第62話 case62

翌日の放課後、くるみは一人でギルドルームに向かうと、誰もいなかった。


装備作成機を弄っていると、【幻獣のアックス】が作れることに気が付く。


『黒い両刃アックスだ。 黒い炎が上がってるように見えてかっこいいなぁ。 【相手の不利属性を無効化し、炎攻撃を与える】って事は、水に対してもダメージが出るって事? 炎のアックスよりこっちのほうが良いじゃん! つーかこの武器、チート過ぎない?』


くるみはそう思いながら、幻獣素材と、昨日の巨鯨素材、そして炎像の煉瓦をセットし、インベトリを整理していた。


すると、亮介がギルドルームに入り「あれ?一人?」と聞いてくる。


くるみはインベトリを見ながら「そだよ」と言うと、亮介は隣に座り「そう言えばさ、幻獣の角って持ってたよな?」と切り出した。


「あるよ? なんで?」


「いやさ、できれば角を譲ってくれないかなぁ、なんて思ってみたり?」


「いらないって言ってたじゃん」


「あの時はいらなかったんだよ。 今は大剣作るのに欲しいなぁって」


「りつ子さんに聞いてみたら?」


「聞いたら1500万だって。 15万なら何とかなるんだけどなぁ」


「へー。 頑張って稼いでらっさい~」


「そこを何とかできないかなって思ってるんだけどさぁ」


亮介はそう言いながら、くるみの肩に腕を回す。


が、くるみはスッと立ち上がり「なんともなんない」と言った後、亮介の向かいに座った。


「じゃあ賭けようぜ」


「い・や・だ! こっちは死にかけながら戦ったの!」


「手出すなって言ったのはそっちだろ?」


「じゃあ2000万で売ってあげる」


「よし!体で払う」


「交渉決裂だね」


「はぁ? んだよ… 俺も戦いたかったのに…」


ブツブツ言い始める亮介を見て、くるみはクスクスと笑っていた。




その頃太一は、集会所に着くなり『よし! 今日こそ幻獣の角を破格で譲ってもらおう!!』と気合を入れていた。


ギルドルームのドアに手をかけると、中からくるみと亮介の話し声が聞こえると同時に手を止め、中の様子を窺うように、ドアの隙間に耳を当てた。


「だから嫌だって言ってるの!」と言うくるみの声と「ホントお願い!」と言う亮介の声が聞こえ、太一は森の中で見た光景を思い出していた。


「ダメです~」


「じゃあちょっとだけ! 触らせてくれるだけでいいから!」


「い・や・だ。 触るだけで終わんないじゃん」


「終わらせるから! 絶対にアレに入れないから」


「嘘ばーっか。 触ったらアレに入れたくなるじゃん」


「そりゃなるに決まってんじゃん」


「だから嫌だって言ってるの!」


太一は会話を聞きながら、見る見るうちに顔が赤くなり、勢いよくドアを開け「何をしてるんなのだぁ!!!」と声を上げた。


向かい合って座っていたくるみと亮介は会話を止め、くるみは太一に「何語?」と平然と聞く。


少し静まり返った後、太一は冷静に「あれ? 今アレに入れるとかなんとか言ってなかった?」と聞く。


すると亮介が「アレ?」と言いながら作成機を指さした後「幻獣の角譲ってくれって言ってんのに聞いてくれないんだよ? 記念に取っておくとか意味わかんねぇし」とふてくされた。


くるみは「あたしは1回こいつに刺されて死んだの! 持ってればお守り代わりになりそうじゃない? ね? たいっちゃん」と聞くと、太一は無言でギルドルームを後にし、ドアの前で頭を抱えた。


『どうあがいても売ってくれないんだ… 俺の努力っていったい何…』




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