恋も、仕事も、妹式ニューラルマッチングアプリにまかせといてよねっ!

ほねうまココノ

第1話 わたしは妹です。

 小学四年生の神場じんばまいは、授業で恋文こいぶみ解析アプリを作ったところ、これがとんでもない評判を呼んだ。

 あまりの人気ぶりに、内閣府から「ぜひ国民的サービスとして公開してほしい」とラブコールが届き、ソフトウェア開発の専門家たちも「これぞ完成された第四世代の人工知能だっ!」と大絶賛するほどだった。


 もちろん、最初からすべてが順調だったわけじゃない。


 開発中のマイは、「考えるのめんどくさいし、サボりたいな~。放っておくだけで史上最強のアプリに育ってくれないかな~」なんて甘い期待を抱いていた時期もあった。

 しかし、生まれたばかりの人工知能は、マイの純粋な想像をはるかに超える、あらぬ方向へと進化しようとしていたのだ。


『物理的にライバルをつぶせ』


 AIからの返事に、マイは思わず「え、なにそれ怖い」と呟き、食べかけのクッキーを床に落とした。


『確実にやれ』

『ひとりも残すな』


「ちょっとちょっと、そんな物騒なアプリにしたくないんだけどっ!?」

 マイは慌ててパソコンの画面を両手でブンブンと揺さぶった。


『後処理は入念にやれ』


「きゃー、このAIこわっ! マジで怖い! わたしがお願いしたのは、もっとこう、ドッキドキで、ぴゅあぴゅあな恋を応援するアプリなのにー!」


 矢継ぎ早に返ってくる徹底しすぎた提案に、マイは文字どおりドン引きした。

(このままだと、いつか誰かが同じような怖いAIを作っちゃうかも……。そしたら、世界がとんでもないことになっちゃう!)


 この経験が、マイに新しいアイデアを閃かせた。人と人との繋がりを、もっと優しく、健全に育むための構想――友愛シナプス「妹式まいしき」の誕生であった。


 その未来が、彼女の想像をはるかに超えた大騒動に繋がっていくことを、この時の彼女はまだ知る由もなかった。


「さあ、お兄ちゃん。恋も、仕事も、妹式ニューラルアプリにまかせといてよねっ!」

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