月の巫女はいま暁のそらに舞う

佐江木 糸歌(さえぎ いとか)

第Ⅰ部~大魔界聖戦~

プロローグ

序・Ⅰ ー始まりの預言ー

 ――この世界は今、終焉への扉を開いた。天上に輝く聖光は絶望によって闇紅の光へと堕ち、やがて三千世界に永遠の紅き夜をもたらす。

 是なる闇は余りに深く、ゆえに夜の訪れを止めることは叶わぬ。


 紅き夜はまず月に落ちかかる。神秘の月光をもってしても、凌ぐは三度まで。一度目に原初の光を、二度目に輝ける虹の一条を失い、三度目には無数の灯火が失われ、やがて。


 月が永遠の紅に染まり、其が流す紅き血の涙はやがて地上の大地を赤く染め上げるだろう。


 屍山血河を紅く昏き月光照らす常闇の中、新世界を創りし柴紅の創造主は嗤う。果てしない絶望を。救済の価値なき下等な命を。自らの行いを。そして……。


 春に咲く一輪の花が如く美しく優しいひとりの少女が、薄汚い獣によって理不尽に散らされるとき、傍にいて守れなかった自分自身を。


 そうして世は紅き終焉に行きつくだろう。この結末に否応なし。


 だが、如何なる手段をも辞さぬ覚悟ならば、ここにたった一つ。終焉へと至らぬ道を示す。


 この書を閲覧せし日より五千年の内に、次なる時代を担う後継となる巫女を十二人揃えるのだ。ただし――……。


 これに従えば、長月の巫女が運命の子となりて三度目の凶夜に始祖より力を賜り楽園を旅立つ。その瞬間を迎えた時、世界は紅き終焉を逃れ――続く二つの滅びの定めをも覆すだろう。


 来るべきその時、運命の巫女は三千世界に散らばりし月の楔を求め、また自らが至高の存在に至るため下界に降り、停滞していた歯車が動き出す……。


***


 月界の初代占星術師、ユリウスが遺した禁断の預言書より一部抜粋、及び超古代魔法界語より翻訳。

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