第20話 選択

「ここだったんですね!」


と、タカヒロは俺たちに会えたことを大喜びする。


久寿「なぜタカヒロがいるんだ?用事があると言っていたじゃないか。」


タカ「ここに用事があって…と言うか、僕が描いたんです。」


ユキ「え!そうなんですか!?」


ユキさんがその言葉に目を光らせる。


なんてこった。

絵に目を引かれて、名前をしっかり見てなかった。


タカ「でも、知り合いの個展に行くって…」


ああ、余計なことを言わないでくれ。


久寿「知り合いの紹介でここを教えてもらったんだ。まさかタカヒロのだとは…。にしても!いい絵だな!」


話を思いっきり逸らしてやろう。


タカ「ありがとうございます。なんだか知り合いに言われるの照れるなぁ…!」


デレデレと照れるタカヒロ。


よかった、話が逸れた。


ユキ「いい絵ですね。よかったらタカヒロさん、紹介してくれませんか?」


え、それは違うって。


タカ「いいですよ!行きましょう!」


タカヒロも空気読んでくれって、頼むって。


はぁ…。

こういう時って開いた本人忙しいんじゃないのか?


ずっと3人で施設を周ってるぞ。


なんでこうなってしまったんだろうか…。


タカヒロが絵の説明をしてくれているが、俺は全く内容が入ってこない。


俺の脳みそが悪い訳ではなく、この状況が悪すぎる。



タカ「この絵はいつもの散歩道で見つけて、ど根性タンポポから創作を得たんだ。」


ユキ「へぇ…たしかにこう…、力強くて光を吸収しようと言う感じが伝わってきます。」


タカ「分かる!?このタンポポはコンクリートと不法放棄のゴミのそばに咲いてたんだ。」


ユキ「そんなところでも咲こうとするんですね。」


タカ「かっこいいよね。その時のタンポポに惚れたもん。」


そんなに笑顔を見せないで。

私もあなたに心動かされそう。


こういうのって本当はダメなんだろうけど…。


ユキ「久寿さんは、どう思います?」


今は、頼らせてください。

ごめんなさい。


久寿「あ…これは…ライオン?」


タカ「タンポポですよ!」


久寿「ああ、なるほどな。本当は可愛らしい花なのにこんなに迫力が出るとはすごいな。」


タカ「ありがとうございます!」


二人が先を歩いていく。


これでよかった…、のかな…。


自分の感情を抑えるために他人を使うなんて、ひどいことだよね。


「「ユキさん。」」


と、私が悩んでいると二人に呼ばれた。


ユキ「はい!」


私は少し離れた二人の元へ駆け寄る。


タカ「これで一通り紹介終わりました!たくさんの感想ありがとうございます。」


久寿「そうか。じゃあ…」


タカ「あの、せっかくここで会えたので3人でごはん行きませんか?」


タカヒロさんが私たちをごはんに誘った。

隣にいる久寿さんは少し悩んでいる様子。


私は…私は…どうしたい?


じゃなくて帰らないと。

これ以上仲良くしてしまってはダメなんだって。

自分で分かってるよ。

でも久しぶりにこうやって、人と出かけた時間を終わらせたくない自分もいる。


久寿「ユキさん。俺はユキさんが行きたいなら、どこか店を探そうかと思っているけどどうする?」


久寿さんが私に聞いてきた。


ユキ「んーと…」


言葉に詰まる。


悩みすぎて目がバタフライ。


タカ「ユキさん、1日くらい仕事しなくても大丈夫ですよ!僕その分通います!」


久寿「俺が通うから、タカヒロは時たま来い。」


二人が言い合いをしているこの心地いい時間をまだ終わらせたくない。


ユキ「…行きたいです。」


タカ「やったー!じゃあ久寿さんよろしくお願いします!」


久寿「ユキさんは、魚、肉、野菜、何の気分?」


ユキ「んー…、魚です。」


久寿「分かった。」


久寿さんはスマホでお店を検索し始めた。


1日くらいでそんなに仲は深まらないよね。


大丈夫。

私がちゃんと理性を持った行動をすれば大丈夫。

もう晴馬さんのようなことは起こさない。

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