第86話 case86
セイジはギルドルームに入るなり、ため息をつき、くるみに切り出した。
「姫、ギルドを移動しろ」
「はぁ!? 何言ってんの!?」
ノリはテーブルを叩きながら立ち上がり、大声で怒鳴りつける。
「命令だ。 ただし、幻獣の鎧はこのまま置いて行け」
「ちょっと! どういうことか説明しなさいよ!!」
セイジはため息をつき、自分の過去について話し始めた。
今から数年前、セイジはシュウヤのギルドに居た。
当時、シュウヤのギルドランクはA級。
シュウヤのギルドは、数百名ものギルド員を抱える大規模ギルドだったため、数で魔獣を撃破するスタイルだった。
ギルド員の中でもランク分けをされ、ギルドに入ったばかりのセイジは、最低ランクに位置付けられ、動くギルド倉庫として使われていた。
セイジはチームに入れてもらうことすら出来ず、ずっとソロダンジョンに籠る日々を過ごし、着実に力を付けていた。
そんなある日、20名以上のチームを組み、ダンジョンに向かったシュウヤのチームは、初めて幻獣を目の当たりにする。
大人数でチームを組んでいたにも関わらず、生き残ったのはシュウヤただ一人。
しかも、シュウヤが手にした幻獣素材は、当時、装備合成の素材としては使うことが出来ず、売ることも出来ない物だったため、全てをセイジに譲っていた。
セイジはその素材を大事にとっておき、装備として使えるようになった直後、誰よりも早く幻獣のワンドを作り上げていた。
シュウヤはその日から、『ギルド内ランクが低い奴には、ギルドルームを使わせない』と言う勝手なルールを決めていた。
ギルドルームが使えなければ、回復アイテムも、装備も作ることが出来ず、数名のギルド員が脱退を余儀なくされていた。
が、シュウヤは脱退の条件として、魔法石と持っている素材、装備のすべてを置いて行くように言い、ギルドからも追い出す方法を取っていたため、セイジは幻獣のワンドを奪われていた。
シュウヤのギルドはこんなことを繰り返し、魔法石に物を言わせ、その数を増やし、着実に装備を強くしていき、S級ランクにのし上がっていた。
脱退を余儀なくされた者たちは、装備も、それを買う魔法石もなく、路頭に迷い、ハンターを辞めてしまう者もいた。
が、ウィザードだったセイジは、武器がなくとも戦うことが出来ていた。
それに加え、ソロダンジョンに籠る日々を過ごしていたため、稼ぐ術が身についていたせいか、ハンターを辞めることはなく、ソロギルドを立ち上げるようにまでなっていた。
セイジの話を聞いた後、くるみが切り出した。
「なんでそんな条件飲んだの?」
「飲まないと脱退させてもらえないんだよ。 全ての権限はギルドマスターにあるからな。 脱退できないと、行動が制限されてしまうし、最悪ソロダンジョンすら行けなくなる。 姫がシュウヤの誘いを断った場合、さっきの査定が棄権と判断される。 棄権と判断された場合、そのギルドはやる気がないとみなされ、強制解散させられる。 そうなった場合、そこにいるクアールは魔獣として処分され、ギルドで管理していたものはすべて没収だ。 S級… 審査監督員にはそれくらい容易いことだ」
くるみは膝に座るゴロを撫でながら、小さく呟くように答えた。
「…そっか。 わかった」
「さっき使った装備以外は、全てギルド倉庫内に入れて行け。 そうすれば所持品として扱われない」
セイジの言葉を聞き、くるみはインベトリを操作し始め、その場にいた全員、引き留める言葉すら思い浮かばず、ただただ黙っていた。
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