第90話 case90

くるみは大剣の男性が蹲る中、遠くから爆発音が聞こえ、マナポーションを飲みながら先を急ぐ。


『2重開いた…』


くるみはそう思いながら急ぎ足で歩いていると、シュウヤと本を読んでいた男性が、背を向けているくるみに向かって魔法を放った。


が、くるみは背後に分厚い氷の壁を作り出し、攻撃を弾き飛ばすと、スタスタと歩いて行ってしまう。


『死人出したって言うけど、仲間割れしてシュウヤって人が殺したんじゃないの?』


くるみはそう思いながら歩き、開けた場所にたどり着いたが、そこに居たのは、幻獣であるキマイラ。


「またお前かよ… お前嫌いだから出てくんなっつーの…」


くるみはがっかりと肩を落としながら、ため息をついた。


くるみは仕方ないといった感じで、大きく足を開いて重心を低くし、アックスを担いで構える。


それと同時に、背後から補助魔法が飛んできて、ちらっと見ると荷物持ちをさせられていた女性が、「頑張ってください!」と、くるみに声をかけていた。


くるみは返事をしないまま、キマイラに向かってアックスを投げ飛ばす。


キマイラとは2度も戦っていたし、そのうちの1度は特殊幻獣であるキマイラだったせいか、攻略法は完璧に把握していた。


難なく蛇を退治した後、ヤギに向かって勢いよく飛び立つ。


『あ、武器、無属性じゃないじゃん』


くるみがそう思った瞬間、アックスは黒い光を放ち、そのままヤギの首を跳ね飛ばした。


『闇属性と融合した? この武器、マジ凄くね? つーかヤバくね?』


くるみは感心しながらライオンを凍らせ、真っ二つに叩き斬る。


呆気なく終わってしまったボス戦に、くるみは疑問に思っていた。


『やっぱりまた強くなった? あのキマイラが弱かっただけかな?』


くるみがそう思いながら振り返ると、ギルドメンバーたちは呆然と立ちすくんでいた。


それと同時に、ひらひらと金色の蝶が舞い踊り、ゲートを開いていく。


くるみは荷物を持ってさっさとゲートの中に入ると、荷物持ちの女の子もゲートの中に飛び込んだ。


ゲートの中を歩いていると、女の子が切り出してくる。


「あの… ありがとうございます。 荷物持っていただいて…」


「いんや、いいよ。 自分の荷物くらい自分で持てって話でしかないっしょ」


「私、ほのかって言います。 ヒーラーです。 またご一緒していただけますか?」


「気が向いたらね」


くるみはそれ以上言わず、ゲートの外へ出ると同時に、マーケットへ向かう。


マーケットでゴミ扱いされている魔獣の皮を片っ端から買い漁った後、ギルドルームに行き、インベトリから魔獣の皮を出し始めた。


シュウヤはそれを見て「なにしてるんだ?」と聞くと、くるみは素材やアイテム、魔法石と装備を出しながら「やめる。 ここつまんない」と言い切る。


「そうか、じゃあその幻獣アックスもいらないって事だな?」


シュウヤが言うと、くるみは思いっきりアックスを投げ飛ばす。


アックスはリクライニングシートを切り裂きながら壁に刺さった。


「くれてやるよ」


くるみが言い切った直後、シュウヤの平手がパーンと言う音を立て、くるみの頬を振りぬいた。


「ふざけるのもいい加減に…」


シュウヤの怒鳴り切る前に、くるみの右ストレートがシュウヤの顔面に当たり、シュウヤは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられていた。


「ふざけてんのはそっちだろ? ギルド退会と交換に持ち物全部置いて行けだと? んなんだからてめぇら全員雑魚なんだよ。 大体、てめぇの荷物ぐら…」


くるみはそう言いながら、ギルド員の証であるブレスレッドを引きちぎり、言葉の途中で強制的にギルドルームから追い出されてしまっていた。


「あれ? え? あのさ… 言いたい事まだあるんだけど…」


くるみはギルドルームのドアの前で成す術がなく、仕方なくマーケットの方へと向かっていた。

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