別にいいよ……」
「そんな遠慮せずに、一緒に楽しんで行こうぜ!!」
「そうだよ。せっかく仲良くなれたのだからさ!!」
「えぇっ!! えぇ!?」
その後、菫さんが雨沼さんにも一緒に花火をやるに声をかけたが、それを聞いた雨沼さんが恥ずかしがる様に断ると、その様子を見ていた水島さんと火花さんは強引に雨沼さんを花火に誘った。
「ほらっ、花火はたくさんあるから、みんなでやると楽しいよ」
「みんなでやる花火も楽しくていいわよ」
「そっ、そう…… じゃあ、お言葉に甘えて」
そして、氷山さんと虹川さんからも一緒に花火をやる様に言われた為、雨沼さんはその誘いに応じる様に氷山さんから花火一本を受け取り、皆と一緒に花火を楽しんだ。
そんな感じで、私達はSPフェスの打ち上げとして、夏の風物詩である花火を楽しみ、この夏休みの最後の思い出作りを楽しんだのであった。
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