第2話

 あいつと会ったのは、高校に入ってすぐの頃だった。

 クラスが同じで、座席も隣でよく話すようになり、趣味も合ったのか、すぐに友人と呼べるような間柄になった。

 俺にとっても、あいつにとっても、二人で話しているのはとても居心地がよく、それから関係が進んで恋人と呼ばれるような関係になるのは出会ってからそれほど月日も経ってはいない頃だった。

 付き合い始めるのも、お互いにこの相手しかいないんだろうな、と感じていたようで、どちらかが劇的な告白をする、といった感じではなく、何となく、そろそろ付き合おう、といった形で付き合うようになった。

 付き合い始めてからも、正直それほど劇的に生活が変わったわけでもなく、ただそれまでと同じように過ごして、たまに進展したり、と他の恋愛をしているカップルのような甘酸っぱい空気感が出ることも無く、かと言って淡々としているわけでもない雰囲気で、自分たちの恋愛をしていた。


 そのまま高校も最終学年になり、関係は付き合い始めたときよりはより親密な関係になっていて、進学先も同じ、近場の大学に決まって残り僅かな高校生活を、学校の屋上や空き部屋など、授業をサボる時などによく使用した場所でこれまでのことや、これからのことを話して過ごしていた。


 そうして、残りの高校生活も過ぎて行って、高校も無事に卒業した。

 それから、卒業してから大学が始まるまでの少しの休みで、二人で旅行に出かけた。

 高校の時にバイトで稼いで貯めていた貯金を使って、二人でほんの少しの遠出を楽しんだ。

 映画で取り上げられて、一時期とても注目されていた町へと行き、あの時の映画の話で盛り上がったりして、町を歩き、美味しそうなご飯を食べたり、珍しい体験をしたりして、予約していた旅館へと向かった。


 そこで、また一つ大人の階段を上って、俺にとってもあいつにとっても忘れられない旅になった。


 それからは、またそれまでと同じように、いや、以前にも増して親密に関わっていた。





 …そんな言葉にはしなかったが、幸せに過ごしていた時だった。

 別に、俺とあいつの間で何かあったわけではなかった。

 喧嘩は時々したが、いつもその度に元に戻って、喧嘩も一種のコミュニケーションだと二人とも分かっていたから、特に忌避するようなものでもなかった。

 いつも通りの大学からの帰り道、いつも通り他愛もない会話をしながら一緒に帰って、少し寄り道をして、あいつを家まで送って俺も家に帰った。

 そして、明日のことに胸を馳せながら、眠りに落ちた。





 そんな何もない、いつも通りの毎日、その翌日から、あいつは家から出なくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二人 かんた @rinkan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