PHASE 4 :波乱の入社式は終わって
「べ、ベルゼビュートが……負けた……!?」
「大悪魔だぞ……俺たちが束になっても敵わないのに……!!」
狼狽る異形の悪魔達。
その一体の胸を、パンパン、と銃弾が貫く。
「迷ってる暇があると思うほど、呑気だからお前らは負ける、です」
自らであるFN Five-seveNを両手でちゃんと構え、吐き捨てるようにそう言うナイファー。
肺と心臓がデスサイズ弾で損傷した悪魔は倒れて消えていき、周りはまるで人間のように悲鳴を上げる。
「お前らは大昔から死ににくく、超常の力なんかがあるからすぐ忘れる、です。
死神相手にまず魔術も魔力も大して効かない。
物理的に攻撃するにも、我々G.W.S.は物理攻撃最強にして魔術よりも速く、魔力攻撃より遠くから殺してくる最強最悪の兵器、銃。
銃が効かない悪魔なんていうのは、創作だけのお伽話、ハリウッド映画の演出」
ちら、とここまでずっと壇上で状況を見ていたCEOを見る。
「……ついでにあんな風に突っ立ってるウチのCEOを人質に取るぐらいの卑怯さを持っていればまだ戦えたというのに。
まぁ、私は許してやる、です。
スクルドCEO!!
命令を」
ここまで聞いて、悪魔達は恐る恐る、そして死神達は油断なく命令者を、最高責任者のスクルドを見る。
「……すでに運命は決しております」
スクルドが今の今までただ立っていたのは、何も皆を信頼していただけでもなく、悪魔のこの体たらくを知っていたからではない。
未来を見ていた。
そして今、未来は今になると知って片手を上げる。
「────
片腕を振り下ろした瞬間、悲鳴と銃声があちこちで響き渡る。
一方的な蹂躙だった。
銃に勝てる悪魔は存在しないと言わんばかりの、一方的な虐殺だった。
***
「プハァ〜……!!
生身の体最高〜!!」
「そればかり同意だな」
数十分後、セクター0本部内休憩スペース
チャイナレイクグレネードランチャーとPSG-1は、お互いペットボトルコーラと引き立てのカップコーヒーを飲んで一息ついていた。
「まだパトロール中〜、って事にして一息つかなきゃやってられませんね!」
「意外と気が会うな」
「まぁその……エリートっぽい見た目のPSG-1さんがまさか乗ってくれるとは思ってなかったっスけど……」
「エリート?
はは、仮にも
「いやいや……私結局すぐ消えちゃいましたし、そちらなんか仮にも長らく
「それこそ嫌味だ。
いまじゃ、後継の軽くてもっと高性能なのが頑張ってるんだ」
と、PSG-1は無造作に飲み終わった缶を投げ、見事にスポッとゴミ箱の缶用の穴に入れる。
「────ストライク」
と、後ろから声が聞こえる。
振り向けば、さっき活躍した Five-seveN、ナイファーとM134、ミニーが立っていた。
「「あ、」」
「いや、幸いな事に私達もサボりだ、です」
言うなり立ち上がりかけた2人を見ずに、自販機で日本人の心・緑茶と甘さたっぷりなクリーミーカフェオレを買う。
「隣大丈夫??」
「え、ええ……自分たちは別に!!」
「どうぞ……」
「えへへ、ありがとー♪」
笑顔が似合う可憐な少女だが、どうあがいても立場が上のミニーに席を譲る2人。
そして、ナイファーとミニーは座り、
「ん」
「ありがとー、ナイファーちゃん♪」
ミニーが緑茶、ナイファーがカフェオレを飲み始める。
「「逆じゃね!?」」
「何か問題が?」
「あ、すみません……」
「つい……」
「ねー、ナイファーちゃん?それって甘過ぎない?」
「疲労には糖分。ついでに自分用にあるワッフルもあって完成……です!」
とても可愛い梱包の、おそらく手作りワッフルを取り出して、ついでにミニーにも一つあげるナイファー。
(「この人甘党なのか……!?」)
「ってうわぁ!?心が読まれた!?!」
「人間も死神も外面のイメージで心で語るものだから単純な奴らだ、です。
ま、私も一切人のこと言えないけど、ですが……」
言うなり、もっもっ、とワッフルを食べ始める。
はむはむする隣のミニーと、この時だけは同じく可愛い生き物に見える。
「……これがかの有名なセクター4の死神、か。
随分と、俗っぽいようで」
「ちょ、PSG-1さん!!」
「いい。皮肉っぽいけど正直だ」
「それはどうも、ドイツ製なもので」
「まぁ知っている。
ある程度2人の資料は読んだ」
と、いつのまにかゆるキャラアニメのクリアファイルを取り出して見せるナイファー。
つくづく意外な、と思ってそれを見れば、なんと2人の履歴書と……2人への辞令だ。
「これは……!」
「『PSG-1』、『チャイナレイク・グレネードランチャー』……『チャイナレイクモデル』?」
「どっちでも通じるっス……」
「まぁいいか、です。
お前ら2人は、セクター4へ配属。
それも、私達と同じ第2小隊だ、でごぜーます」
辞令にもそう書かれていた。
まさか、自分たちを探していたとは……
「あ、それは半分偶然なんだわ、です。
サボりはマジ」
「今は悪い子の時間〜♪」
と思えば、ズッコケさせるその一言。
2人の上官は、想像以上にクセがあった。
その後、本当に数分間お茶していた4人だった。
***
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