17話 家族旅行〘後編〙

経済区の観光を終えた僕達は、居住区にある旅館に戻っていた。もうすぐ夕飯の時間だ。急いで夕食会場まで向かう。

夕食会場に着き、今朝と同じく場所に座る。今回は僕と茶眩が先にご飯をとることになった。バイキングの内容は昨日と同じなので、なるべく昨日食べなかったモノを選ぶ。前回肉が多めだった僕は海鮮系多め、逆に前回海鮮系多めだった茶眩は肉多めだった。

僕と茶眩が席に戻ると緋莉と繭がご飯を取りに行く。食べそうなものはほとんど予想がついていたので茶眩とそれについて話していた。

少し経ちお盆を持った繭達が帰ってくる。ちなみに持ってきたものは予想通り、繭はデザート、緋莉は全種類沢山だった。


ご飯を食べ終わり、部屋に戻る。昨日は大浴場に行ったので今日は部屋にある露天風呂に入ろうと思った時、繭が

悪戯そうな笑顔を浮かべこういった。

「どうせならみんなでお風呂入らない?」

その言葉を聞き僕は目を見開き驚く。だけど2人は違った。

「緋莉とお風呂入るなんて久しぶりだね」

「そうだね〜しかも今回はおにぃとおねぇも居るからね!」

と嬉しそうに言ってる。幼馴染ならよくあるのかな?僕は無かったけど。

予想外の返答に困ったのか、繭は

「えっ...と...冗談だったんだけど...」

と言っている。そして僕の方を助けて欲しげな瞳で見つめた。だから僕はこう返す。

「僕も一緒に入りたいな!」

だって僕も入りたいもん、幼馴染と一緒にお風呂。


脱衣場にやってきた。繭の希望で着替えるのは僕達が最初だ。ぱぱっと服を脱いで腰にタオルをまく、そして茶眩の方を向いた。そこで僕は重大な事に気付く。茶眩が女の子と見間違えるような顔とスタイルを持つことに。僕達の家に来てから少しは男らしくなったもののまだ女の子と見間違えることの出来るレベルだ。

少しドキリとしたが茶眩が男なのを思い出し、考えてた事を脳から消し去った。そしてそのまま露天風呂へ向かった。

風は冷たいがお湯が全身を包み込んでいてとても気持が良い。

少し時間が経ち、体にタオルを巻いた繭と緋莉が露天風呂へ入ってくる。タオルで隠されているが、引き締まった腰やふっくらと盛り上がった胸がどうしても目に入ってくる。

「キレイだね〜」

僕の横に座った繭が夜空を見上げ呟く。この旅館は森の中にあり、灯りが少ししかない為夜空の星がキレイに沢山見える。

「そうだね、後懐かしいね。」

そう僕が言うと、繭は分からないのか少し首を捻る。可愛い。

「ほら、夜遅くまで星見た人あったじゃん、次の日僕と茶眩が風邪引いた時。」

と言うと、思い出した!という顔で、

「そんな事もあったね〜」

と笑って言う。チラッと茶眩の方を見ていると、緋莉と楽しそうに話していた。お風呂の縁に座ってる繭と違って、完全に浸かってる緋莉はタオルを取って、手で胸を隠していたが、茶眩はそれを気にしていないようだった。

少し寒くなってきたのか繭もお風呂の中に入ってくる。タオルは巻いたままだった(真似しないでね!)。

「気持ちいいね〜」

と繭が言う。なので、

「そうだね、家族で入るお風呂も良いね」

と答えた。実際は家族じゃ無いのだけど、僕は皆の事を家族の様に大事にしてるし、大好きだ。実際この旅行も家族旅行という事になっている。繭は、

「だね〜...じゃあ大丈夫だよね?」

と言った。最後の方は小声でなんて言ってるか聞こえなかった。すると突然繭が体に巻いてたタオルをとる。繭の大きな胸が目に入ってきた。お湯の濁りやお湯が少し揺れている事でその胸の1番大事な部分は見えなかった。

「家族なら...これも普通だよね?」

恥ずかしそうにそう言う繭の頬はほんのりと赤く染っていた。多分僕も同じ様な状態だろう。

「うん...普通だと思う。」

と、そう返して恥ずかしさを誤魔化す。

そのあと繭は沢山楽しかった事を話してくれた、特に今日の午前に緋莉とリボンを作った事を楽しそうに話していた。その話を終え、

「そろそろ2人のとこ行こ、」

と言って僕に背を向け立ち上がった。僕は歩き出そうとした繭の手を掴む。それに驚いたのか繭が体ごと顔をこちらに向けた。そのせいでそのふっくらとした胸の頂点にあるピンク色のぷっくりとしたアレまで完全に見えてしまったが、僕はそんな事気にせず言葉を口にする。

