第76話 case76

全員はセイジに言われた位置につき、キマイラが復活するのを待っていた。


くるみが足元に転がった小石を、黒いキマイラに向かって投げると、小石はキマイラの足元で弾き返され、力なく転がるだけ。


『ふーん。 小石ですら弾いちゃうんだ… 上の方は…  弾くかぁ… あっちはどうだろ?』


くるみはそう思いながら小石を投げ続けていると、黒いキマイラは歯ぎしりをするようにギリギリと音を立て、ヤギと蛇の頭を復元していく。


「来る」


マジックナイト賢者がそう言った瞬間、大爆発が起きたが、くるみの投げた石がキマイラを囲むように氷の壁を作り、天井に向かって爆風が起きた。


「計算か?」


セイジが聞くと、くるみは顔だけセイジの方を向き「まさか。 偶然だよ」と言いながら笑って答える。


セイジはクスっと笑い「だろうな。 とにかく飛び回って注意を引いてくれ」と言った後、くるみにマナポーションを手渡した。


くるみは渡されたポーションを飲み干し、壁にガラス瓶を叩きつけると、アックスを担いて足を大きく広げ、大声でみんなに呼び掛けた。


「いっくよ~ 3 2 1 GO」の合図で氷の壁は姿を消し、全員が一斉に飛びかかる。



くるみは風で飛び回って蛇の注意を引き、セイジと2人で遠距離からの魔法攻撃を蛇に打ち付ける。


太一はヤギの注意を一点に集中させ、ノリとマジックナイト賢者が隙を見て、攻撃を叩きこむ。


亮介はウォーリア賢者は、ライオンの顔を挟むように配置につき、ライオンの注意がそれた瞬間に攻撃を食らわせ、すぐにバックステップで距離を取る。


時々、葵の補助魔法や回復魔法、マナポーションが飛び交う中、全員はそれぞれの役割を確実に熟し、3つの頭に対して均等にダメージを与えていた。



『ほぉ… あのヒーラー良い動きをするのぉ…』


教師に連れられ、階段の途中から見ていたヒーラー賢者は、立派な髭を触りながら、そう思っていた。



完璧すぎる連携攻撃を受け、見る見るうちに血だらけになっていく黒いキマイラを見ながら、千鶴は「凄い…」と言葉を漏らしていた。



「あと少しだ!!」


セイジが大声で叫んだ瞬間、アイカが「ぎやあああああああ」と叫びながら鞭を振り回し、通路から飛び出してきた。


アイカの振り回していた鞭は、亮介の足に絡みつき、亮介の動きを止めた瞬間、キマイラの大きな爪が、亮介に向かって襲い掛かってくる。



「なっ!!」


亮介の声に反応したくるみは、咄嗟に鞭に向かって右手を伸ばし、爆発の魔法を放つと、2人は吹き飛ばされた。


が、すぐさま2人に回復魔法が飛んできて、すぐに傷を癒していく。


『葵ナイスすぎる!!』


亮介はそう思いながら所定の位置に着いたが、ライオンの頭の向こうでは、くるみが蛇に右腕をかまれ、振り回されていた。


爆発魔法を放つために、くるみは腕を伸ばしたが、その瞬間に腕をかまれ、激しく振り回された後、くるみはセイジの足元に転がって行った。


「姫!!!」


セイジが叫ぶと、ウォーリア賢者の「止めるな!!」と言う怒鳴り声が聞こえ、痛みにもがき苦しむくるみを助けることは出来なかった。


くるみの右腕は見る見るうちに青くなっていき、くるみは叫び声を上げながら、痛みに苦しむばかり。


「とどめだ!!!」


セイジが叫んだ瞬間、ノリと亮介、セイジの3人は同時に攻撃を放った。


黒いキマイラの蛇はセイジの魔法で吹き飛ばされ、ヤギの頭はノリの横斬りで弾け飛び、ライオンの頭は亮介の縦斬りで真っ二つに。


キマイラは砂煙と血しぶきを上げて倒れたが、全員はまっすぐにくるみの元へ駆け出した。


セイジはくるみを抱きかかえ「姫! 大丈夫か!! しっかりしろ!!」と大声で呼びかけるも、くるみは首元まで青くなってきた右腕を押さえながら、痛そうな声を上げ、苦しむばかりだった。


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