第80話 case80

くるみは葵から弁当を受け取った後、屋上の倉庫の上で一人、お弁当を広げてガッカリとしていた。


そこには色とりどりの野菜が綺麗に並べられ、見るからにおいしそうで、肉と野菜がバランスよく入っていた。


『あいつの女子力ってなんなんだよ…』


くるみはそう思いながら一口食べ、更にガッカリと肩を落とした。


『美味すぎんだろ… 安田さんより美味いってどういう事よ…』


男子である葵の女子力の高さに、肩を落としながら食べていると、「やっぱここだったか」と言う声が聞こえ、振り返ると亮介が隣に座ってきた。


「起きたんだったら連絡しろよ。 てか、弁当なんて珍しいじゃん。 マジ美味そうなんだけど、お手伝いが作ったん?」


「ぼくちゃん」


「は? 葵? あいつが弁当作ってくるみに渡したん? マジで?」


「あいつの女子力の高さ、マジ半端ないよ」


くるみはそう言いながら、肉巻き野菜を箸でつまみ、亮介の口元に持っていく。


亮介はそれをパクッと食べ「ウマ!! マジであいつ作ったん?」と再度聞き、くるみはがっかりと肩を落とした。


亮介はくるみの肩をポンっと叩き「お前に求められているのは女子力じゃない」と言い切り、くるみは亮介を睨みつける。


「嘘だって! 冗談! 本気にすんなよ」


亮介はそう言いながら、葵の作ったおにぎりに手を伸ばし、くるみはため息をつきながら、少しずつ食べ進めていた。


「そういやアイカ、追放だって聞いた?」


「追放?」


くるみが聞くと、亮介はくるみが気を失っていた時のことと、ヒーラー賢者から聞いた話を始め、くるみは「才能無しって酷いな」と、少し笑っていた。


「くるみはサラブレッドだから、ピンクの心配はないと思うけどさ」


「サラブレッド?」


「両親がウィザードとヒーラーなんだろ? 塔で会ったよ」


「マジ? え? 来てたの?」


「ああ。 お母さんはちょっと話したけど、親父さんに挨拶したらシカトされた」


「シカトはいつもの事だから気にしないで」


くるみはそう言いながら弁当を食べ進めていると、倉庫の下から呼ぶ声が聞こえた。


くるみが四つん這いになりながらひょこっと顔を出すと、葵は赤い顔をしながら「くるみさん! ごめんね! 水筒渡すの忘れてた!! 喉詰まっちゃうでしょ?」と手を振ってくる。


くるみは、高すぎるくらい高い葵の女子力を目の前に、がっかりと肩を落とし、亮介はくるみの背中を叩きながら「ドンマイ」と小さく言っていた。




昼休みを終える前、くるみは葵に弁当箱を返していた。


「明日も… 作ってきて… いい?」と、恥ずかしそうに聞いてくる葵を前に、がっかりと肩を落とし、亮介に励まされながら、廊下を歩いていた。


ウォーリアとマジックナイトの対人訓練の授業のため、訓練場に入るなり、黄色い声が聞こえ、くるみは亮介から距離を置く。


すると、女子生徒たちは、くるみの周囲に集まり、人だかりを作り始めた。


「な、何?」


くるみが困惑しながら言うと、「きゃー! 喋った!!」と黄色い声が上がり、くるみは困惑するばかり。


自分の元に来ると思っていた亮介は、ただただ呆然とすることしか出来なかった。


すると、千鶴が手を叩きながら近づき「ほらほら、くるみさん困ってるでしょ! 散った散った~」と言いながら人だかりを払いのける。


「…な、なにこれ?」


くるみが千鶴に聞くと、千鶴は「くるみさんのファン。 キマイラを一人でやったでしょ? あの後から、マジックナイトの間では、最強プリンセスとして話題独占中なんですよ。 一人も犠牲者を出さなかったし、あれだけの魔力を見せつけられたし、ね!」と言いながら笑いかける。


くるみは「はは…」と空笑いをした後、更にがっかりと肩を落とした。



その日の夜、くるみはシャワーを浴びようとしていたが、鏡に映った自分の裸を見て固まっていた。


『腹筋が割れてる… だと?』


試しに腕に力を入れて見ると、二の腕にははっきりとした筋肉が盛り上がり、くるみは再度固まっていた。


くるみは鏡に映った自分の体を見ながら『…あたしの女子力、どこに行ったんだろうな』と思い、ため息をつきながらシャワーを浴びていた。

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