「もう少し二人でいたい。」

と。どうしてかは分からないが、このまま繭が茶眩や緋莉の所に行くのが嫌だった。もっと2人で話していたかった。普段は絶対に見れない特別な繭の姿を独り占めしたかった。そんな感情が僕の中を支配していた。

突然の事に慌てたのか、繭は顔を真っ赤にし、胸を隠すこともせずに慌てて、

「えっと...うぅ...どうしよ...」

と慌てていた。何かに決心した様な顔をして、

「わかったよ...」

と言ってまた僕の横に座った。さっきよりも近くに。

そのあとまた僕達は話をした、日本のこと、こっちの世界のこと、楽しかった事、辛かった事。それを時間を忘れて話していた。話をしている時、繭はふっくらとした胸も、その先端も隠すことは無かった。でもその顔は恥ずかしそうでは無く、楽しそうで嬉しそうな顔をしていた。ほんのりと赤く染まっていたけれど。

勿論僕もその胸に反応する事は無かった。ただ2人でいる時間を楽しんでいた。


#

お風呂から上がると、何故か布団が敷いてあった。茶眩に聞いてみると、

「探したらあったんですよ。」

と言っていた。布団の方が慣れてるから有難い。

そろそろ寝る時間なので、4つ並んだ布団のひとつに潜り込む。その横に繭が寝っ転がった。

「電気消しますよ〜」

と言って緋莉が電気を消す。みんなおやすみと言って寝始めた。


30分ほど目を瞑っていたが、なかなか寝付けない。他の人は寝ているのか、

「すー、すー、」

と寝息が聞こえてくる。向いてる向きを変えようと寝返りをすると、目の前に繭の顔があった。しかも笑顔の。そして繭は小さな声でこう言う。

「胸も見られたから......今じゃなくて良いけど...いつか...何でもない!」

そう言って逆を向いて、そのまま寝てしまった。なんて言おうとしたのか気になったが、分からないのでそのまま寝る事にした。


#

次の日、遂に最終日だ。と言っても移動時間が長いので朝ごはんを食べたらすぐに馬車に乗らなければいけない。

僕達は朝起きてすぐに朝ごはんを食べに行った。此処で食べる最後の食事なので、なるべく多く楽しむためだ。

「今日が最後ってなんか寂しいね」

と繭が言う。ほんとにそう思う。たったの2日間しかいなかったが、体感ではずっと居たように思える。

そんな話をしながら食事をした。


部屋に戻り片付けや歯磨きなどを行う。忘れ物は出来ないので、何度もしっかりと確認をした。もう既に部屋は来た時と殆ど同じ状態だ。引越しをする様な感覚がしてまた寂しくなる。

「またいつか来るからね。」

とそう言って、僕達は部屋を出る。そのままロビーへ向かい鍵を返す。遂にチェックアウトをしてしまった。もう部屋に戻ることは出来ない。

「ありがとうございました。」

と一言スタッフに告げ、僕達は旅館を出る。そのまま旅館に背を向け歩き出す。

森を抜け、もうすぐこの都市の入口だ。そこへ行けば遂にこの都市からも出ることになる。

「やり残した事はある?」

予想よりも少し余裕があるのでみんなに聞くが、全員が首を横に振った。

「わかった、じゃあ帰ろう。」

と言って馬車に乗り込む。今から半日の旅だ。


#

太陽が真上に来たお昼頃、僕以外はみんな寝てしまっていた。今日は涼しい風が吹いて気持ちいい訳でも無いので、単なる旅行の疲れが来たのだろう。などと考えていると、隣で寝ていた繭の頭が僕の肩に乗っかってきた。馬車の揺れのせいだろう。繭が起きないように優しくゆっくりと、そのサラサラとした髪を撫でる。少し撫でていると、

「...ぅん?」

と声をあげたので、急いで手を離した。繭は起きたようで、

「おはよう。」

と言っていってきた。しっかりと

「おはよう」

と返す。その後無言の時間が続いた。だけど不思議と気まずいとかそんな感じはしなかった。

暫くして繭が質問をしてくる。

「あとどれくらいで着く?」

太陽は結構傾いている、多分2時過ぎとかだろう。たぶんもうすぐ着くはずだ。

「もうすぐ着くよ。」

とそう答えると丁度僕らの村が見えてきた。繭もそれに気付いたのか、

「見えてきたね!」

と笑顔で言う。

「もうすぐ着くから2人起こさなきゃね。」

そう言って僕は茶眩を、繭は緋莉を起こす。

そして遂に村に戻ってきた。あと数分歩けば家だ。

「なんか懐かしく感じますね。」

緋莉がそう言う。確かに少し懐かしい。故郷に戻ってきた感じがする。

「じゃあ家に帰るか!」

そう言って僕が歩き出すと、みんなも着いてくる。

数分歩いて家に着いた、久しぶりの我が家に感動できたが、それよりも自宅の横に家が建っていたことに1番驚く事になった。

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