第7話 美術部期末試験対策勉強会、そして
下部に前作までの簡単な登場人物紹介があります。参考にして下さい。
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「はぁ、良く寝た。それにしても変な夢だったな……って、あれ、どんな夢だったっけ」
大きく伸びをして起き上がる。変な夢を見たのは覚えてる。さっきまで内容も覚えていたのは覚えているけどキレイさっぱり忘れてしまっている。
「はぁ、結局あのまま寝ちゃったよ」
着ている洋服を見て昨日の服のままなことに気付く。前髪をかき上げて失敗を反省した。
* * *
その日の部活動、勉強会が始まった。
石原(せんぱい)が持ってきた参考書類を広げて課題を出される。それを解いて間違ったところを石原(せんぱい)や中村(あかねさん)が教えるという流れ。
「それにしても石原先輩(せんぱい)、どんだけ参考書持ってくるんですか」
「ああ、みんなに声をかけたら妙に集まってしまってな。折角だから全部持ってきたんだ」
「椎弥くん、石原先輩が一言声をかけると大変よ。この間話したでしょ、バレン──」
口を押えられる海野。徐々に石原の力が強くなっているのか苦しそうに作業台をバシバシ叩く。
渡された問題集の中から難しい問題を抜いて回答を埋めていく。あまりにも多すぎる参考書に少し憔悴していると隣から急に声をかけられた。
「椎弥くん、この問題分かるー?」
「あ、海野先輩、ここには、この数字を入れればいいんじゃないですか」
「本当だー。できたー、石原先輩できたよー」
「ちょっと、椎弥。なんで2年生の……しかも夏美が解けなかった問題を分かるんだよ」
しまった。疲れている時に声をかけられたからつい普通に答えてしまった。言い訳……言い訳……
目の前にいる小鳥遊(あい)先輩がクスリと笑った。すると立ち上がって助け舟を出す。
「石原先輩(せんぱい)、その問題、この間、友達の和奏(はらだ)さんと一緒に解いた問題ですね」
「そ、そうなんです。幼馴染の和奏……じゃなくて、彩光高校の原田さんに勉強を教えてもらった時にやってたんですよ」
「これって2年生の問題だぞ、この問題を教えてもらったということは、小鳥遊は1年生に教えてもらったのか」
「そうなんです。和奏ちゃんは1年生でも学年で1桁台の成績ですからねぇ」
「凄いな、彩光で学年1桁台ってことは国立大レベルだぞ」
「椎弥くん小鳥遊先輩、家でも会って勉強しているんですね」
中村(あかね)さんが少しうなだれたように話す。
「僕が幼馴染に頼んだんだよ。今回の期末テストは夏合宿のために赤点だけは免れないとならないからね」
「えらい、えらいぞ椎弥。分からない所があったらいつでも連絡していいぞ! 丁寧に教えてやる。ほら、スマホを出しな」
スマートフォンを取り出して指紋認証を解除すると、ドコネのアプリを長押ししてQRコードでフレンド交換する。「わたしもわたしもー」と海野先輩とも交換した。
「石原先輩(ぶちょう)とドコネを交換したなんて知られたら怖いよー。椎弥くん、周りにバレないように気を付けないとね」
「海野の連絡先も知られないように気を付けろよ。海野もモテるからな。恨まれるぞ」
プンプンと怒る海野(せんぱい)。「一緒にしないでよー」と食って掛かっている。難しい問題を石原先輩や海野先輩、中村(あかね)さんに聞き問題を解いていく。
ワイワイやる中、黙々と勉強をする彩衣先輩、同じように難しい問題は質問して課題を消化していく。
中村(あかね)さんは、みんながワイワイやっている中でも集中して取り組んでいた。「勉強している間は周りの音が全然入ってこないの」なんて言っていたが、後日、海野先輩から聞いた話によると「彩光の子に負けたくないとの一心」だと話していたらしい。
美術部が期末テスト対策部として勉強した1週間も終わった。明日の土曜日は和奏と彩衣先輩との勉強会。来週は勉強期間となり部活動は休み。その後期末テストとなる。
帰りの電車。久しぶりに和奏と一緒になった。今週の美術部勉強会のことを話した。石原部長の人望、海野先輩の先輩とは思えない可愛らしさ、中村(あかね)さんの勉強に対する集中力。そして、つい失敗して2年生の問題を解いてしまったこと。
「ふふふ、椎弥らしいわね。冷静なんだけど、ふと油断したときに失敗するところなんて変わってないわねぇ。野球部の時だってもう少しで完封だったのに──」
慌てて言葉を遮る。
「い、いやあれは。みんなが煽(おだ)てるから調子に乗って……。打たれた後は手の平を返したように責められたけど……考えてみたら、兆候はあったんだよなぁ」
中学校での裏切りを思い出した。
「椎弥、でも明るくなったと思うよ。わたしもまたこんな風に話が出来るなんて思わなかったもん。美術部に感謝しないとね」
「確かにな……クラスじゃ友達はあんまりいないけど、美術部は楽しいよ。それに和奏にも感謝している。ありがとうな」
「な、なによ急に、変な事言わないでよ。焦っちゃうじゃない。ただ私は……、いや何でもない。明日は彩衣と勉強会──椎弥、ちょっと付き合ってくれない?」
「良いけど、どこに行くの?」
「それは内緒。家に帰って着替えたら私の家に来て」
和奏とは駅で別れ自宅に帰る。私服に着替えて和奏の家に向かった。和奏の家は玄関を出たら見える場所にある。小学校で同じ通学班だった頃が懐かしい。
和奏は門扉に立って待っていた。僕を見つけると腕を掴んで走り出した。
「大銀杏(おおいちょう)に行きましょう」
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前作までの登場人物:
1B:花咲椎弥(はなさきしいや)
……主人公。中学校で裏切りにあってから人間不信がある。
中村茜(なかむらあかね) ……クラスメート、同じ美術部
西田謙介(にしだけんすけ) ……クラスメート
担任:涼島啓介(りょうしまけいすけ) ……担任、美術部顧問
美術部:2A:小鳥遊彩衣(たかなしあい) ……心が読める不思議な少女
2C:海野夏美(うみのなつみ) ……元気、あまり異性を感じさせない
3C:石原早希(いしはらさき) ……頭が良い。美術部が大切
幼馴染:原田和奏(はらだわかな) ……家が近い。小学校の通学班が同じ距離に住む
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